撮っておきの音楽家たち|實川 風|林喜代種
實川 風(ピアニスト)
Kaoru Jitsukawa, Pianist
2022年2月23日 武蔵野市民文化会館小ホール
Photos & Text by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)
数々のコンクールで好成績を残してきた實川風が、ベートーヴェンの「ワルトシュタイン」、ショパンの「葬送」などのプログラムのリサイタルで、冷静な中に情熱的な演奏で聴衆を惹きつけた。
實川風は1989年千葉県旭市生まれ。3歳でピアノを始める。家では父親がベートーヴェンやマーラーのシンフォニーが好きで何時も音楽が家にあった。小中学生の頃は野球が好きだったが、結局ピアノを選ぶことになったという。東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校・東京藝術大学を首席で卒業し、東京藝術大学大学院修士課程を修了。山田千代子、御木本澄子、多美智子、江口玲に師事。グラーツ国立音楽大学ポストグラデュエート課程を修了。マルクス・シルマーに学ぶ。
またポーランド国立クラクフ室内管弦楽団、東京フィル、東京交響楽団、東京シティ・フィル、日本フィル、新日本フィル、大阪交響楽団、名古屋フィルなどとも共演、加えて上海音楽祭、ソウル国際音楽祭、オーストリアのアルソノ―レ音楽祭、またフランスのノアン・ショパンナイトに招かれヨーロッパ・デビューを飾る。2015年パリのシャンゼリゼ劇場で行われた、ロン・ティボー・クレスパン国際コンクールにて第3位(1位なし)。最優秀リサイタル賞、最優秀新曲演奏賞を受賞。2016年イタリアで行なわれたカラーリョ国際ピアノ・コンクールで第1位及び聴衆賞を受賞。
2015年パリのロン・ティボー・クレスパン国際コンクールではホームステイを希望しなかったので留学している友人のピアノを借りて練習をしたという。送迎の車もなし。スケジュールは自分できちんと把握していないと予定を逃してしまうなど自立心を要求された。すべて自分で行なわなければならないということは自由に動けるということなので、初めてのパリを満喫したという。
影響を受けた音楽家は師の多美智子、江口玲。またダン・タイソンのベートーヴェンのワルトシュタインに魅了される。この曲は高校1年から弾いているので得意だという。ショパンのマズルカをこよなく愛しているとのこと。「30年後にはマズルカの全曲を演奏したい」といっている。
リサイタルやコンチェルトだけでなく、ヴァイオリンなどの他の楽器とのデュオや室内楽など積極的に取り組んでいる。期待のピアニストである。
(2022/3/15)