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撮っておきの音楽家たち|サシコ・ガブリロフ|林喜代種

サシコ・ガブリロフ(ヴァイオリン奏者・音楽教育家)
    
2017年8月17日~30日 草津音楽アカデミー
photos & text by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)

今年10月に88歳=米寿になるヴァイオリン奏者のサシコ・ガブリロフが2014年に続き、第38回草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァル(略称・草津音楽アカデミー)にマスタークラス講師及び演奏者として招待された。
8月まだ87歳だったが、いたって元気かつユーモアに溢れ快活である。マスタークラスのレッスンは明るい雰囲気に満ちていた。移動の車の中でも気軽に学生のアルバイトドライバー相手に冗談を飛ばしていた。その元気の素はどこから来るのだろうか。8月19日はガブリロフのヴァイオリン・リサイタルの日であった。演奏曲目は遠山慶子pfを迎えてのモーツァルトとベートーヴェンの「ヴァイオリン・ソナタ」でデュオの醍醐味を奏し聴衆を魅了した。ソロはブーレーズの「アンテ―ム」、尹伊桑の「大王の主題」の2曲。N.ハイダーのピアノ3重奏曲「ポルカ・ネラ」、ロッシーニの「弦楽のためのソナタ」ではヴァイオリンⅠ・Ⅱ、チェロ、コントラバスの4重奏というめずらしい編成、シューベルトの「ロンド イ長調」ではパノハ弦楽四重奏団との共演。ガブリロフは全7曲出ずっぱりで演奏。リハーサル、ゲネプロ、本番を全力ですべての曲を弾きまくる。このパワーフルなエネルギーはどこから出てくるのかと、周りの人を驚かせた。全曲の演奏時間は85分に及ぶ。
マスタークラスのレッスンでも受講生のヴァイオリンを手に演奏の手本を見せる。常に明るく楽しいレッスンであるが、何度もやり直し求める厳しさもある。草津アカデミーのガブリロフのマスタークラスからは庄司紗矢香が出ており、小学生時代に受講している。今回演奏者として参加共演したベルリン在住の滝千春も10歳の時に受講している。
ガブリロフは1929年10月にライプツィヒに生まれる。父より最初のヴァイオリンの手ほどきを受ける。1959年パガニーニ国際ヴァイオリン・コンクール第2位。18歳でベルリン・フィルのコンサート・マスターに就任し注目される。ドレスデン・フィル、ベルリン放送響、フランクフルト歌劇場管、ハンブルク響のコンサート・マスターを歴任。
ショルティ、ブーレーズ、インバル、サロネン、ケント・ナガノなど世界的指揮者との共演多数。室内楽奏者としても成功。リゲティ、ブーレーズ、リーム、尹伊桑、シュニトケなどの現代曲にも積極的に取り組んでいる。
1992年G.リゲティがガブリロフに捧げた「ヴァイオリン協奏曲」をケルンで初演、大成功。以後100回以上世界で演奏する。ケルン音楽大学、ベルリン芸術大学などの教授を務める。日本人の教え子も多数いる。録音も数多い。

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