東京二期会コンチェルタンテ・シリーズ プッチーニ:《エドガール》|藤堂清
《二期会創立70周年記念公演》
東京二期会コンチェルタンテ・シリーズ
ジャコモ・プッチーニ:《エドガール》〈新制作/セミ・ステージ形式上演〉
オペラ全3幕 日本語字幕付き原語(イタリア語)上演
Presented by Tokyo Nikikai Opera Foundation & Bunkamura
GIACOMO PUCCINI:EDGAR
Opera in three acts (Semi stage style)
Sung in the original language (Italian) with Japanese supertitles
2022年4月24日 Bunkamuraオーチャードホール
2022/4/24 Bunkamura Ochard Hall
Reviewed by 藤堂 清(Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 林喜代種 (Kiyotane Hayashi)(撮影:22日、ゲネプロ)
<スタッフ> →foreign language
指揮:アンドレア・バッティストーニ
舞台構成:飯塚励生
映像:栗山聡之
照明:八木麻紀
合唱指揮:粂原裕介
舞台監督:幸泉浩司
公演監督:大野徹也
公演監督補:佐々木典子
<キャスト>
エドガール:樋口達哉
グァルティエーロ:清水宏樹
フランク:杉浦隆大
フィデーリア:大山亜紀子
ティグラーナ:成田伊美
合唱:二期会合唱団
児童合唱:TOKYO FM 少年合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
《エドガール》はプッチーニの第2作目のオペラ、1889年にミラノで初演されたが評価は高くなく、彼は改訂を重ね1905年に決定稿を出版した。全4幕の初演版は短縮され3幕版となった。この間《マノン・レスコー》《ラ・ボエーム》《トスカ》《蝶々夫人》を作曲しており、これらの充実した時期の音楽の萌芽を《エドガール》のあちこちで聴くことができる。第3幕冒頭におかれた〈レクィエム〉はプッチーニの葬儀の時に使われた名曲。音楽面では魅力が多い。
だが、上演がほとんどないのは、支離滅裂な台本のせい。なかでもエドガールの振る舞いの突拍子のなさが目立つ。
第1幕の舞台はフランドル地方の村、清純な娘フィデーリアがエドガールと親しげに話しているところに、彼を愛しているティグラーナが登場し言い寄るが冷たくあしらわれる。一人残った彼女に、フランクが愛を訴えるが無視される。ティグラーナは祈っている農夫たちを挑発するので、彼らは彼女を罵る。彼女が皆から虐待されているのをみたエドガールはそれを怒り、自宅に火をつけティグラーナを連れて逃げようとする。それを阻もうとしたフランクを傷つけ、村を離れる。
第2幕はエドガールとティグラーナが愛欲生活をおくる屋敷。彼はその生活に飽き、フィデーリアを懐かしむ。ティグラーナは彼の愛を失うことを恐れる。そこへフランク率いる兵士の一団があらわれる。二人は和解し、エドガールは彼らに加わり祖国のために戦うべく出発する。
第3幕はクルトレ(フランドル地方)の町の近くの要塞。戦死したエドガールの葬儀が準備され、フィデーリアらも参列。フランクがエドガールの功績を讃えるのに対し、ともにあらわれた修道士(実はエドガール)は彼の過去の罪を暴き立てる。それを聞き、人々がエドガールの亡骸を教会の墓地に受け入れないと騒ぎ立てるのに対し、フィデーリアは彼をかばう。皆がおさまり、教会に入ったあとからティグラーナが駆け付けエドガールの死を嘆く。フランクと修道士は彼女を宝石で誘惑し、エドガールが金で祖国を裏切ったという嘘の証言をさせる。皆がふたたび亡骸を遺棄しようとするが、棺はからで、修道士は衣を脱ぎエドガールは生きているといい、フィデーリアと一緒に彼を信じなかった人々から立ち去ろうとする。そのときティグラーナがフィデーリアを刺し殺し幕となる。
最初に述べたように音楽は充実している。この日の演奏はそれを引き出すのに十分な熱気と完成度があった。
タイトルロールのエドガールを歌った樋口は、第1幕前半のフィデーリアとのしっとりとした雰囲気と、後半の激昂しての場面を描き分けた。第2幕のアリアもしっかりと歌い上げ、第3幕でもほとんど出ずっぱり、舞台の中核をみごとに務めた。フィデーリアの大山は、第1幕の登場の歌、二重唱の後、第3幕で二曲のアリアがあり、それらが聴かせどころ。受け身なところがみえる役だが、第3幕での丁寧な歌はまずまず。ティグラーナの成田、役どころはフィデーリアとは対照的に強い性格である。第1幕で農夫たちと対峙する場面での歌、きれいに整った歌ではあるのだが、もう一つ踏み込んで悪さを表現してほしかった。フランクの杉浦、与えられた第1幕のアリアで聴衆を惹きつけた。
バッティストーニの指揮のもと東京フィルハーモニー交響楽団が、雄弁に音楽を奏で、ソリストの歌を支えていた。バッティストーニの煽るような指揮がオーケストラの力感あふれる音を作り、熱量の高いものとなった。複数のソリストとのアンサンブルなど出番が多い合唱は、オーケストラの後ろ、紗幕のうらに整列して歌っていた(コロナ対策か?)。群衆心理の危うさがもう少し表に出てほしいと思わないでもないが、この時点でのプッチーニの限界だっただろうか。
(2022/5/15)
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<STAFF>
Conductor: Andrea BATTISTONI
Stage Planner: Leo IIZUKA
Video Designer: Satoshi KURIYAMA
Lighting Designer: Maki YAGI
Chorus Master: Yusuke KUMEHARA
Stage Manager: Hiroshi KOIZUMI
Production Director: Tetsuya ONO
Associate Production Director: Noriko SASAKI
<CAST>
Edgar: Tatsuya HIGUCHI
Gualtiero: Hiroki SHIMIZU
Frank: Takahiro SUGIURA
Fidelia: Akiko OYAMA
Tigrana: Yoshimi NARITA
Chorus: Nikikai Chorus Group
Children’s chorus : TOKYO FM Boys Choir
Orchestra: Tokyo Philharmonic Orchestra