森谷真理 －言霊－ Vol.2｜藤堂清
森谷真理 Spirit of Language －言霊－ Vol.2
～Harawi 愛と死の歌～
Mari Moriya Spirit of Language Vol.2
2025年6月13日 王子ホール
2025/6/13 Oji Hall
Reviewed by 藤堂清（Kiyoshi Tohdoh）
＜出演＞ →Foreign Languages
森谷真理（ソプラノ）
山田武彦（ピアノ）
＜プログラム＞
アルバン・ベルク：初期の7つの歌（1907）
1. 夜
2. 葦の歌
3. 小夜鳴き鳥
4. 夢を冠に
5. 部屋の中で
6. 愛の頌歌
7. 夏の日々
********** 休憩 **********
オリヴィエ・メシアン：ハラウィ 愛と死の歌（1945）
1. 眠っていた町、おまえ
2. おはよう、緑の鳩よ
3. 山々
4. ドゥンドゥ・チル
5. ピルーチャの愛
6. 惑星の周期運動
7. 告別
8. シラブル
9. 階段は太陽の姿を繰り返し語る
10. 愛する星の鳥
11. 星になったカチカチ
12. 闇の中に
******* アンコール *******
リヒャルト・ワーグナー：愛の死（トリスタンとイゾルデ）
森谷真理が王子ホールで「言霊」と題して行うリサイタルの第2弾、今回はオリヴィエ・メシアンの歌曲集《ハラウィ》がメインのプログラム。副題にあるように愛と死がテーマとなっている。一方、前半に歌われたアルバン・ベルクの《初期の7つの歌》では、死の影はなく夜と愛がテーマといえるだろう。どちらの歌曲集も、歌、ピアノともに充実した演奏。
リサイタルの前半、ベルクの歌曲は、1905年から1908年、彼が20歳から23歳の若い時代に書かれたもの。歌曲集としてまとめられ出版されたのは1928年になる。作曲時点ではまだ無調の作品は書いてはおらず、出版時に曲順を考慮し、同時に一部の曲では調性も再考している。森谷の歌唱、ドイツ語としては子音が少し明確になってほしいと感じるところもあったが、弱声のコントロールされた響き、強声の厚みは見事で、ダイナミクスの幅は圧倒的。山田のピアノもしっかりと彼女の歌を支えた。
メシアンの《ハラウィ》、このタイトルはアンデスでインカ帝国のころから話されていたケチュア語から取られている。歌曲集は12曲からなり、演奏時間はほぼ1時間、大曲である。歌詞はメシアン自身によるフランス語で、緑の鳩と呼ばれるピルーチャという娘の成就しない愛と死が描かれる。曲の中では擬音語あるいは人工語が多用されるが、「ハラウィ」と同様ペルー起源のものという。4曲目の〈ドゥンドゥ・チル〉で歌われる “doundou tchil”、6曲目の〈惑星の周期運動〉の歌詞 “mapa nama mapa nama lila, tchil” など、何度も繰り返し用いられ、耳に残る。第2曲の〈おはよう、緑の鳩よ〉、第5曲の〈ピルーチャの愛〉では愛が歌われるが、そこには死がつきまとう。第7曲の〈告別〉では愛しながらの別離、第9曲の〈階段は太陽の姿を繰り返し語る〉でははっきりと死が姿をみせる。森谷の歌唱はこういった曲集の流れを押さえたもので、曲ごとの表現の違いを味わうことができた。また、どの声域でも強弱にかかわらず響きの厚みがあり、会場を埋めた。ピアノパートも緻密に書かれており、弱音での緊張感が多くの曲で重要な役割を果たしていた。
大きな拍手に応えてアンコールが歌われた。ハラウィに合わせてということだろうか、《トリスタンとイゾルデ》から〈愛の死〉。最弱声での歌い出しから会場の空気をつかみ、最後までしっかりと歌い上げた。
(2025/7/15)
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<Performers>
Mari Moriya (Soprano)
Takehiko Yamada (Piano)
<Program>
Alban Berg: 7 Frühe Lieder (1907)
1. Nacht
2. Schilflied
3. Die Nachtigall
4. Traumgekrönt
5. Im Zimmer
6. Liebesode
7. Sommertage
——-Intermission (20min.)——-
Olivier Messiaen: Harawi, chant d’amour et de mort (1945)
1. La ville qui dormait, toi
2. Bonjour toi, colombe verte
3. Montagnes
4. Doundou tchil
5. L’amour de Piroutcha
6. Répétition planétaire
7. Adieu
8. Syllabes
9. L’escalier redit, gestes du soleil
10.Amour oiseau d’étoile
11.Katchikatchi les étoiles
12.Dans le noir
—————Encore————–
Richard Wagner: Liebestod (Tristan und Isolde)
