撮っておきの音楽家たち|辻 彩奈|林喜代種
辻 彩奈(ヴァイオリニスト)
Ayana Tsuji, Violinist
2019年9月14日 ノット指揮スイス・ロマンド管弦楽団 東京芸術劇場
2021年10月30日 無伴奏リサイタル 武蔵野市民文化会館
Photos & Text by 林喜代種(Kiyotene Hayashi)
2021年10月武蔵野市民文化会館でのリサイタルは無伴奏公演である。
今回の無伴奏ヴァイオリン・リサイタルは3年前の21歳の時のJ.S.バッハの無伴奏ヴァイオリン曲の全曲演奏に続くリサイタルである。前回のバッハでは直筆譜を見て研究することにより作品をより深く理解していったという。今回はその経験を生かして、J.S.バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番」、プロコフィエフの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」、権代敦彦の「『Post Festum』ソロ・ヴァイオリンのための」(この曲は辻彩奈の委嘱作品である)。そして最後はJ.S.バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番」。入念に各作品に取り組む彼女の熱意と音楽がしっかりと伝わってくる演奏だった。
1997年岐阜県生まれ。3歳よりスズキメソードにてヴァイオリンを始める。小林健次、小栗まち絵、原田幸一郎、そしてパリでレジス・パスキエに師事。11歳で名古屋フィルと共演後、国内外の多くのオーケストラと共演している。モントリオール交響楽団、都響、東響、日本フィル、新日本フィル、大阪フィル、N響等と共演。12歳で室内楽の初リサイタルを行なった。2013年日本音楽コンクール第2位に入賞。2016年18歳でモントリオール国際音楽コンクールで第1位になる。同時にバッハ賞、パガニーニ賞、カナダ人作品賞、ソナタ賞、セミファイナルベストリサイタル賞の5つの特別賞を受賞する。2017年岐阜県芸術文化奨励、2018年第28回出光音楽賞を受賞。
2019年J.ノット指揮スイス・ロマンド管弦楽団とのツアーで表現力の豊かな演奏が高い評価を得た。録音ではシャルル・オーギュスト・ド・ベリオの「ヴァイオリン協奏曲集」があり冴えた技巧で注目される。好きな音楽家はモーツァルトだという。今最も目が離せない若き俊英である。2月、3月と演奏会が控えている。
(2022/2/15)