Back Stage|「ぱんだウインドオーケストラ」
Back Stage
上野で育ったもう一匹のパンダ!?「ぱんだウインドオーケストラ」
text by伊藤啓太(Keita Itoh)
吹奏楽の隆盛期と言われて久しいですが、今でもその盛り上がりは続いていると言えるでしょう。中学生・高校生を中心とする10代はもちろん、幅広い年齢層からの人気はいまだ衰えません。そのような吹奏楽界に最近突如として現れ、ひときわ注目を集めているのが、今回ご紹介する「ぱんだウインドオーケストラ」です。
ぱんだウインドオーケストラ(以下PWO)は東京藝術大学音楽学部管打楽器専攻の卒業生を中心とする吹奏楽団です。2011年、中国から東京・上野動物園に“リーリー”“シンシン”二頭のパンダがやってきましたが、PWOの中心メンバーもそれとほぼ同時期に東京・上野にある東京藝術大学へ入学。その縁から「ぱんだ」という名前をつけることになりました。
大学在学中の2011年に結成し、現在メンバーは40名ほど。コンサートマスターでサクソフォンの上野耕平(第6回アドルフ・サックス国際コンクール第2位、第28回日本管打楽器コンクール第1位)やユーフォニアムの佐藤采香(第9回チェジュ国際管楽器コンクール第2位、第32回日本管打楽器コンクール第1位)をはじめ、メンバーは続々と国内外のコンクールで入賞を果たしてきています。まさに次世代を担う管打楽器プレイヤーがそろう、新進気鋭の若手吹奏楽団と言えるでしょう。
私は彼らと出会い、5年目になりますが、その演奏に毎回驚かされます。お互い切磋琢磨しあい築き上げた確かな技術、若さあふれる瑞々しく爽やかな音、和気あいあいとした雰囲気から生まれる一体感のある豊かな響き。しかもそれらは一回目、二回目と回を経るごとに確実に洗練されていくのです。まだメンバー全員が20代だからこそ、限りない可能性を常に感じさせてくれます。
PWOはこれまでに4回の定期演奏会を開催していますが、特にメンバーのこだわりが強いのはそのプログラミング。プログラムを決定する選曲会議は主にコンサートマスターとインスペクターからなる楽団委員会を中心に開かれます。その時に一番重要視するのは「吹奏楽にしかない魅力を十分に発揮できる楽曲であるかどうか」。この吹奏楽の魅力を深められる作品の発掘、ひいては、いわゆる吹奏楽というジャンルの追求がPWOの活動の一つの柱になっています。
例えば、PWO委嘱作品《PANDASTIC!!/前久保諒》は軽快で爽やかな、いかにも吹奏楽らしいマーチ。まさにPWOのテーマ曲にふさわしい作品で、第2回定期演奏会で披露して以来、すっかり公演の幕開けとして定着しています。また、第4回定期演奏会では、20年弱もの間、日の目を見ることの無かった幻の作品《オール・デウーヴル/黛敏郎(長生淳)》を初演。今ではコンクールの全国大会で演奏されるなど、人気の作品となっています。
また、趣向を凝らしたプロモーションもPWOの特徴的な活動の一つです。これまでプレイヤー自らの手でTwitterやYouTubeなどのSNSを活用し、多くの方の目に留まる方法を模索してきました。その中の一つである、サクソフォン、フルート、オーボエなどの各楽器をフォーカスした動画や、合奏風景の撮影をした動画など、独自性豊かなオリジナル動画は多くの方からご好評をいただいております。まだという方はぜひ一度ご覧いただければ幸いです。
このように強いバイタリティを持って活動を行ってきたPWOが12月16日に発売する新アルバム「PANDASTIC!!〜Newest Standard〜」(日本コロムビア)でついにメジャーデビュー。その発売記念コンサートを2016年3月20日に、ゲスト・コンダクターに山田和樹さんを迎えて、東京藝術大学奏楽堂にて開催致します。
卒業後の第一歩である今回のコンサートはもちろん、それを経てどのような吹奏楽団に成長していくのか、今後ぜひご注目いただければ幸いです。
伊藤啓太(コンサートイマジン)
ぱんだウインドオーケストラ公式HP http://www.pandawindorchestra.com
YouTube https://www.youtube.com/channel/UCE7EZaeOJ8PsRDsupchsydw
Twitter https://twitter.com/Panda_w_o
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公演情報
2016年3月20日(日)19:00開演 東京藝術大学奏楽堂
「ぱんだウインドオーケストラCD発売記念コンサート」
出演:石坂幸治(指揮)、山田和樹(ゲスト・コンダクター)、ぱんだウインドオーケストラ
http://www.concert.co.jp/concert/detail/1084/
CD情報
http://columbia.jp/artist-info/pwo/index.html