Pick Up(2026/4/15)|プリンスオペラ《トスカ》|長澤直子
プリンスオペラ《トスカ》公演レポート
Prince Opera “Tosca”
2026年3月28日/29日 北とぴあ つつじホール
2026/3/28,29 Hoku Topia Tsutsuji Hall
Text&Photos by 長澤直子(Naoko Nagasawa)
プリンスオペラ 第1回公演
プッチーニ作曲 《トスカ》オペラ全3幕
会場:北とぴあ つつじホール
日時:2026年3月28日(土)・29日(日) 14:00開演
指揮:澤村杏太朗
演出:角直之
キャスト
3月28日
トスカ:今牧香乃
カヴァラドッシ:山本雄太
スカルピア:明珍宏和
アンジェロッティ:水島正樹
スポレッタ:姜延岐
堂守:仲田尋一
シャルローネ・看守:目黒知史
羊飼いの少年:青柳茉子
ロベルティ:駒田敦嗣
3月29日
トスカ:梶田真未
カヴァラドッシ:前川健生
スカルピア:今井俊輔
アンジェロッティ:水島正樹
スポレッタ:濱田翔
堂守:小野寺光
シャルローネ・看守:目黒知史
羊飼いの少年:浅田真理子
ロベルティ:齋藤涼平
合唱:プリンスオペラ合唱団
(賛助)歌人三昧サマディ
ピアノ:角田貴子(3月28日)、古野七央佳(3月29日)
合唱指揮・オルガン:芹沢 真理
衣装コーディネート・チラシ・団体ロゴデザイン:GIL III
照明:庄司樹(株式会社Dort)
ヘアメイク:高橋清子、高田静江
衣装製作:MARIKO
王子の地に新たに誕生したプリンスオペラの旗揚げ公演として、《トスカ》が上演された。本団体は、二十余年に渡り舞台活動を積み重ねてきた明珍宏和の構想が具体化したものであり、コロナ禍を経た舞台芸術の状況を背景に、新たな創造の場を立ち上げる試みとして発足。地域とともに文化を育むことを模索するという。
団体の第一歩として選ばれたプッチーニ作曲の《トスカ》は、イタリアオペラの金字塔とも言われる作品だ。その名作たる所以は、当時の政治や社会情勢との深い結びつきが、人々の感情や意識に直接働きかけてきた点にある。いわゆるリソルジメント(イタリア統一運動)の時代において、音楽が自由や解放への希求と結びついていたという歴史的背景は、「再生」や「復興」といった理念とも響き合うものである。世代を越えて人材が交わりながら活動する場を目指すという本団体の方向性を示す選択として興味深い。
演出を手がけた角直之は、本作を「信仰と暴力」という2つの主題でまとめ上げた。視覚的なキーアイテムとして用いられたのが北区王子にゆかりがあるという「紙」である。舞台上には、おびただしい数の「祈る手」。一見してグレーの舞台は、目を凝らしてみると一つ一つが「祈る手」なのだ。2000枚に及ぶデューラーの「祈る手」の複写が、床や壁、十字架、テーブルや椅子の脚部にまで貼り巡らされた。
また、主要三役の衣装には地域を象徴する花――トスカにはサクラ、カヴァラドッシにはツツジ、スカルピアには黒バラ――があしらわれていた。これは、29日のカヴァラドッシ役の前川のアイデアによるものだという。
本作はピアノ伴奏による上演であったが、全体に聴きごたえのある内容となった。使用されたピアノは国産と思われるが、約400席規模の空間に対して充分な響きを持ち、音の輪郭と推進力とが明確に感じられた。
主要三役は両日ともに、役柄に適した声質を備えており、感情の振幅に対応する声の強度、演技の上でも申し分ない。これに対し、他の出演者においても各役に求められる声の性格が的確に表現されており、全体として音楽的なバランスが保たれていた点も印象に残る。
なお、1日目の出演者はオーディションにより抜擢された若手が中心となっており、将来が大いに期待される。
合唱は、北区在住者や音楽愛好家を中心に構成されたプリンスオペラ合唱団が担い、地域と結びついた活動の一端がここにも表れている。黙役やエキストラも含め、舞台に集団としての厚みをもたらす役割を果たしていた。本合唱団は、今後のプリンスオペラの団体としての発展を支える重要な要素となるだろう。
すでに第2回公演《仮面舞踏会》の開催も発表されており、そのオーディション情報も気になるところだ。地域に根差した質の高い芸術を育て、世界に向けて発信していくことを目指す団体として、今後もその挑戦を継続してほしいものである。
(2026/4/15)
3月28日(土)






























3月29日(日)





























