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Pick Up (2026/5/15)|調布国際音楽祭2026 権代敦彦 オペラ《ZEN》|長澤直子

調布国際音楽祭2026
権代敦彦 オペラ《ZEN》 

Chofu International Music Festival
ZEN

2026年6月26日(金)19:00開演(ゲネプロ取材:6月25日) 調布市文化会館たづくり くすのきホール 
2026/6/26 Chofu City Cultural Center Tazukuri Kusunoki Hall

Text&Photos by 長澤直子(Naoko Nagasawa)

 

権代敦彦 オペラ《ZEN》 

作曲:権代敦彦

脚本:堤春恵

演出:田尾下哲

指揮:鈴木優人

鈴木大拙:加耒徹(バリトン)
西田幾多郎:与那城敬(バリトン)
木村和夫:櫻田亮(テノール)
鷹野清:加藤宏隆(バスバリトン)
木村正子:村松稔之(カウンターテナー)
看守:渡辺祐介(バス) 

尺八:黒田鈴尊 

管弦楽・男声合唱:バッハ・コレギウム・ジャパン

 

照明:稲葉直人
美術:杉浦充
ヘアメイク:原美沙紀 

 

バッハ・コレギウム・ジャパン 

テノール:近野桂介、谷口洋介、中嶋克彦、水越啓
バス:大井哲也、小池優介、氷見健一郎、渡辺祐介
リコーダー:譜久島彰
フラウトトラヴェルソ:菅きよみ
ヴァイオリン:原田陽
ヴィオラ:高岸卓人
チェロ:山本徹
バロックハープ:伊藤美恵
チェンバロ:辛川太一
オルガン:石丸由佳
バロックティンパニ:菅原淳 

 

 

 

 

調布国際音楽祭は、東京都調布市で毎年初夏に開催される、クラシック音楽を中心とした国際音楽祭である。主な会場となる調布市グリーンホールや調布市文化会館たづくりのほか、市内各所でもコンサートや教育プログラム、無料イベントが開催され、地域と音楽が一体となる音楽祭として親しまれている。2013年からは、調布市出身の鈴木優人がエグゼクティブ・プロデューサーを務めている。 

2026年は6月20日〜28日に開催されたが、そのプログラムの中でも最大の話題となり注目を集めたのが、権代敦彦作曲によるオペラ《ZEN》の世界初演だ。約500席のくすのきホールで一度限り上演された本作。チケットの売れ行きも好調で、完売となっていたようだ。
本稿では、本番を前に行われたゲネプロの模様を紹介する。  

 

 

 

《ZEN》の舞台となるのは、第二次世界大戦前夜から戦後。主な登場人物は、禅の思想を世界へ広めた鈴木大拙(加耒徹)と哲学者の西田幾多郎(与那城敬)、戦争に翻弄される軍医の鷹野清(加藤宏隆)と学徒兵の木村和夫(櫻田亮)、そして木村の妹正子(村松稔之)。出演する歌手は、女性役を含め全てが男性。合唱も男声のみで構成されていた。 

オーケストラは、各パート一人ずつという削ぎ落とされた編成で、舞台手前の位置に配置された。冒頭では、男声合唱もオーケストラに溶け込むように下手に位置し、それらを囲む形で舞台が組まれていた。 

舞台装置は用いられず、光と影の効果によって人物の心情を描き出すという、抽象的とも取れるもの。
とりわけ印象的だったのは、舞台中央の背景に浮かび上がる円である。この円は第一幕では四角であり、第二幕の始めではほんの小さな点であった。それが場面を追うごとに拡大して行き、最後には巨大な満月のような、あるいは禅の「円相」を思わせる光となる。
そして物語の最後は読経のような響きと、一本の尺八(黒田鈴尊)の音色により収斂していく。 

この作品は、一度の鑑賞ですべてを理解できるとは言えないかもしれない。しかし、男声だけで紡がれる緊張感、指揮の鈴木優人率いるバッハ・コレギウム・ジャパンの精緻な演奏、そして尺八が導く終幕は、世界初演にふさわしい、忘れがたい体験として心に残るものとなったのではないだろうか。 

(2026.7.15) 

作曲:権代敦彦(中央左)/脚本:堤春恵(中央右)