東京ラインベルガー協会第3回演奏会 十字架称賛と悲しみの聖母 |瀬戸井厚子
東京ラインベルガー協会第3回演奏会
十字架称賛と悲しみの聖母

9月の短評
Text by 瀬戸井厚子 (Atsuko Setoy)
♪東京ラインベルガー協会第3回演奏会
十字架称賛と悲しみの聖母
2026年9月22日 府中の森芸術劇場ウィーンホール
〔出演〕
白井智朗(指揮)
﨑山裕子(オルガン)
市川愛里奈(ピアノ)
フランツィスカ室内オーケストラ(弦楽合奏)
コンサートミストレス:山縣郁音
東京ラインベルガー協会合唱団(合唱)
〔曲目〕作曲:ラインベルガー
オルガン・ソナタ第8番ホ短調作品132より
第1楽章フーガ
3つのラテン語の賛歌作品96より
2.あなたを崇めます
ミサ曲ト長調作品151
いつくしみの賛歌
栄光の賛歌
昇階唱:5つの賛歌作品107より5.キリストは従順であられました
信仰宣言
奉納唱:聖なる歌WoO7より6.思い出してください、乙女よ
感謝の賛歌 聖なるかな
褒むべきかな
平和の賛歌
オルガン・ソナタ第8番ホ短調作品132より
第2楽章間奏曲
――休憩――
「夜」作品56
「主よ、私をあなたの御手の中にお迎えください」WoO51
オルガン・ソナタ第8番ホ短調作品132より
第3楽章 スケルツォ
第4楽章 パッサカリア(冒頭及び終結部の抜粋)
『悲しみの聖母』作品138
1. 御母は悲しみにくれて
2. 泣かない者がいるでしょうか
3. さあ、御母よ
4. 輝かしき乙女の中の乙女よ
(アンコール)――
「赤とんぼ」作曲:山田耕筰 Organ Part:Guy BOVET 合唱編曲:白井智朗
「美しき主の住まいを」詩篇84編 作曲:J. G.ラインベルガー
東京ラインベルガー協会は2023年創立。J. G. ラインベルガー(1839~1901)の宗教合唱作品全曲を、生誕200年の2039年までの十余年をかけて演奏することを目指しており、今回の演奏会もその一環である。日本で彼の作品が聴ける機会はかなり稀で、筆者としても昨年に次いで2回目の出会いだが、もっと採り上げられるようになることを期待したい。
よく工夫されたプログラムで、オルガン・ソナタ第8番を第1楽章、第2楽章、第3・4楽章に分けて、冒頭と前半の終りと、後半の主要曲の前に置いたのは効果的だった。音色・音質の異なる調べが交代して耳を訪れてくれるのは本当に心地よいのだ。
ミサ曲ト長調は聖堂での典礼の式次第にならって演奏され、昇階唱、奉納唱を歌うのみならず、使徒書朗読、福音書朗読も行われた。上演するための音楽ではなく、共同の祈り=典礼挙行のための音楽であることがしみじみ実感・納得される。そして今回強く印象付けられたのは作品の持つ「繊細さ」であった。「聖なるかな」のホザンナが心弾むあまり体を揺らしそうになるのに、続く「褒むべきかな」のホザンナではすっと落ち着くのである。
休憩後は弦楽合奏が加わって響きに彩りが添い、拡がりも増す。こちらの耳も感度が高まったかのようで、さらに生き生きと活発になる。そうしてから聴く『悲しみの聖母』の緊張感。全身が引き締まる思いでひたすらに傾聴する。
粛然と居ずまいを正してしばしが過ぎ、やがて和やかなアンコールが耳と心を解きほぐしてくれた。音楽を聴くことにいっとき集中して、耳が敏感になり自身が共振体になったかのように感じられる「特別な時間」の中でも、受け取り方には多様な局面があることを改めて意識することができた。この機会が与えられたことは、文字どおり恵まれたのだ、と思う。
(2026/10/15)