撮っておきの音楽家たち|ヴァンサン・ル・テクシエ|林喜代種

ヴァンサン・ル・テクシエ(バリトン歌手)
         
2017年11月26日 サントリーホール
2017年11月30日 武蔵野市民文化会館
photos & text by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)

メシアンのオペラ「アッシジの聖フランチェスコ」が読響創立55周年、メシアン没後25周年記念として演奏会形式により全曲が日本初演された。その聖フランチェスコ役としてバリトンのヴァンサン・ル・テクシエが出演し好演した。そして日本でただ1回だけのリサイタルが武蔵野市民文化会館小ホール行なわれた。「アッシジの聖フランチェスコ」では芯のある静かな歌い方に終始したが、リサイタルではジェスチャーも交えながら熱く歌い大いに楽しませた。
プログラムの解説によると、このリサイタルでは「アッシジの聖フランチェスコ」の全曲初演を記念して、メシアンおよびメシアンの好んだ作曲家のオマージュとして企画されたコンサートであった。メシアンにとって絶対的指標としたJ.S.バッハの「マタイ受難曲」からアリア <浄められよ、私の心よ>に始まり、最も好きな作曲家の一人としてのモーツァルト、20世紀の先頭をきって新しい調性の音楽を切り開いたシェーンベルク、心の父としていつも拠り所としたドビュッシー、深く尊敬し模範としたフランスきっての作曲家のラヴェル。それぞれの作曲家の曲がヴェルレーヌ、レルミット、ルナールなどのフランス語の詞でヴァンサン・ル・テクシエのバリトンにより表情豊かに自在に歌われた。
ル・テクシエは1957年フランスに生まれる。美術の学位を取得後、パリ・オペラ座で声楽を修めた。バロックから現代音楽まで幅広いレパートリーを誇り、歌唱と演技の両方に秀でたオペラ歌手として評価されている。フランス歌曲とドイツ・リートにも定評がある。ザルツブルク音楽祭、プラハの春音楽祭等に出演している。デュトワ指揮N響で、ドビュッシーのオペラ「ペレアスとメリザンド」のゴロー役で2014年12月の東京公演に出演している。

(2017年12月15日)