撮っておきの音楽家たち |飯野明日香(フォルテピアノ)|林喜代種
飯野明日香(フォルテピアノ)
Aska Iino (Fortepiano)
2023年5月20日 サントリーホール・ブルーローズ
Photos & Text by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)
モダンと古楽のピアノ演奏で活躍する飯野明日香のリサイタル。サントリーホール所有の19世紀のエラール製フォルテピアノで鷹羽弘晃、ベートーヴェン、リスト、糀場富美子、西村朗、ラヴェル、一柳慧の7人の作曲家の作品を演奏。青島広志のナビゲートで「エラールの旅」を展開。
このうちの西村朗作曲の「極楽鳥たちへの3つのエチュード2023」は飯野明日香の委嘱作品で世界初演された。3つのエチュードから成り全体で14分前後の印象的な曲。そしてコンサートの最後は2022年10月に亡くなられた一柳慧の「左手のためのファンタジア」を演奏。この曲は2018年にピアニスト舘野泉の委嘱で初演された。飯野明日香と一柳慧とは、マリンバとピアノのための曲「パガニーニ・パーソナル」を2台ピアノ版に一柳慧が編曲して、CD「一柳慧ピアノ作品集」の中で共演している。(カメラータ・トウキョウCMCD-28269 「Toshi Ichiyanagi Piano Works Asuka Iino」)
飯野明日香 は東京芸術大学付属高等学校、東京芸術大学ピアノ科を卒業。パリ国立高等音楽院ピアノ科、フォルテピアノ科卒業。ベルギー政府給費留学生としてブリュッセル王立音楽院ピアノ科マスターコース修了。多彩な演奏活動を展開し、2010年第28回中島健蔵音楽賞を受賞する。2020年日本の歌によるCD「和の歌」(全曲委嘱作WANOKA)(カメラータトウキョウCMCD-28373)をリリースする。一柳慧はCDで共演した彼女を次のように評している。長い引用になるが、「飯野明日香さんといえば、近現代フランスのピアノ音楽の演奏に秀でたピアニストとして高い評価を受けている。私も数年前まで、彼女のリサイタルで聴いた作品の多くはジョリヴェやメシアンやブーレーズなど、フランスの現代を代表する作曲家の作品を鮮やかに格調高い表現力で演奏するピアニストというイメージが強かった。中略、最近急速にレパートリーを拡げてきている。これまでと異なる表現や技術を要求される音楽に対しても積極的に取り組まれている・・・」
と述べている。一段と表現に深みが加わったように感じた。
(2023/6/15)