Menu

私の10年|過去・現在・未来|大河内文恵

過去・現在・未来

text by 大河内文恵 (Fumie Okouchi)

子育て経験者あるあるだと思うのだが、自分の10年前を思い出そうとしてもなかなか難しいが、子どもが

2014年万博前年のミラノ

10年前どうだったっけ?と考えるとすぐに思い出せる。10年前、上の子は高3で下の子は中学生だった。その1年前、それまで細々と仕事をしていたものの、ほぼワンオペ(単身赴任2回含む)状態だったため、とにかく育児優先の日々を送っていたが、その頃、上の子の同級生のママたちが、「この子たちが高校卒業したら私たち暇になるよね。それに向けて今から動き出したほうがいいんじゃない?」とにわかにざわざわし始めた。高3になったら難しいだろうから、動くなら今だ!とばかり、私は超短期留学に行くことにした。海外に行くのは10年以上ぶりで、しかも単独海外は初めてだったにもかかわらず、勢いで決めて10日ほどイタリアに行ったのが8月。

ヴェネツィアの路地

そんなつもりもなかったのに、そこから人生が急に動き始め、翌年度の終わりには縁あってメルキュール・デザールの執筆陣に加えていただくことになった。それまで、気になる演奏会に時々行くことはあっても、毎月恒常的に通うようになったのは当時としては大きな変化だった。そこから、非常勤で教えるようになったり、小さな研究者グループの代表になったり、止まっていた時間がみるみる動き出した。夢中で過ごしてきたこの10年、演奏会に通い、どのコンサートを書くか考えるのは、もはや日常になった。
この「私の10年」の企画が持ち上がり、あれこれ考えているうちにふと、これから10年ってどうなるんだろう?と疑問が浮かんだ。吹けば飛ぶような小さな仕事をこれからも続けていくのだろうことは想像に難くない。個人的なことだが、10年たつと自分の母親の亡くなった年齢を超える。もし私の遺伝子のカラータイマーが正確に作動したとしたら、残りは10年あるかどうか。これからの10年をどうやって過ごしていくのか、真剣に考えよう。

(2025/10/15)