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オペラシアターこんにゃく座公演『こんにゃく座 谷川俊太郎を歌う』コンサート|瀬戸井厚子

オペラシアターこんにゃく座公演
『こんにゃく座 谷川俊太郎を歌う』コンサート
Opera Theatre Konnyakuza “To Sing Tanikawa Shuntaro” Concert
2026年3月18日
小金井 宮地楽器ホール 大ホール
2026/3/18 Koganei Miyajigakki Hall Main Haii
Reviewed by 瀬戸井厚子(Atsuko Setoi): Guest

〈スタッフ〉
企画・構成・音楽監督……萩京子
演出……加藤直
照明……増子顕一
舞台監督……八木清市
宣伝美術……小田善久

〈出演〉
オペラシアターこんにゃく座
大石哲史、梅村博美、相原智枝、岡原真弓、青木美佐子、佐藤敏之、富山直人、花島春枝、髙野うるお、石窪朋、鈴木裕加、豊島理恵、彦坂仁美、太田まり、島田大翼、西田玲子、北野雄一郎、沢井栄次、沖まどか、熊谷みさと、齊藤路都、壹岐隆邦、金村慎太郎、川中裕子、小田藍乃、小林ゆず子、鈴木あかね、高岡由季、冬木理森、泉篤史、吉田進也、入江茉奈、中村響、松田祐慈郎、白石温、川畑紀史
ピアノ:服部真理子、入川舜、萩京子

●第一部
1 わたしがたねを 作曲:林光 うた/全員 ピアノ/萩京子
2 ひとくいどじんのサムサム 作曲:林光 うた/佐藤敏之 ピアノ/萩京子
3 こもりうた 作曲:林光 うた/①熊谷みさと、②石窪朋、③川中裕子 ピアノ/萩京子
4 うんこ 作曲:萩京子 うた/入江茉奈、中村響、松田祐慈郎、白石温、川畑紀史 ピアノ/萩京子
5 ひみつ 作曲:萩京子 うた/沖まどか、高岡由季、冬木理森、泉篤史、吉田進也 ピアノ/入川舜 鍵盤ハーモニカ/大石哲史、沢井栄次
6 ゆっくりゆきちゃん 作曲:林光 うた/岡原真弓 ピアノ/入川舜
・詩朗読:「六十二のソネット」31  鈴木裕加、豊島理恵、彦坂仁美、泉篤史、松田祐慈郎
7 子供と線路 作曲:林光 うた/齊藤路都、小田藍乃 フルート/熊谷みさと
8 四つの夕暮の歌 作曲:林光 うた/Ⅰ彦坂仁美、Ⅱ沢井栄次、Ⅲ大石哲史、Ⅳ青木美佐子 ピアノ/服部真理子
9 きもちのふかみに 作曲:萩京子 うた/髙野うるお、島田大翼、西田玲子、小林ゆず子 ピアノ/入川舜
10 はなのの…ことばあそびうたより 作曲:萩京子 うた/花島春枝、北野雄一郎、入江茉奈、中村響  アルトリコーダー/石窪朋  カホン/鈴木あかね
11 すき 作曲:萩京子 うた/青木美佐子、佐藤敏之、島田大翼、北野雄一郎、沖まどか、鈴木あかね、高岡由季、泉篤史、
12 生きる(混声合唱) 作曲:萩京子 うた/全員 ピアノ/入川舜
13 ほうすけのひよこ 作曲:林光 うた/佐藤敏之、花島春枝、髙野うるお、鈴木裕加、豊島理恵、壹岐隆邦
ピアノ/服部真理子

●第二部
1 りんごへの固執【初演】 作曲:吉川和夫 うた/花島春枝、川中裕子 ピアノ/服部真理子
2 遠くから見ると【初演】 作曲:寺嶋陸也 うた/全員 ピアノ/入川舜
3 大きなクリスマスツリーが立った【初演】 作曲:萩京子 うた/髙野うるお ピアノ/萩京子
4 生まれたよぼく 作曲:萩京子 うた/全員 ピアノ/入川舜
5 走る(男声合唱) 作曲:萩京子 うた/男声 ピアノ/入川舜
6 くらやみ(男声合唱) 作曲:萩京子 うた/男声 ピアノ/入川舜
・詩朗読:二十億光年の孤独 石窪朋、島田大翼、西田玲子
7 空に小鳥がいなくなった日(女声合唱) 作曲:林光 うた/女声 ピアノ/入川舜
8 わたしが歌う理由 作曲:林光 うた/梅村博美 ピアノ/服部真理子
9 ある墓碑銘 作曲:萩京子 うた/大石哲史 ピアノ/服部真理子
10 地球へのピクニック 作曲:萩京子 うた/金村慎太郎、鈴木あかね ピアノ/服部真理子
11 しぬまえにおじいさんのいったこと(混声合唱) 作曲:萩京子 うた/全員 ピアノ/服部真理子
12 夫婦 作曲:林光 うた/相原智枝、富山直人 ピアノ/服部真理子
13 歩くうた 作曲:林光 うた/全員 ピアノ/服部真理子

 

薄暗いステージに、あ、歌役者さんたち出てきた、と胸わくわく。「わたしがたねを」と最初の曲名が告げられると同時に照明が入り、すぐに音楽が始まる。ゆるい楕円形をなしつつその内外にもぱらぱらと、歌役者さんたちは立っていたり座っていたり、思い思いの体勢で歌い、曲中で位置取りを変えたりもする。全員で歌う曲でも総唱になる部分はむしろ少なく、数人ずつ歌う楽句を歌い継いでいくことが多いのだが、その受け渡しの息の合い方たるや絶妙そのもので、聴く者に安息感を与えてくれるほどだ。

素直に明るい、開会にふさわしいその第1曲を、筆者はこれまで聴いたことがなく、小学校の校歌だとは思いもつかなかった。「さいわいしょうのわたしたち」と歌っているけれど、「幸いしょう」のショウってどの漢字かな、と考え、幸せを(良い意味で)感じずにはいられない「幸い症」という超独創的な造語だろう、と思ってしまった(多幸症という病名があることは後で思い出した)。幸小(学校)だったとは。〔立川市立です〕

閑話休題。1曲終わってピアノ椅子から立ってきた萩京子音楽監督のご挨拶。終演まで要所要所での彼女の司会が、聴衆にとって良き道案内となった。歌う前に曲名を告げるか告げないかはほぼ半々で、その判断は的確だ。4曲目の「うんこ」など実にキマったタイトル提示で、さすが歌「役者」ぞろいのこんにゃく座、と思わせる。歌いながら楽器や小道具や椅子まで運ぶのびのびと自在な動きを見つつ聴いているとすっかり体がほぐれる。そうして強張りの取れた耳から、清澄な声音の詩行がしみじみと胸内に届いて畳まれてゆく。11曲目の「すき」では、いろんなものが「すき」でいられる自分を確認できたような幸福感がひたひた。

休憩後の第2部冒頭は新作初演3曲という力の入ったプログラム。しっかり受け止めさせていただいたつもりだが、わけても寺嶋陸也氏が作曲する詩として「遠くから見ると」を選択されたことが嬉しく、地球が天命を全うするさまをお陰様でまた思い描くことができた。続く多様な10曲は各々の魅力、訴求力、喚興力が押し寄せてきて、こちらはただたっぷりと満ち足りるのみ。終曲は1980年の作曲以来こんにゃく座が歌い続けてきた「歩くうた」〔実は筆者も昨年所属する合唱団のコンサートで歌いました〕。これにて元気にコンサートは終演!

至福の時を恵まれた感謝の念とともに、このありがたい体験のこの得も言われぬ手ごたえは何なのか、との問いが頭をもたげる。時空の中で誰かが表出・呈示したものを受け取ること、見・聴くこと。今回のこんにゃく座公演の視聴で筆者は、形のある時間を手にすることができたような気がした。俊太郎さん(筆者にとっても「特別なひと」なのでこう呼ばせていただく)の詩を長い年月かなり熱心に読んできたつもりだけれど、時間が形をとって起ちあがってくるという経験はなかった。小舞台で朗読した時でさえも。そこでふっと気づく。文字だけ、音読の声だけの、それが限界ではなかったか。音楽と一体となった作品が創られ上演される、そうして初めて与えられ、受け取ることができるものがあるのだと。

(2026/4/15)

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瀬戸井厚子(Atsuko Setoi)
フリーランスの編集者として人文社会系図書の編集に携わる。
演劇集団プラチナネクストに所属して舞台活動も継続中。