F.カヴァッリ作曲 オペラ《ラ・カリスト》 |藤堂清
アントネッロ【オペラ・フレスカ8】
フランチェスコ・カヴァッリ作曲 オペラ《ラ・カリスト》
Francesco Cavalli: La Calisto
2023年2月4日 川口総合文化センター・リリア 音楽ホール
2023/2/4 Kawaguchi LILIA Music Hall
Reviewed by 藤堂 清 (Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 林喜代種 (Kiyotane Hayashi)
スタッフ: →foreign language
指揮:濱田芳通(コルネット/リコーダー)
演出:中村敬一
キャスト:
ジョーヴェ:坂下忠弘
カリスト/永遠:中山美紀
メルクリオ:中嶋克彦
ディアナ/運命/天の声Ⅰ:中川詩歩
エンディミオーネ:新田壮人
ジュノーネ/天の声Ⅱ:野間愛
パーネ/自然/天の声Ⅲ:田尻健
リンフェア:眞弓創一
シルヴァーノ/天の声Ⅳ:松井永太郎
サティリーノ/フーリアⅡ(影歌):彌勒忠史
フーリアⅠ(影歌):本多唯那
熊:東原佑弥
管弦楽:アントネッロ
バロック・ヴァイオリン:天野寿彦・遠藤結子
ヴィオラ・ダ・ガンバ:山下瞬
バロック・チェロ:武澤秀平
ヴィオローネ:布施砂丘彦
サクバット:南絋平・野村美樹
コルネット:細川大介
キタローネ/バロック・ギター:高本一郎
バロック・ハープ: 伊藤美恵
チェンバロ:曽根田駿
オルガン/レガール:上羽剛史
パーカッション:和田啓
1651年にヴェネツィアで初演されたオペラ《カリスト》、370年を経て遠く離れた日本で輝きをもって上演され、これほどの喜びを与えてくれるとは。
主人公のカリストは、狩と貞潔と月の女神ディアナを信奉するニンファ、地上に降り立った神々の王ジョーヴェに騙され誘惑される。それに嫉妬した結婚の女神ジュノーネによって、彼女は熊に変えられてしまう。ジョーヴェはカリストに、いずれ星となり神々と同じく天上で不死となると告げる。以上が幹となる部分だが、ジョーヴェは騙す際にディアナに変身して思いを遂げる。そのため、カリストを巡る本物のディアナとの交錯、さらにディアナに恋するエンディミオーネ、パーネを巻き込んでのごたごたといった枝葉の部分が加わる。
プロローグの3女神のやり取りからカヴァッリのレチタール・カンタンドの魅力が全開。それぞれの言葉がクリアで受け渡しも自然。なによりオーケストラや通奏低音の弾みのある音が聴き手の体をゆさぶる。続く第1幕から主役クラスが登場、魅力的な歌唱を聴かせてくれる。ジョーヴェの坂下のノーブルな声とメルクリオの中嶋の芸達者な歌、どちらも役にはまっている。中山の軽めだが自然に伸びる声はカリストにピッタリ、今年もタイトルロールとして存在感を示した。アントネッロのオペラで常に主役を歌ってきている。次に登場するのは、ディアナの中川とリンフェアの眞弓、中川の芯のある声と眞弓のホワッとした響きの組み合わせが面白い。パーネ、シルヴァーノ、サティリーノの3人は狂言回しといった役割だが、歌唱でも演技でも彌勒の存在が光る。最後に登場したエンディミオーネの新田はしっかりしたカウンターテナー、今後が期待される。第2幕第2場までを前半とし、そこで休憩をはさんだ。
後半は、サティリーノ等3人とリンフェアによる日本語の幕間劇から始まる。客席を巻き込んで声を合わせるなど、なかなか楽しめるもの。ジュノーネがジョーヴェの浮気を疑い地上へ降りてくる。彼女はカリストが相手と見抜き、ジョーヴェ(ディアナ)を待つ彼女を熊に変えてしまう。野間の強い声が活きる。
歌手の歌は高いレベルでそろっていた。だがこの公演の成功は指揮の濱田によるところが大きい。
まず、事前の準備としての楽譜の整備。残されているカヴァッリ自身による手稿譜に欠落している部分を補い、場合によっては他の曲を挿入するなどしているとのこと。それが違和感なく演奏されたことに感心する。また彼は指揮しながらコルネットやリコーダーを吹き、オーケストラに色彩を加えた。そこにはかなり即興的な要素もあったのではないだろうか。
もちろん、オーケストラも粒ぞろい。ヴァイオリンの天野、パーカッションの和田など挙げればきりがない。それぞれのパートの自発性あふれる音楽が、全体としても楽しめるものとなったし、歌手とのバランスも絶妙であった。
演出面では読み替えというようなことはあまりせず、ストーリーを素直に舞台にしていた。使えるスペースの狭さもあり、演技も最小限の動きであった。作品の理解には、好ましいものであったように思う。
3時間という上演時間の間、常にウキウキ、ワクワクさせてくれたことに感謝したい。
関連評:アントネッロ<オペラ・フレスカ 8> オペラ ラ・カリスト|大河内文恵
(2023/3/15)
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Conductor: Yoshimichi Hamada
Director: Keiichi Nakamura
GIOVE: Tadahiro Sakashita
CALISTO/ L’ETERNITÀ: Miki Nakayama
MERCURIO: Katsuhiko Nakashima
DIANA/ IL DESTINO/ MENTI CELESTI I: Shiho Nakagawa
ENDIMIONE: Masato Nitta
GIUNONE/ MENTI CELESTI II: Ai Noma
PANE/ LA NATURA/ MENTI CELESTI III: Takeshi Tajiri
LINFEA:Soichi Mayumi
SILVANO/ MENTI CELESTI IV: Eitaro Matsui
IL SATIRINO/ LE FURIE II(canto d’ombra): Tadashi Miroku
LE FURIE I(canto d’ombra): Yuina Honda
Orchestra: Anthonello