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古楽アンサンブル コントラポント 第24回定期公演 モンテヴェルディ生誕450年記念演奏会2|大河内文恵

古楽アンサンブル コントラポント 第24回定期公演 モンテヴェルディ生誕450年記念演奏会2

2017年5月24日 カトリック東京カテドラル関口教会聖マリア大聖堂
Reviewed by 大河内文恵(Fumie Okouchi)
Photos by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)

<演奏>
古楽アンサンブル コントラポント
花井哲郎:指揮
  ソプラノ Soprani: 花井尚美  広瀬奈緒  染谷熱子  田村幸代
  アルト alti: 金沢青児  輿石まりあ
  テノール Tenori: 櫻田亮  富本泰成  櫻井元希  福島康晴
  バス Bassi: 春日保人  松井永太郎
  ヴァイオリン violini: 丹沢広樹  丸山韶
  ヴィオローネ violone: 西澤央子
  コルネット cornetti: 上野訓子  笠原雅仁  湊仁美
  トロンボーン tromboni: 宮下宣子 大内邦靖 青木治夫
  フルート、リコーダー flauti: 太田光子 前田りり子 春日保人
  リュート liuto: 金子浩 笠原雅仁
  ハープ arpa doppia: 伊藤美恵
  オルガン organo: 上尾直毅

<曲目>
クラウディオ・モンテヴェルディ:聖母の夕べの祈り

 

モンテヴェルディの生誕450年にあたる今年は、記念年(アニバーサリー)としてモンテヴェルディ作品の演奏会が数多くおこなわれている。その中でもこの『聖母の夕べの祈り』はいろいろな団体が演奏を予定している人気の作品である。普段クラシック音楽を聴き慣れている人でも、モンテヴェルディのような初期バロックには馴染みのない人も多い。オペラならともかく、こういった宗教声楽曲はとかく敷居が高くなりがちでもある。実際、筆者もルネサンスや初期バロックの声楽曲の演奏会で眠ってしまったことが過去にあり、今回もしそうなったら、、、と無駄にプレッシャーがかかっていた。

それがまったくの杞憂であったことは演奏が始まってすぐにわかった。詩編とモテットの交代からなるこの作品は、いかにも宗教音楽的な前者とバロック・オペラをおもわせる劇的様式をもつ後者が交互にあらわれる。今回は、そこにさらに詩編の前後を囲む形でグレゴリオ聖歌のアンティフォナが挿入され、前者と後者の間でいったんリセットされる。3種類の音楽が入れ代わり立ち代わりあらわれ、しかもそれぞれの編成や音楽内容が変化していく。飽きる暇などない。

丹下健三の設計による東京カテドラル聖マリア大聖堂は、一見、教会とは思えない斬新な見た目に反して、豊富な残響をもち宗教音楽の演奏に非常に適した建物である。ただ、響きが良すぎるためにうまくコントロールされていないと、何を歌っているのかさっぱりわからなくなるという危険性がある。その点、彼らの歌唱は残響をうまく味方につけてよくコントロールされていた。ただ、伴奏の楽器が多くなると、無意識にそれに掻き消されないようにするためか歌詞が聴き取りにくくなる傾向はあった。

詩編部分も素晴らしいのだが、やはり耳に残るのはモテットの部分である。3曲目「私は黒い」のテノール・ソロは際立っていたし、7曲目「二人のセラフィムが」では2人のテノールの細かく音を揺らす部分の見事さと、「3」という数字が歌詞にあらわれるところで奏でられる楽器による三和音の調和の完全さによって、モンテヴェルディの腕前の高さを見せつけられた。

第9曲「天よ、聞いてください」とマニフィカトではエコーが用いられているが、教会の豊かな響きと相俟って絶大な効果をあげており、神の存在を信じたくなるような気持ちになった。また、器楽奏者では、第11曲のソナタにおけるヴァイオリンと第13曲のリコーダーがとくに印象に残ったが、リュート、ハープ、オルガンも折にふれてよい動きをしていたと思う。

作品そのものの良さと構成の上手さ、演奏のレヴェルの高さが今回の満足度の大きな要因ではあるが、食わず嫌いはひとまずやめて、せめてモンテヴェルディ・イヤーの今年はこういった演奏会に足を運ぶ機会を増やしてみようと、心に誓った夜だった。