追悼 藤堂清さん|大河内文恵
追悼 藤堂清さん
Text by 大河内文恵 (Fumie Okouchi)
メルキュール・デザールの創立メンバーの一人、藤堂清さんが亡くなられた。
私がメルキュール・デザールに書かせてもらうようになった2016年3月から、約10年に渡ってお世話になってきた。初期の頃、私にとって藤堂さんは、手の届かない遠い憧れの存在であり、かつ最大のライバルであった。当時のメルキュール・デザールは、現在ほどレビュー申請の制度がシステマティックではなく、書きたいものがあると丘山さんにメールするという形だった。メジャーでないオペラとか古楽とか、私が書きたいと思うような演奏会は、たいていすでに藤堂さんに決まっていて、あ~また先を越されてしまったと嘆く日々。藤堂さんよりも先に情報を得ようと、あれこれ探すうちに面白そうな演奏会を見つける技を磨いていった。熾烈な枠取り合戦を繰り広げるなかでレビューアーとして育ててくれた、いわば恩人の一人である。
前者についてはいわずもがなであろう。これまでの膨大な経験に裏打ちされた客観性を持ち、冷静で過不足なく、しかも美しく格調高い文章で綴られる藤堂さんのレビューを読むと、自分の不出来を思い知らされる。経験と格調高さはともかく、冷静さと多少なりの客観性だけは私なりに真似してきたつもりである(できているかどうかはまた別のお話)。
途中から役員という立場に加えていただいたことで、藤堂さんの仕事ぶりを垣間見る機会が増えた。藤堂さんからのメールはいつも冷静で、余計なことは一切書かない。対面やオンラインでお話する場でもそれは変わらない。一方で、メルキュール・デザールの技術面を全面的に担うとともに、全部の原稿に目を通してくださっており、「ここ、これでよいですか?」とメッセージが来て救われたことは数知れず。細やかな気遣いの人だった。また、各自で原稿をアップするようになってからは、うまくいかないときに何度も助けてもらったのは私だけではないだろう。メルキュール・デザールの制度改革の話し合いをすると、最後は「まぁ、私ができる間は私がやりますから」という藤堂さんの言葉にみんな甘えてしまっていた。その時には、藤堂さんがいなくなる日が来るなんて想像もできなかった。それ以上に、藤堂さんの新しい記事を読めなくなる日が来るなんて、考えてもみなかった。早過ぎます!藤堂さん。
(2026/5/15)
