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注目の公演・イベント|2025年2月

♩2/1 グレゴリー・クンデ 偉大なキャリアを経ていまが旬

アメリカのテノール歌手グレゴリー・クンデ、70歳となった今でもまったく衰えを見せることなく、世界トップレベルの歌唱を聴かせている。もともとロッシーニなどベルカントの技巧を得意とするテノールとして活躍していたが、次第に重めの役もレパートリーに加えるようになってきた。10年ほど前からは、ヴェルディの《オテッロ》のタイトルロールをも歌うようになった。2023年7月にはチョン・ミョンフンの指揮で東京でも歌を披露してくれている。このリサイタルでは、ヴェルディ、プッチーニの様々なアリアのほかにオールディーズ・ポップスを歌うという。彼の多様なレパートリーを楽しむことができるだろう。

2/1@サントリーホール
https://ticket.rakuten.co.jp/music/classic/opera-vocal/rtcq24x/

 

♩2/3~7 アジア音楽祭2025 in Kawasaki

かつてE・サイードは「一人の人間の中に複数のアイデンティティが内在することも可能なのではないか」と論じたことがある。今回川崎に集まる日本人を含んだアジアの音楽家たちも西洋クラシック・現代音楽と自分の属する共同体内の音楽というアイデンティティを合せ鏡のようにして自己の音楽を紡ぐ者たちであろう。脱亜入欧でもなく、八紘一宇でもなく、一即多・多即一の、そんな世界を音楽の中だけでも夢見たい。

2/3~2/7@ミューザ川崎シンフォニーホール&市民交流室(ミューザ川崎 音楽工房内)
https://www.jfcomposers.net/concert/asian-music-festival-2025-in-kawasaki-1/

 

♩2/3  札幌交響楽団 東京公演2025

こんな時代が来るとは誰が思ったことであろうか? 今年も伊福部昭の傑作『ピアノと管絃楽のためのリトミカ・オスティナータ』がライヴで聴ける! 90年代にキングレコードの「伊福部昭の芸術」シリーズで作曲家監修のセッション録音に携わった広上淳一の指揮で、近年大活躍中の外山啓介ピアノ、また札響は「伊福部昭の芸術」で高関健と組んでマスターピースとなるCDを録音したこともあるというのだから折り紙付きというものだろう。伊福部と対照的な日本の巨星・武満徹の作品と、伊福部のデビュー曲を賞賛した(という説もある)シベリウスの交響曲第2番が置かれるのも実ににくい。行かねばなるまい。

2/3 @サントリーホール
https://www.sso.or.jp/concerts/2025/02/tokyo-2025/

 

♩2/8、9 NHK交響楽団 第2031回 定期公演 Aプログラム
♩2/13,14 NHK交響楽団 第2032回 定期公演 Bプログラム

2022年の8月に東響に客演予定であったマティアス・ピンチャーがドクターストップにより来日不能となり、急遽代役として登場したのが日本では無名に近かった存在のペトル・ポペルカ。この際に非常な名演を披露してその名前が一気に知れ渡る。そして2024年7月には芸術監督兼首席指揮者を務めているプラハ放送響と再び来日、ここでも瞠目すべき演奏を成し遂げたのだった。東響客演時にその「期待をはるかに上回る名演」に接したN響の企画担当者、何とか自身のオケに呼べないかと打診していたとのこと、それがこのたびようやく実現の運びとなる。A、B定期あわせて4公演。

2/8,9@NHKホール
https://www.nhkso.or.jp/concert/202502A.html?pdate=20250208
https://www.nhkso.or.jp/concert/202502A.html?pdate=20250209
2/13,14@サントリーホール
https://www.nhkso.or.jp/concert/202502B.html?pdate=20250213
https://www.nhkso.or.jp/concert/202502B.html?pdate=20250214

♩2/10,11 東京都交響楽団 第1016回定期演奏会Aシリーズ、都響スペシャル〈ショスタコーヴィチ没後50年記念〉

ショスタコーヴィチの交響曲第13番 変ロ短調《バービイ・ヤール》をエリアフ・インバルが指揮する。ナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺、帝政ロシア~ソ連における反ユダヤ主義や圧政を告発する内容のテキストが、巧みなオーケストレーションと一体となり、内なる怒りと皮肉をこめて歌い継がれる。バスの独唱と男声合唱という声楽の編成も曲の内容に合っている。井上道義=NHK交響楽団の名演を聴いたばかりだが、インバル=東京都交響楽団もそれとは異なる表現で惹きつけてくれるだろう。

2/10,11@東京文化会館大ホール
https://www.tmso.or.jp/j/concert/detail/detail.php?id=3809&my=2025&mm=2

 

♩2/10,11 空間を聴く・描く・編む

ミュージック・コンクレート(具体音楽)からヘールシュピール(ラジオドラマ)、即興音楽などなどジャンル横断的な活躍をみせたリュック・フェラーリ没後20年を記念してヘールシュピールをアクースモニウム(多次元立体音響装置)で聴くという贅沢極まりない会が開催される。フェラーリ研究者の椎名亮輔とクリストフ・シャルルのトーク、檜垣智也、渡辺愛、佐藤亜矢子の新作も楽しみだ。

2/10,11@パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』
https://acousmoniumtokyo2025ferrari.peatix.com/

 

 

♩2/13 ピアノ・トリオ・フェスティヴァル2024 ―Ⅲ

紀尾井ホール主催のピアノ・トリオ・フェスティヴァル2024-IIIに登場するのは金川真弓・佐藤晴真・久末航トリオ。ミュンヘンARD国際音楽コンクールの覇者佐藤晴真と久末航、チャイコフスキー4位、ロン=ティボー2位入賞の金川真弓の若き3人トリオの日本デビュー。ジョーン・タワー:Big Sky 、ベートーヴェン/ライネッケ:ピアノ、ヴァイオリン、チェロのための三重協奏曲ハ長調、チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲《偉大な芸術家の思い出に》 と刺激的プログラム。室内楽ファン必聴!

2/13@紀尾井ホール
https://kioihall.jp/20250213k1900.html

 

♩2/14 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団第376回定期演奏会

ロマン派の模範・古典とも言うべきブラームスの交響曲第3番を前座にして轟くのは伊福部昭の合唱付きの宗教的大作『交響頌偈(じゅげ)釈迦』。西の響きと東の響きがぶつかり合うのか、お互いにお互いを高め合うのか、近年伊福部作品を多く振っている藤岡幸夫の手腕の見せ所だ。

2/14@東京オペラシティコンサートホール
https://www.cityphil.jp/concert/detail.php?id=521&y=2025&m=2

 

 

 

♩2/15 いずみシンフォニエッタ大阪 第53回定期演奏会

「五大陸を巡るシン・音楽漫遊記」と題してのコンサート。アフリカと西洋の境界を開くマイケル・ブレイク《クウェラ》、現代音楽の巨匠ピエール・ブーレーズ《デリーヴ1》、ブラジルの大作曲家エイトール・ヴィラ=ロボス《7つの音のシランダ》、オセアニアのカール・ヴァイン《オーボエ協奏曲》、アジアの新進室元拓人(関西出身若手作曲家委嘱プロジェクト第10弾)の新作初演が並ぶ。地域も世代も異なる5作に今を見よう! 演奏:飯森範親(指揮)、古部賢一(オーボエ)、東口泰之(ファゴット)、いずみシンフォニエッタ大阪。

2/15@住友生命いずもホール
https://www.izumihall.jp/schedule/20250215

 

♩2/15 大瀧拓哉ピアノリサイタル

2016年開催のオルレアン国際ピアノコンクールで優勝、近現代作品で極めて先鋭的な演奏を繰り広げている大瀧拓哉が先の11月にコジマ録音よりジェフスキ作品集をリリースした。これを記念しての本リサイタルはそのアルバムと同じジェフスキの「不屈の民」変奏曲、そしてノース・アメリカン・バラードから4曲が取り上げられる。最大席数88という親密な空間で大瀧の稀有なピアニズムを堪能できる貴重な機会だ。

関連記事:注目の1枚|ピアノ・チェンバロ:大瀧拓哉 フレデリック・ジェフスキ『「不屈の民」変奏曲』『ノース・アメリカン・バラード』|齋藤俊夫

2/15@ベヒシュタイン・セントラム東京
https://www.bechstein.co.jp/events/20250215/

♩2/15,16,22,23 濱田芳通&アントネッロ/モンテヴェルディ 音楽寓話劇『オルフェオ』

常にクリエイティヴィティに富んだ演奏を繰り広げる濱田芳通&アントネッロによるモンテヴェルディの『オルフェオ』。濱田芳通は本公演についてのインタビューで「レチタール・カンタンド」について言及しているが、今回の『オルフェオ』では作品の中核をなすそのレチタール・カンタンドの新しい捉え方に挑戦したい、と述べる。後年の作品より自由度の高い再現が可能な初期バロック作品の『オルフェオ』ゆえ、この公演のためにオーディションで選ばれた新メンバーが加わったアントネッロがこの物語をどう表現するのか、期待が高まる。

2/15,16@兵庫県立芸術文化センター
2/22,23@神奈川県立音楽堂
https://www.anthonello.com/schedule/detail/?id=86

♩2/18 大阪フィルハーモニー交響楽団 第57回東京定期演奏会

近年の尾高忠明の演奏には以前からの端正な構築性にプラスして豪放な性格が濃厚になっているように思えるが、大フィル恒例の東京定期演奏会ではその尾高がブルックナーの交響曲第4番を振る。先の12月における同じブルックナーの交響曲第8番もデモーニッシュな豪演だったようだが、それゆえこの第4にも期待は高まるというもの。松村禎三の管弦楽のための前奏曲があわせて演奏されるが、これは実演ではなかなかお目にかかれない。なおのこと必聴だ。

2/18@サントリーホール
https://www.osaka-phil.com/events/event/1955/

 

 

♩2/20,21,23,24 《ドン・ジョヴァンニ》

鈴木優人率いる古楽器アンサンブル、バッハ・コレギウム・ジャパンの管弦楽と合唱、国内外で活躍する歌手たちによるモ ーツァルトの歌劇《ドン・ジョヴァンニ》。演出は飯塚励生、美術を担当するのは現代美術作家、杉本博司。昨年の《魔笛》に次ぐ第2弾となる。どのようなプロダクションとなるか期待は大きい。ドンナ・エルヴィラのカリーナ・ゴーヴァンの初来日も楽しみ。

2/20,21,23,24@めぐろパーシモンホール 大ホール
https://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/25_dongiovanni/

 

 

♩2/20、22 ウィーン・アマデウストリオ

ウィーンで2020年結成のピアノトリオの初来日。メンバーはウルフガング・ダヴィドvn、ウルフガング・パンホーファーvc、ベルンハルト・パルツpfで、ウィーン古典派への愛と造詣を軸に国際的に活躍を開始。ハイドン、ベートーヴェン、シューベルトとまさに馥郁たるウィーンの香を立ち上らせてくれることだろう。

2/20@青山音楽記念館バロックザール
2/22@サントリーホール ブルーローズ
https://www.jmassoc.info/blank-2/uin-amadeusutorio-ensokai

 

 

 

♩2/20,22,23,24 東京二期会《カルメン》

このプロダクションが終わった直後から、新国立劇場で同じ《カルメン》の公演が始まる。こちらは2021年コロナ禍の最中に初演されたもので、今回はその時の制約をなくした版での上演になるといわれている。ともかく、同じオペラを同じ都市で同時期に聴き比べることができるというのは贅沢な話だ。新制作となる東京二期会の《カルメン》、演出家と指揮者ともに女性となる。イリーナ・ブルックは日本ではオペラ初演出。演出家ピーター・ブルックの娘で、ヨーロッパを代表する演出家。指揮の沖澤のどかは、京都市交響楽団の常任指揮者であり、またセイジ・オザワ 松本フェスティバル首席客演指揮者でもある。彼女ら二人のコラボレーションがどのような成果を挙げるか注目したい。

2/20,22,23,24@東京文化会館 大ホール
https://nikikai.jp/lineup/carmen2025/

♩2/22,23 山形交響楽団 第322回定期演奏会

準・メルクル、山響初登場。メルクルお得意のメンデルスゾーンに「鳥」繋がりでレスピーギの組曲『鳥』(山響初演奏)とストラヴィンスキーの『火の鳥』(1919年版)。緻密でスポーティながら極めて陰影に富む演奏をするメルクルの多層性と初共演の「化学反応」に注目したい。

2/22,23@山形テルサホール
https://www.yamakyo.or.jp/concert/subscription/20250222.html

 

 

 

♩2/25 名古屋フィルハーモニー交響楽団 東京特別公演

名フィル東京特別演奏会は音楽監督の川瀬賢太郎によるマーラーの『悲劇的』。2024年はレスピーギのローマ三部作で熱狂と精密さを兼備した名演を披露した同コンビは今絶好調期にある。川瀬が東京での演奏を熱望していたマーラーだけに今回も期待できよう。

2/25@東京オペラシティ コンサートホール
https://www.nagoya-phil.or.jp/2024/011517202626803.html

 

 

 

♩2/26 群馬交響楽団 第15回室内楽演奏会

群響メンバーによる第15回 室内楽演奏会は「今夜は主役!エディクソン・ルイスと贈るコントラバスの調べ」。首席コントラバス奏者市川哲郎プロデュースで、ベルリンフィルのエディクソン・ルイスほか若林昭、石神悠、片倉宏樹にコンマス福田俊一郎vn、池田美代子va、長瀬夏嵐vcが集合してのロッシーニからドヴォルジャークまで多彩な曲目でその魅力を披露する。コンバス好きには堪らない一夜。

2/26@高崎芸術劇場 音楽ホール
https://www.gunkyo.com/concerts/629/

 

 

♩2/27 トリオ・エクス

紀尾井ホールの「 明日への扉 第42回」は ピアノ・トリオ・フェスティヴァル2024 番外編として、2022年ベルリンで結成したばかりのトリオ・エクス(ピアノ三重奏)が登場。メンバーはリード希亜奈、友滝真由、藤原秀章で、リヨン国際音楽コンクール第3位入賞のキャリア。メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第2番、レベッカ・クラーク:ピアノ三重奏曲 、ブラームス:ピアノ三重奏曲第1番 とひねりの効いたプログラム。若手の充実著しい日本室内楽界に新星が新風を吹き込んでくれよう。

2/27@紀尾井ホール
https://kioihall.jp/20250227k1900.html

 

♩2/28 カルテット・アマービレ/ベートーヴェン 弦楽四重奏曲全曲演奏会vol.4

カルテット・アマービレによるベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲演奏会の4回目。Op.18の中で唯一短調のドラマティックな第4番、そしていわゆる「後期弦楽四重奏曲」の最初となる第12番、そしてその最後の第16番。アマービレはリリカルな曲においてより上手さを発揮するように思うが、第4をどう聴かせるかに興味を惹かれる。

2/28@王子ホール
https://www.ojihall.jp/concert/lineup/2024/20250228.html