注目のコンサート|2019年5月
日本・ポーランド国交樹立100周年記念事業の1つ「ポーランド芸術祭2019 in Japan」の一環としておこなわれるリサイタル。ポーランドといえばショパンが浮かぶが、そのショパンの影響を受けたポーランドの後輩作曲家の作品も演奏される。ショパンだけでない「ポーランド」を感じられるひとときになろう。
5/1@東京文化会館小ホール
https://www.japanarts.co.jp/concert/concert_detail.php?id=726
昨2018年ミュンヘン国際音楽コンクール優勝の葵トリオがランチタイムコンサートでその実力のほどを披露する。2016年カルテット・アマービレ第3位に続く快挙で、このところの若手室内楽の注目度はうなぎのぼり。葵トリオ(小川響子vl、伊東裕vc、秋元孝介pf)は東京藝大に学び、サントリー室内楽アカデミー3期生。ベートーヴェン、マルティヌー、メンデルスゾーンでその魅力を存分に発揮して欲しいところだ。
5/1@トッパンホール (完売)
http://www.toppanhall.com/concert/detail/201905011400.html
「ラ・フォル・ジュルネ(熱狂の日)」、日本に上陸して15回目となる2019年のテーマは「Carnets de voyage ーボヤージュ 旅から生まれた音楽(ものがたり)」。作曲家たちが旅とともに生みだした作品を中心に行われる。有料公演124のほか、近くの大手町・丸の内・有楽町などの会場での無料コンサートが約200。45分~60分と演奏時間は短め、料金は2000~3000円が中心と気軽に聴けるものとなっており、好みに応じていろいろな楽しみ方ができる。新たな才能に出会えることも、この音楽祭のよいところ。また、昼間の公演は原則3歳以上は入場可能、さらに0歳児が聴けるコンサートも用意されており、年代によらず音楽にふれることができる。東京国際フォーラムの地上広場で、屋台の料理とともにキオスクコンサートを楽しむのもよいだろう。
5/3-5@東京国際フォーラム
https://www.lfj.jp/lfj_2019/
世界の名門が厚い信頼を寄せる中庸の美の名匠デ・ワールトがN響でブラームスを振る、と聞いただけで、滋味深い響きが薫ってくるようだ。そこに日本の名花・中村恵理が歌うR. シュトラウスの歌曲集が加わるとあれば、これは贅沢以外の何ものでもない。強靭な押し出しを必要とする作品と抜群の相性を示す彼女、繊細美麗なシュトラウスでどのような境地を聴かせてくれるか。
5/6@Bunkamuraオーチャードホール
https://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/nkyo/18_19/103.html
台湾フィルの6年ぶりの来日公演。ブザンソン国際コンクールなどで優勝した音楽監督のリュウ・シャオチャがタクトを握る。芥川也寸志と江文也、日台を代表する作曲家の作品とともに、シャオチャが得意とするシベリウスの第2交響曲を予定。また、インディアナポリス国際コンクールで優勝したリチャード・リンをソリストに迎えてメンデルスゾーンの協奏曲も上演予定。日本も含めたアジアン・クラシックの今を知る貴重な機会となりそうだ。
なお、大阪公演に先立って、4月30日には同一プログラムで東京公演(@東京文化会館大ホール)が行われる。
5/6@ザ・シンフォニーホール
https://www.symphonyhall.jp/?post_type=schedule&p=15103
「心に残る、心に届く音楽」をめざして活動する21世紀音楽の会、今回は全作が新作初演、また6人の作曲家のうち5人が女性である。それぞれ異なった音楽観、世界観を持った個性が互いに打ち消し合うことなく乗算されていくような演奏会を期待したい。
5/8@東京文化会館小ホール
https://21centurymusic.amebaownd.com/
ロベルト・シューマン・コンクールで1位に入賞、そしてalphaレーベルにシューマンのピアノ作品全集を録音していることからも分かるように、ル・サージュはこの作曲家を得意としている。シューマンの音楽は複音楽的な重厚さと共にどこかラテン的な感性にマッチングするような洒脱さをも持ち合わせているように思う。そう、ル・サージュのシューマン演奏もまさに洒脱。そしてこのコンサートではドビュッシーも併せて演奏されるが、こちらも極めて洗練された演奏が期待できよう。
5/9@横浜みなとみらいホール
http://www.kanagawa-geikyo.com/calendar/concerts/190509-1/190509-1.html
5/10@京都コンサートホール
https://www.kyotoconcerthall.org/calendar/?y=2019&m=5#key19505
♩5/9-12 ローザス:A Love Supreme 至上の愛
♩5/18-19 ローザス:我ら人生のただ中にあって/バッハ無伴奏チェロ組曲
ローザス2年ぶりの来日公演ではそれぞれジョン・コルトレーンによる不朽の名作『A Love Supreme 至上の愛』及びバッハの無伴奏チェロ組曲にインスパイアされた新作2作品が上演される。初期のローザスでは2年前の来日時にも再演された『ファーズ‐Fase1』のように純粋に音楽の律動と身体の運動性をシンクロさせるような作品が主体であったが、ここでのコルトレーンとバッハの組み合わせ、なにやら背後に「神」を想起させはしまいか。ローザスの新境地が拓かれる、のか?
5/9-12,5/18-19@東京芸術劇場プレイハウス
http://www.geigeki.jp/performance/theater208/
日本・フィンランド外交樹立100周年記念のコンサート。フィンランドを代表するヴァイオリニストで水谷川のパートナーでもあるマーク・ゴトーニとその父でピアニストのラルフ・ゴトーニを加えた「ファミリー」によるものだが、ただのファミリー・コンサートでないことは曲目からも明らか。フィンランドの精霊を感じるひとときを。
5/10@紀尾井ホール
http://www.concert.co.jp/concert/detail/1944/
♩5/11 邦楽展 Koto collection Today Vol.34 二十絃箏による神話の国への誘い
1969年に師・野坂惠子(現・野坂操壽)と三木稔によって二十絃箏が創られ、1971年からこの楽器と共に現代邦楽の新しい地平を切り開いてきた吉村七重。彼女が1997年からプロデュースしてきた本シリーズ第34回は大御所・湯浅譲二に久田典子、そして武満賞・芥川作曲賞にノミネートされるなど近年目覚ましい活躍を見せている中村ありすがフィーチャーされる。現代音楽や邦楽についての既成概念を覆す出会いが待っているであろう。
5/11@JTアートホールアフィニス
http://www.pluto.dti.ne.jp/~tomo9/nanae/H_concert.htm
♩5/14 読売日本交響楽団 第588回定期演奏会 《第10代常任指揮者就任披露演奏会》
読響の第10代常任指揮者就任披露演奏会としてセバスティアン・ヴァイグレが「新時代の幕開け」の第一歩にふさわしくヘンツェ『7つのボレロ』とブルックナー『交響曲第9番 』をひっさげ登場。オスティナートを多用した新古典派風の趣きとロマンティック和声でヘンツェの中でも聴きやすい『ボレロ』の後に堂々たるブルックナーの大伽藍がひかえる。その棒さばきに期待大だ。
5/14@サントリーホール
https://yomikyo.or.jp/concert/2018/10/588-1.php
♩5/14 ユリアン・プレガルディエン&エリック・ル・サージュ ~シューマン“詩と音楽”~
ユリアン・プレガルディエンとエリック・ル・サージュの共演によるシューマンの夕べ。ユリアンは、《リーダークライス Op.24》と《詩人の恋》、ともにハインリッヒ・ハイネの詩による歌曲集を歌う。フランスのピアニスト、ル・サージュはシューマンを得意としており、二人は来日直前に同じプログラムでロンドン、シュトゥットガルトでリサイタルを行う。彼らの活動は、近年発行されたBärenreiter Urtextの楽譜に基づく録音プロジェクトの一環として行われている。主催元からの情報はないが、歌曲集とル・サージュの独奏曲の扱い、通常とは異なるものとなるかもしれない。
5/14@王子ホール
http://www.ojihall.jp/concert/lineup/2019/20190514.html
♩5/15 ロナルド・ブラウティハム(フォルテピアノ)―ワルトシュタインを弾く
オランダを代表するフォルテピアノ奏者、ロナルド・ブラウティハムがトッパンホールに3度目の登場である。モダン楽器の音を聴き慣れた我々の耳に、ピリオド楽器の名手によるハイドンとベートーヴェン、それも『ワルトシュタイン』のどんな響きが飛び込んでくるのか楽しみにしたい。
5/15日@トッパンホール
http://www.toppanhall.com/concert/detail/201905151900.html
3夜にわたって行われる「新しい耳 テッセラの春・第24回音楽祭」、その第一夜はバリトンの松平敬とピアノの中川賢一によるコンサート。シューマンの歌曲とR.シュトラウスのメロドラマ「イノック・アーデンOp.38」を取り上げる。後者の朗読には原田宗典による訳が用いられる。現代曲のスペシャリストの感がある松平だが、時代を問わず歌曲を取り上げてきている。シューマンの歌曲の中では作品40のアンデルセンの詩によるシニカルな歌をどのように表現するか楽しみ。一方のメロドラマでは、日本語の語りによってどのような表情が生みだされるか注目したい。
5/17@サロン・テッセラ
https://www.atarashii-mimi.com/concert-4
神戸市制100周年を記念して設立された神戸市混声合唱団も誕生からはや30年。現役メンバーをも対象に行われる2年ごとのオーディションで厳選されたプロ合唱団としての高い水準と誇りを、この記念すべき演奏会でじっくり味わいたい。ゲストに「東のプロ」東京混声合唱団を迎え、両団の音楽監督、松原千振と山田和樹のタクトによる豪華な歌の共演にもぜひ注目したい。
5/17@神戸文化ホール
http://www.kobe-bunka.jp/hall/schedule/event/music/3551/
♩5/17、18 日本フィルハーモニー交響楽団『カヴァレリア・ルスティカーナ』
噴火指揮者ラザレフがオペラを振る。『カヴァレリア・ルスティカーナ』だ。主役にはラザレフ激推しのロシア人テノール、イェロヒンが、サントゥッツァには『紫苑物語』でステージをさらった清水華澄が登場と、なんともスリリング。組み合わせがメトネル『ピアノ協奏曲第2番』(エフゲニー・スドビンpf)というのだから実にユニークで、どんな一夜、はたまた午後になるのか、こちらもスリリング極まりない。
5/17,18@サントリーホール
https://www.japanphil.or.jp/concert/23226
国内外の現代ピアノ作品に挑戦する飯野明日香の新たなシリーズは福沢諭吉家伝承のエラール製フォルテピアノを使用しての演奏会。サン・サーンス、フォーレ、ドビュッシー、プーランク、メシアンのフランス作品と日本現代作品を並べ、エラールの古いフォルテピアノで弾くという趣向に心躍らされる。
5/18@サントリーホールブルーローズ
http://opus-one.jp/concert/飯野明日香 parfum-du-future-vol-19/
昨年度、浜松国際ピアノコンクールで優勝したジャン・チャクムルの優勝ツアーが4月から始まるが、関西では大阪交響楽団との共演で初登場。曲は、チャクムル自身の希望によりモーツァルトの協奏曲第21番。若いながらも情熱と知性を兼ね備えた演奏で今後が期待されるチャクムルの音楽を、ベテラン佐藤俊太郎のタクトがどのように絡んでいくのか期待したい。その他の演目は、メンデルスゾーンの劇音楽「夏の夜の夢」からの抜粋など名曲揃い。昼夜2回公演が行われる。
5/18@ザ・シンフォニーホール
http://sym.jp/publics/index/452/#page452_1097_2061
2015年日本音楽コンクール優勝の黒岩航紀がB→Cに登場。並ぶ曲目・作曲家はバッハから西村朗までいずれも幻想的・神秘主義的・宗教的なものばかり。また広い意味での調性音楽が並んでいることにも注目させられる。若き日本人がこのプログラムを完走した時、どのような地平が広がっているのか。ホールに出向いて目撃しよう。
5/21@東京オペラシティリサイタルホール
https://www.operacity.jp/concert/calendar/detail.php?id=9507
♩5/23 片岡綾乃パーカッションリサイタルvol.3 ConText 観・そして・感
音楽とは聴くだけのものに非ず、というテーゼは実験音楽やカーゲルらを通過した現代音楽界ではもはや言うまでもないかもしれないが、しかしその実演、さらにその系譜の新作に接することは多くはない。日本初演作を並べたこの演奏会で、片岡によるそれらの「観」が「感」へと至れるかどうか、とくと見届けたい。
5/23@東京オペラシティリサイタルホール
http://www.1002.co.jp/press/AyanoKataoka.pdf(pdfファイル)
♩5/23、24 シャルル・デュトワ&大阪フィル 第528回定期演奏会
2017年12月以来のデュトワ来演、無論大阪フィルとは初顔合わせ。ここでこの指揮者が選んだプログラムはベルリオーズ:序曲『ローマの謝肉祭』、ラヴェル:『ダフニスとクロエ』第2組曲(合唱入り!)、そして再びベルリオーズの『幻想交響曲』。どれもデュトワの伝家の宝刀である。これ以上何を付け加えようか。ファンが大挙してフェスティバルホールに駆けつけるであろう。
5/23,24@フェスティバルホール
http://www.osaka-phil.com/schedule/detail.php?d=20190523
♩5/24、25 名古屋フィルハーモニー交響楽団 第468回定期演奏会 <最後の傑作>
日本の楽団に次々とデビューを果たし(しかもどれも好評)、現在ニュルンベルク響のシェフも務める若き俊英カーチュン・ウォンが名古屋フィルに登場する。初客演にあたり彼が提示したプログラムは、バルトークとシベリウスの最後の作品である。熟達した名指揮者でも一筋縄ではいかない難曲たちをどう捌き聴かせるだろうか。東京国際ヴィオラコンクールを制したルオシャ・ファンの独奏にも注目が集まる。
5/24,25@愛知県芸術劇場 コンサートホール
https://www.nagoya-phil.or.jp/2018/1227190338.html
♩5/24、25、26 兵庫芸術文化センター管弦楽団 第115回定期演奏会
精力的に活動を繰り広げる井上道義。今回の兵庫芸術文化センター管客演では、マルケスとコープランドを取り上げて南北アメリカ大陸の音楽を特集する。ショスタコーヴィチや伊福部昭など、民族の血が滾る作品で熱く雄弁な演奏を聴かせる井上だけに、深く作品の真価を抉り出すような演奏を期待したい。
5/24,25,26@兵庫芸術文化センター KOBELCO大ホール
http://hpac-orc.jp/concert/20190524.php
♩5/25 ジョナサン・ノット&東京交響楽団第670回定期演奏会
今回のノット監督が取り上げるはブリテンとショスタコーヴィチ。1939年、チェコスロヴァキア崩壊と第2次世界大戦開戦前夜という緊張の支配する時期に書かれたブリテン:ヴァイオリン協奏曲、そしてソ連において社会主義リアリズムという公式イデオロギーに沿った形で書き上げられたショスタコーヴィチの交響曲第5番(1937年作曲)。ほぼ同時期に20世紀を代表する大作曲家によって書かれ、政治と戦争との関わりの中で書かれた/書くしかなかった傑作。これらは言うまでもなくノットのキュレーションである。
5/25@サントリーホール
http://tokyosymphony.jp/pc/concerts/detail?p_id=9FH1d1Lw0hY%3D&month=05
ヤマハ珠玉のリサイタル&室内楽は、鈴木秀美と小倉貴久子を中心に、信頼を寄せる名手たちとショパンの室内楽作品を聴かせる。当時の奏法や楽器、時代背景への深い考察に基づく「最新鋭の古さ」で19世紀のショパンのサロンを彷彿。『マイアベーア「悪魔ロベール」の主題による協奏的大二重奏曲』『チェロソナタ』『ピアノ協奏曲 第1番』(室内楽版)など、プレイエルとともにそのアンサンブルを堪能できる優雅な午後となろう。
5/25@ヤマハホール
https://www.yamahaginza.com/hall/event/003690/
N響〈Music Tomorrow〉2019は尾高賞受賞作の藤倉大『Glorious Clouds』(2016/17)の他、薮田翔一委嘱世界初演『祈りの歌(2019)』にベンジャミン『冬の心 ソプラノとオーケストラのための』(1981)、カサブランカス日本初演『いにしえの響き―管弦楽のための即興曲』(2006)が並ぶ。薮田の新作やいかに。海外2作品はN響初共演の指揮J・ポンスによる提案で、詩と絵画にインスパイアされたもの。ベンジャミンは藤倉の師とか。未聴のパースペクティブが拓けるや否や。
5/28@東京オペラシティ コンサートホール
https://www.nhkso.or.jp/concert/concert_detail.php?id=892
♩5/30 アンドリス・ネルソンス&ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管
2017-2018年のシーズンから由緒あるライプツィヒ・ゲヴァントハウス管の第21代カペルマイスターに就任したアンドリス・ネルソンス。この組み合わせでの初来日公演である今回は東京と関西で全4回のコンサートがもたれるが、そのうち東京での2回はチャイコフスキーの第5がメインの回とここに取り上げたブルックナーの第5の回。既にネルソンスとゲヴァントハウスのコンビはブルックナーの交響曲を複数曲演奏/録音しているが、どれも独特の個性的な味わいを聴き慣れた曲に持ち込んでいる。この来日公演で彼らの真価が明らかにされるだろう。
5/30@サントリーホール
http://www.kajimotomusic.com/jp/concert/k=721/