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本誌の目指すもの

本誌の目指すもの2018—-未来へ、そして「断片」でなく「思惟」へ 

Mercure des Arts  編集長
丘山万里子 

【ダイナミックな響応】  

◆創造と享受・批評の新たな回路の構築   

ここ3年、創造と享受・批評の新たな回路の構築として具体的に提示してきたのは以下。 

  1. 関連する各記事・評に相互リンクを貼り、単発の記事でなく、一連の流れの中で読者が公演・作品を享受・評価できる形を提示。
    ◉ 《Back Stage》& レビュー
    ◉ 《五線紙のパンセ》& レビュー、記事《Pick Up》《CD》 
  2.  複数の視点による多様な価値観の提示
    ◉ 複数の地域
    2018年度年間企画賞2位となった「メシアン:アッシジの聖フランチェスコ」のように、首都圏と地方公演のレビューを同時に掲載、レビュー相互にリンクを貼り、それぞれの地域の享受の共通点や相違点を読みとることが可能。
    ◉ 複数の執筆者
    同一公演に複数の執筆者(現在最多3名)を立て、評価の多様性を提示。
    さまざまな価値観を同時に見渡せる。 
  3. ポリフォニックな執筆意識の生成
    上記2項により執筆者自身に過去との関連(歴史)、他者の視点(空間)が意識され、より広く深い視野での執筆を促す。 

 

【未来への2つの提言】 

◆《Back Stage》枠のテーマの拡大(広告ではない) 

すでに機能し始めている《Back Stage》枠のテーマを拡大活用する。
従来は制作サイドの自由選択による「一押し公演・企画」であったが、その内容を以下の3項目を含んだものとしたい。

  1. 若手・新人紹介 
  2. 青少年教育プログラム(聴衆の高齢化と若年層の開拓の問題) 
  3. アウトリーチ活動 

掲載後のフォロー(評価は寄稿記事とは関わりない)は、若手新人は従来形で、その他は模索しつつ、となる。
聴衆の高齢化が言われて久しいが、未来に向けた制作サイドの多様な活動を単発でなく持続した形で提示、社会の中での音楽の位置付けを批評行為の中でも考察してゆきたい。  

◆「断片」でなく「思惟」へ 

  1.  新たなレビュースタイルの試み
    複数公演・イベント他をひとまとめとした論評を導入。
    執筆者が複数公演もしくはイベントを一つにまとめて執筆し、共通項、相違などを考察、個評より広く深い論評を随時提示。
    ex) 藤倉大 オペラ『ソラリス』&『藤倉大 個展』&トークショー (2018/11/15)
    今後、演奏会にとどまらず、他ジャンルとの組み合わせも視野に入れ、展開予定。
    専門分野に引きこもらず、他ジャンル、文化との混淆に、複眼・総合的な視点を生成。 
  2.  評論枠の新設
    歯ごたえある「音楽評論」が激減している昨今、執筆者、読者ともに「思考する筋力」を要する論考を随時掲載予定。
    ex) 『ソラリス』あるいは欠陥を持った神への宗教詩篇 (2018/12/15) 
  3.  異分野の視点の導入
    「芸術」もまた世界の動向と連動しており、常に世界を俯瞰する視点を誌面に随時併置、自分たちの足元を意識してゆきたい。
    ex) ウイーンから見るヨーロッパ (2019/1/15) 

以上、今後はさらに「断片」ではなく「思惟」の姿を模索してゆきたいと考える。
参照:本誌カデンツァ「批評は いる(居る)」

(2019年1月)