注目の公演・イベント|2025年1月
1964年に創立された、邦楽器による現代合奏集団・日本音楽集団が、現代雅楽のスペシャリスト集団伶楽舎とタッグを組む。伊福部昭の傑作「郢曲鬢多々良」の生演奏も嬉しいが、なにより池辺晋一郎による日本音楽集団&伶楽舎の競演のための委嘱新作に心躍る。何が起きるか今からワクワクが止まらない。
1/10@豊洲シビックセンター5Fホール
https://promusica.or.jp/ticket/244.html
2023年から3年計画で開始された「3大B」―ベートーヴェン、バルトーク、ブラームス―の弦楽四重奏曲コンサート最終回。今回はそれぞれの第3番が取り上げられる。同じ「第3番」でありながら、ベートーヴェンのそれは6曲連作である作品18の中で最初に作曲された未だ古典的な弦楽四重奏曲、バルトークは第2番から一気に飛躍した先鋭性を持ち、そしてブラームスは全曲が極めて有機的に構成されたこの作曲家円熟期の傑作。インテグラがそれらをどう描くのか興味は尽きない。
1/11@第一生命ホール
https://www.triton-arts.net/ja/concert/2025/01/11/3976/
♩1/14 東京都交響楽団 第1014回定期演奏会Bシリーズ
♩1/15 都響スペシャル
スラットキンと都響の初共演。同氏の夫人であるシンディ・マクティーの「弦楽のためのアダージョ」は題名からしてバーバーを意識したものであろうか。「9/11」への思いを込めた2002年の作品。続いては傑作ながらなかなか実演で聴く機会のないウォルトンのヴァイオリン協奏曲、ソロには気鋭の金川真弓。そしてメインにはスラットキンの得意とするラフマニノフの交響曲第2番。指揮者とオケのケミストリーを期待したい。
1/14@サントリーホール
https://www.tmso.or.jp/j/concert/detail/detail.php?id=3805
1/15@サントリーホール
https://www.tmso.or.jp/j/concert/detail/detail.php?id=3806
♩1/14,19 バンジャマン・ベルナイム テノール・コンサート〈NBS旬の名歌手シリーズ―XI〉
フランスのテノール、世界中の歌劇場から引く手あまたの歌手。39歳という充実した時期での来日となる。オペラ・アリアをオーケストラの伴奏で歌い上げる。《エフゲニ・オネーギン》《愛の妙薬》《トスカ》といったバラエティーに富んだ選曲も楽しみだが、なんといっても彼が得意とするフランス・オペラ、《ウェルテル》《ロメオとジュリエット》《マノン》などは彼の出演を前提として考えられる演目。旬の歌手の最高の演奏が楽しめるだろう。
1/14@東京文化会館大ホール
1/19@サントリーホール
https://www.nbs.or.jp/stages/2025/tenor-concert/
フランス古楽界の若き貴公子、チェンバロのジュスタン・テイラーも王子ホール3度目の登場となる。前回テーマのフランスからイタリアへ、「バッハとイタリア」と題し、スカルラッティ、ヴィヴァルディ、マルチェッロらイタリアからの影響を受けたバッハを浮き彫りにする仕掛け。ドイツの憧れは常にイタリアの太陽の輝き。どんな風景が見えてこようか。
1/15@王子ホール
https://www.ojihall.jp/concert/lineup/2024/20250115.html
♩1/17,18 日本フィルハーモニー交響楽団 第767回東京定期演奏会
シカゴ響とニューヨーク・フィルへのデビューを果たし、2025年にはベルリン・フィルへの登壇も予定されている今や飛ぶ鳥を落とす勢いの山田和樹によるイギリス・プログラム。現在バーミンガム市交響楽団の音楽監督を務める山田ゆえイギリス作品にも力を入れていると推察されるが、このコンサートの注目はエルガーの交響曲第2番。第1番に比べて作風はより晦渋になり演奏頻度が低いものの、第1番に勝るとも劣らぬ傑作である。山田ならではの明快な演奏が期待されよう。R・ヴォーン・ウィリアムズの『揚げひばり』も周防亮介のソロともども楽しみ。
1/17,18@サントリーホール
https://japanphil.or.jp/concert/20250117
♩1/18,19 NHK交響楽団 第2028回 定期公演 Aプログラム
2022年から開始されたロシアによるウクライナ侵攻。この事態によりロシアのアーティストはその政治的態度を問われることとなるが、ソヒエフはボリショイ劇場とトゥールーズ・キャピトル管の音楽監督を辞任する。人間は政治と無縁に生きられはしないが、ソヒエフのこの態度は悩み抜いた末の独立独歩の精神の表明と捉えられよう。そのソヒエフがショスタコーヴィチの『レニングラード』を演奏する。音楽外のストーリーを音楽に過度に投影して聴くのは控えたいが、これはどう考えても特別な演奏となるに違いあるまい。
1/18,19@NHKホール
https://www.nhkso.or.jp/concert/202501A.html?pdate=20250118
https://www.nhkso.or.jp/concert/202501A.html?pdate=20250119
♩1/19 大川由美子 ピアノリサイタル〜アンダルシアに魅せられて〜
1975年から1986年までドイツ在住。カール・ゼーマン、パウ ル・バドゥラ=スコダ等、ドイツ正統派のほか、スペインのピアニスト、ベゴーニャ・ウリアルテに師事。1987年スペ インにてルイス・コレマン賞(スペイン音楽最優秀演奏賞)受賞。1992年「スペインは踊る」と題しフラメンコダンサー渡邊薫との共演、詩人福間健二とのコラボレーションなど多彩な活動を展開。今回はファリャ:アンダルシア幻想曲、グラナドス:アンダルーサほか、 難曲イルミナーダ・ペレス=フルトス:ハバルクス庭園の黄昏 (2024 年改訂版、日本初演)などアンダルシアの魅力をたっぷり披露。スペインの情熱と抒情に酔いたい。
1/19@王子ホール
https://proarte.jp/products/大川由美子ピアノリサイタル-アンダルシアに魅せられて
♩1/20 トッパンホール ニューイヤーコンサート 2025
ニューイヤーコンサートと聞いてウィーン・フィルのそれのようなお屠蘇気分のリラックスしたものを想像してはならない。鬼才あるいは異才5人が揃い踏みのハードコア、聴き応えあり過ぎの凄いコンサート。2025年が没後50年となるショスタコーヴィチの傑作ピアノ五重奏曲をメインとし、前半はそのショスタコーヴィチが終生規範としたバッハの無伴奏チェロ組曲から第2番、そして信頼と尊敬で結ばれていた同時代を生きたブリテンの無伴奏チェロ組曲の第1番。お察しの通り、前半はウィスペルウェイのソロリサイタルの趣き、後半はそこに4人が加わってのピアノ五重奏曲。ショスタコーヴィチとウィスペルウェイという2つ(2人)の偉大な太陽とそれを周回するそれぞれに魅惑的かつ個性的な4つ(4人)の惑星。
1/20@トッパンホール
https://www.toppanhall.com/concert/detail/202501201900.html
まさに超重量級コンサート。上岡敏之と読響の相性の良さは過去の名演から既に明らかだが、今回は2025年が没後50年となるショスタコーヴィチの交響曲第11番をメインに置き、前半はポゴレリッチが登場してのショパン:ピアノ協奏曲第2番が演奏される。上岡もポゴレリッチも一筋縄ではいかない、別の言葉を用いるなら予想のつかない演奏を繰り出す「鬼才」、一体どうなることか。この2人による協奏曲、戦々恐々(むろん良い意味で)。
1/21@サントリーホール
https://yomikyo.or.jp/concert/2023/12/644-1.php#concert
♩1/21 イル・ポモドーロ with フランチェスコ・コルティ
2012年創設の古楽オーケストラ、イル・ポモドーロの初来日(2020年予定公演の再企画)。「黄金の林檎」の意味を持つ団体名はアントニオ・チェスティ1666年作曲の同名オペラに由来。ギリシャのエル・システマのアンバサダーを務める彼らが、チェンバロの魔術師フランチェスコ・コルティと共に贈るバッハを中心としたプログラム。日本のフラウト・トラヴェルソ前田りり子がゲストで彩りを添える。
1/21@紀尾井ホール
https://kioihall.jp/20250121k1900.html
♩1/21 B→C バッハからコンテンポラリーへ268 松島理紗(ソプラノ)
東京オペラシティの名物企画「B→C バッハからコンテンポラリーへ」に、ソプラノの松島理紗が登場。ケルンを拠点に活動している。選んだ曲目はもちろんバッハを含んでいるが、彼女が得意とする現代もの、ライマン、ピンチャーから、彼女が委嘱しこの日世界初演される小倉美春の新作、そしてノーノ、ツィンマーマン、ヘンツェといった20世紀の巨匠の作品が並ぶ。刺激的なコンサートになるだろう。
1/21@東京オペラシティリサイタルホール
https://www.operacity.jp/concert/calendar/detail.php?id=16416
♩1/22~29 メンデルスゾーンー光の方に
Vol.1 (1/22)「燦々 —祝典、そして南へ」 大阪交響楽団
Vol.2 (1/25)「光輝 —見いだされた耀き」 関西フィルハーモニー管弦楽団
Vol.3 (1/26)「救済—世を照らす祈り」 日本センチュリー交響楽団
Vol.4 (1/29)「波濤—荒ぶる天才、北へ」大阪フィルハーモニー交響楽団
住友生命いずみホールが山田和樹を指揮に迎え、在阪の4オケとともに特定の作曲家作品を取り上げるシリーズが再び開催される。2022年にはシューベルトの交響曲全曲演奏を行ったが、今回のテーマはメンデルスゾーン。前回と同じく同ホール音楽アドバイザーの堀朋平が企画・監修を行い、4回にわたって交響曲全曲のほか、オラトリオの大作《エリヤ》、ヴァイオリン協奏曲、ピアノ協奏曲などを上演する。交響曲のみならず、主要な管弦楽作品をわずか1週間のうちに取り上げるのは非常に珍しい。メンデルスゾーン好きばかりでなく、あらゆるオーケストラ・ファンにとって記憶に残る機会となるだろう。
1/22~29@住友生命いずみホール
https://www.izumihall.jp/news/notice/mainproject
♩1/25 アンサンブル・ア・ラ・カルト69「月に憑かれたピエロ」をめぐる冒険
20世紀初頭における無調音楽と抽象絵画の誕生にあらためて着目しながら、シェーンベルク、ヴェーベルン、ベルクの傑作に新たな光を当てようとする演奏会。シェーンベルクの《月に憑かれたピエロ》において、山城大督の映像美術と音楽の協働が試みられる点が注目される。この曲で歌うのは、現代音楽に精通した太田真紀。彼女とピアニストの北村朋幹をはじめ、現代を代表する演奏家たちが繰り広げるアンサンブルも期待される。
1/25 ザ・フェニックスホール
https://phoenixhall.jp/performance/2025/01/25/22073/
このところ毎年来日してくれるポゴレリッチ、2025年のリサイタルは3回(協奏曲も弾くがそれは別項の読響を参照)。前半はモーツァルトのソナタと幻想曲にアダージョ、後半はショパン。今回のプログラム中、モーツァルトではトルコ行進曲付ソナタと幻想曲K.397、ショパンはソナタ第2番を過去録音しているが、とはいえそれは30年あるいは40年も前の昔のこと。今のポゴレリッチがそれらの作品にどう向き合うのか。演奏の都度自身と作品の関係性を問い直すポゴレリッチだけに、それは常に新たなレアリゼーションとなる。
1/25@君津市民文化ホール
https://www.kimibun.jp/event/5235/
1/26@所沢市民文化センターミューズ・アークホール
https://www.muse-tokorozawa.or.jp/event/detail/20250126/
1/29@サントリーホール
https://www.kajimotomusic.com/concerts/2025-ivo-pogorelich/
♩1/24〜27 <オペラへの招待>クルト・ヴァイル 作曲 『三文オペラ』全3幕(日本語上演・日本語字幕付)
ブレヒト戯曲、ヴァイル作曲『三文オペラ』の日本語上演(日本語字幕)。19 世紀末のロンドン、社会の暗闇に生きる人々の姿を歌と芝居で描き上げる。昨年逝去の栗山演出を奥野浩子が蘇演、びわ湖ホール声楽アンサンブルをキャストにその実力を発揮。指揮:園田隆一郎、オーケストラはザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団。通常とは異なる編成でバンジョー、ハワイアンギター、バンドネオン、サクソフォンなどが加わる。ピアノ:寺嶋陸也。
1/24~27@びわ湖ホール
https://www.biwako-hall.or.jp/performance/die_dreigroschenoper2024
♩1/26 清水和音×松田理奈×向山佳絵子〜偉大な芸術家の思い出に
デビューから40年のもはや巨匠pf.清水和音、揺るぎなき実力派vn.松田理奈、風格漂うヴェテランvc.向山佳絵子の名手3人が16年ぶりに再結集のステージ。シューベルト『ピアノ三重奏曲第1番』、チャイコフスキー『偉大な芸術家の思い出に』で若手の台頭著しい室内楽にあって、これぞ日本のトリオ!と気を吐いてくれるに違いない。
1/26@浜離宮朝日ホール
https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/event/2025/01/event2840.html
♩1/29 アフタヌーン・コンサート・シリーズ2024-2025 小林沙羅&大西宇宙 デュオ・リサイタル
人気の二人の歌手、小林沙羅と大西宇宙の共演、「コミックオペラ「電話」~どうなる!?僕のプロポーズ~」と題して、メノッティのオペラを取り上げる。メノッティの作曲した当時の電話の役割、今ではリアルタイムでやりとりするラインのような通信アプリになるのだろうか。楽しいこのオペラを演技のうまい二人がどう見せ、聴かせてくれるか、楽しみにしたい。
1/29@東京オペラシティ コンサートホール
https://www.japanarts.co.jp/concert/p2085/
田中翔一郎、波立裕矢、佐原洸、中嶋達郎という若手作曲家を制作陣としてこのたび立ち上げられた「プラットフォーム」の第0回演奏会はピアノに田中、ヴァイオリンに石上真由子、ヴァイオリン・ヴィオラに對馬佳祐、チェロに竹本聖子を迎え、29歳で夭折したクリストフ・ベルトランや波立裕矢の作品などを取り上げる。「現代音楽界を巻き込むムーブメント」(チラシより)の始まりに立ち会いたい。
1/29@ティアラこうとう小ホール
https://lp.p.pia.jp/event/classic/376375/index.html
♩1/30 「30年の時の深み」細川俊夫生誕70年記念コンサート
作曲家細川俊夫の生誕70年を記念すると同時に、彼のサクソフォンのための作品を集めたディスク「明暗──サクソフォン作品集」(KAIROS)のリリースを記念して開催される演奏会。この作品集でサクソフォンを奏でる大石将紀を中心に、笙奏者の宮田まゆみ、ハープ奏者の吉野直子をはじめ、細川とともに歩んできた奏者が、1990年代初頭から現在に至る細川の作曲活動をたどる。彼の音楽が武満徹、ルチアーノ・ベリオのそれとも照らし合わされる点も興味深い。細川の音楽の理解者による作品解釈が聴ける点でも注目される。
1/30 @ゲーテ・インスティトゥート東京ホール
https://www.goethe.de/ins/jp/ja/ver.cfm?event_id=26210281