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2018年 第4回年間企画賞

Mercure des Artsは執筆陣による選考の結果、2018年(2017年11月1日〜2018年10月31日までの公演)の年間企画賞1〜3位を選出、ここに発表いたします。今回は1、2位がそれぞれ多くの票を集め、文句なしの決定となりました。第3位は、1位に推された公演で票は少なくとも企画の意義・意味を評価ということで、選出されました。

【1位】
新国立劇場 開場20周年記念公演
細川俊夫/サシャ・ヴァルツ 『松風』(日本初演)
2018年2月16、17、18日 新国立劇場

【2位】
読響創立55周年&メシアン没後25周年記念
メシアン:歌劇『アッシジの聖フランチェスコ』(演奏会形式/全3幕/仏語上演、日本語字幕付/全曲日本初演)
2017年11月19日、26日 サントリーホール
2017年11月23日 びわ湖ホール 大ホール

【3位】
うたひかたらひ春夏秋冬 平野一郎×吉川真澄
CD《四季の四部作》発売記念公演
2018年4月28日 杉江能楽堂

◆選定にあたって
【1位】
新国立劇場での邦人オペラ作品上演で、初の大ホームランと言って良かろう。
邦人作曲家の最先端を走り続ける細川俊夫のオペラ『松風』の日本初演。能の手法の採用は細川に珍しいものではなく、西洋の日本趣味に迎合とみなす向きもあるが、そうした評言に一矢報いる「独自の音楽・独自のオペラ」の完成形がサシャ・ヴァルツとの協業で成し遂げられたことを喜びたい。
世界初演後、間をあけず、初演時のプロダクションでの上演も嬉しい。オペラと舞踊が不可分に結びついた高水準の「コレオグラフィック・オペラ」で、安易な異文化融合的ステージを完全打破、観客に深い感銘を与えたとして、最多数の票を獲得した。
同時代の優れたオペラを見る機会がより頻繁になることを今後も期待したい。
★参考レビュー:
http://mercuredesarts.com/nntt_20th-hosokawa_warz_matsukaze-okouchi/
http://mercuredesarts.com/nntt-hosokawa_waltz-matsukaze-tohdoh/

【2位】
カンブルラン&読響の集大成とも言える公演。メシアンの4時間20分に及ぶ超大作を、24回指揮のキャリアを持つカンブルランの統率で実現、全曲日本初演を東京で2公演、滋賀で1公演、いずれも素晴らしい演奏で圧倒した。カンブルラン&読響はもとより、この壮大な企画・上演に携わった全ての人々の信じ難い力量と献身に感謝を、との高い評価を得た。
宗教・信仰に関わりなく「メシアンの神秘」に聴衆を誘った音楽の力の前に、誰もが頭を垂れた貴重な歴史的舞台として後世に語り継がれることを確信する。
★参考レビュー
http://mercuredesarts.com/messiaen_saint_francois_assise-fujiwara/
http://mercuredesarts.com/messiaen-francois_assise-notohara/

 

 

【3位】
通常は非公開の杉江能楽堂を舞台に行われた公演。作者、演者、聴者、そして場所(とその歴史)の相互作用。さらにそれらと音楽との相互作用。これらが一期一会で生み出す緊張と弛緩に、一つの世界が生成されていくような稀有な体験を生ぜしめた。意図と偶発、人と自然、生者と死者のあわいにたゆたう一時、演奏の場、聴取体験のあり方について深く考えさせられる意義・意味深い企画として評価する。
★参考レビュー
http://mercuredesarts.com/utahikatahira_shiki-hirano_yoshikawa-notohara/

(2018/12/15)