ウィーン便り|在留許可の延長申請|佐野旭司

在留許可の延長申請

text & photos by佐野旭司 (Akitsugu Sano)

私のウィーン滞在は、もともと今年の6月いっぱいで終わる予定だった。ところが4月に奨学金の延長申請が認められ、さらに1年間留学を続けられることになった。滞在期間を延長するためには諸々の手続きを行わなければならない。現在住んでいる寮の契約延長の手続き、保険更新の手続き、在留許可の延長申請などだが、その中でも最も厄介なのが在留許可延長のための手続きである。
在留許可の申請を初めて行ったのは去年の10月だった。在留許可申請の手続きが大変だということはウィーンに来る前から友人の話やインターネットの情報で知っていた。この在留許可の手続きに先立ち、去年の8月には日本にある大使館でビザ申請を行ったが、その時には申請用紙に何を書けばいいか分からない項目が多いうえに、添付書類も思わぬところで不備を指摘されるなど大変な思いをした。そんなこともあり在留許可の申請も一筋縄では行かないだろうと覚悟していた。ところが去年は、初めて申請した時にまさかの一発OKだった。その場でEinladungと書かれた紙(申請が認められ在留許可が下りたことを証明する書類)をもらい、2週間後には在留資格を証明するIDカードを受け取ることができた。

この在留資格を延長する場合には法律上、期限が切れる3か月前から前日までに申請を行わなければならない。今回はその延長申請のために、4月の終わり頃から諸々の必要書類を揃えることになった。私はオーストリア政府から奨学金を受給しており、延長手続きについては奨学金の機関から説明を受け、また諸々の問題についても相談した。一口に在留資格といっても自営業者用や学生用、芸術家のためのものなど様々な種類がある。そして自分はAufenthaltsbewilligung Sonderfälle unselbstständiger Erwerbstätiger(「給与所得者の特例在留許可」とでも訳すべきだろうか)で申請している。申請の際の必要書類としては、申請用紙、奨学金の証明書、住居の賃貸借契約の書類、顔写真、保険の証明書、パスポート、住民登録証明書を用意するよう奨学金の機関から説明を受けていた。これらのうち申請用紙は、新規申請時の用紙のコピーを見て細かい違い(新規か継続か、預金残高など)に注意しながら書けば良いので簡単にできた。また他の書類もほとんどがすでに揃っているものばかりだったので苦労はしなかった。ところがそんな中で大変だったのが保険の書類である。
ウィーンに留学する学生は通常Wiener Gebietskrankenkasse(WGKK)という会社の保険に加入する。ところが私はポストドクターの枠での奨学金を受給しており、奨学生といっても学生ではなく研究者の扱いのためこの保険に加入することはできず、UNIQAという会社の保険に入っている。これは去年の10月から同じだが、今年の7月初めまではこの保険会社による月額約50ユーロの保険に入っていた。ところが奨学金の機関の話では、今年の3月あたりからこの保険が在留資格のために有効でなくなったという。しかもそのことを知ったのが5月下旬になってからだ。(私は4月下旬に保険の更新について奨学金の機関に問い合わせたが、その時点では保険について市役所の担当部署と話し合い中とのことだった。) そんな経緯があり、今回の延長申請のために同じ会社の別の保険に入り直さなければならなくなったのだ。しかもそれに伴い保険料の月額が約70ユーロ値上がりしてしまった。(ただ、理由は分からないが奨学金の月額も7月から100ユーロ以上高くなったので、経済的には決して負担にはなっていないが。) 保険料のことはともかく、その後保険会社の不手際もあり保険の加入とその書類を受け取るのが遅くなってしまい、それが在留許可の申請に響くことになる。

結局保険の問題がもとで、在留許可の延長申請に行ったのは6月下旬近くにずれ込んでしまい、しかもその時点で保険の書類はまだ届いていなかったのである。
在留許可の申請はウィーン市役所35課(Magistratsabteilung 35)、通称MA35と呼ばれる部署で行う。ウィーン市役所ではそれぞれの課に番号がついており、例えば文化関係の事柄だったらMA7が、環境保全の問題はMA22が、土木関連はMA37が、消防や災害対策はMA68がそれぞれ管轄するといった具合に部署が分かれている。そしてMA35は移民や市民権に関する事柄を担当しており、在留許可の手続きもここの管轄となる。MA35の事務所は市内に数か所あり、新規申請は20区のTraisengasseという駅の近くにあるサービスセンターで行う。(おそらくここが本部だろう。) ところが延長申請の際には住んでいる区によって行く場所が異なる。例えば2区と21区と22区の住民は2区のStadionという駅のそばにある事務所で行う。この駅の前にはその名の通り大きな競技場があり、それと同じ建物の中に役所が併設されている。
MA35はおそらくどこの事務所も混雑しており、午前中の早い時間に行かないと何時間も待たされることになる。私が最初にStadionの事務所に行ったのは6月19日だが、その時は書類を提出するまでに1時間以上待たされ、さらに書類の審査結果が出るまでにも長い間待たされた。そしてその審査の結果、約2週間以内に不足書類を提出するよう求められた。保険の証明書、銀行の口座残高通知書(過去4週間分)、大学の在籍証明、借金に関する証明書の4点である。このうち保険の証明書は想定内だったし、銀行口座の書類も預金している銀行のホームページから簡単に作成できた。ところが問題は大学の在籍証明書である。私はウィーン大学で研究をしているが学生として大学に登録されていないので、証明書を作成しようがない。これについて奨学金の機関に相談したところ、「特例在留許可」の申請の場合にはそのような書類は必要ないはずとのことだった。奨学金の機関のスタッフには法律の専門家もいるらしく、この問題についてはその人がMA35に問い合わせてくれたらしい。ちなみに私は同じタイミングで自分でもこれについてMA35に問い合わせたところ、在籍証明書がないならばStellungnahmeなる書類を提出するようにと言われた。日本語でいうと意見書のようなものだが、これについては友人と相談し、指導教員の先生(ウィーン大学の教授)に推薦書を書いてもらうことになった。
ちなみに借金に関する証明書については奨学金の機関と相談したところ、「私はオーストリアで全く借金をしていません」という旨を書いただけのシンプルな書類(おそらくスタッフがその場で作った)を渡され、そこに私が署名をした。
そして6月末には保険会社から書類も届き、7月初めにそれらの書類をすべて持って再びMA35に行った。借金に関する書類がこんな単純なものでいいのか、また相手が求める“Stellungnahme”は大学教授からの推薦文で大丈夫なのか、いろいろと不安だったが、これらの書類はすべて受理され、職員さんからは後日自宅に手紙が届くことを伝えられた。書類が受理されると後日、IDカードができたので取りに来るようにと書いた手紙が届くそうだが、これにはかなり時間がかかり、友人の話では2週間で来た人もいれば5週間もかかった人もいる。私の場合、3週間後に手紙が届き、やっと在留資格が認められたかと思ったら、中身を見ると保険に関する追加書類を求める内容だった。
7月初めに提出した保険の書類は、保険の内容について書かれたもので、この時点では保険の証明書(Versicherungsbestatigung)がまだ届いていなかった。MA35から手紙が届いた時点ではこの証明書をすでに受け取っていたので、それを持参して7月最後の週に三たびMA35を訪れた。
そして8月上旬も終わる頃になってようやくEinladungをもらうことができ、8月下旬にIDカードを受け取れることになった。在留許可は基本的に1年間しか認められないので、2年以上住む人は毎年必ず延長申請をしなければならない。私のウィーン滞在は来年6月末までの予定なので延長申請は今回1回きりで済むが、何年も滞在している人(自分の友人にも数名いる)はこの面倒な手続きを毎年行っているのだ。オーストリアでお役所を相手にするには忍耐力が必要なのだとつくづく実感させられる。

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佐野旭司 (Akitsugu  Sano)
東京都出身。青山学院大学文学部卒業、東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程および博士後期課程修了。博士(音楽学)。マーラー、シェーンベルクを中心に世紀転換期ウィーンの音楽の研究を行う。
東京藝術大学音楽学部教育研究助手、同非常勤講師を務め、現在東京藝術大学専門研究員およびオーストリア政府奨学生としてウィーンに留学中。