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注目のコンサート|2018年12月

♩12/1、2 関西二期会《サルタン王の物語》

関西二期会が、リムスキー=コルサコフによるオペラ《サルタン王の物語》を新制作で上演する。間奏曲〈熊蜂の飛行〉が特に有名だが、オペラ全体が上演される機会はそれほど多くない。とはいえ、原作はロシアの文豪プーシキンが民話をもとに描いたお伽噺。日本語による上演となれば、幅広い世代で楽しめるに違いない。演出は菅尾友。新世代の中でもひときわ目覚ましい活躍ぶりを見せる菅尾の手腕にも、ぜひ注目したい。

12/1,2@兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
http://kansai-nikikai.com/wp/?page_id=565

 

 

 

♩12/2 安並貴史ピアノ・リサイタル

第7回野島稔・よこすかピアノコンクール優勝者・安並貴史の記念公演が開催される。曲目はシューベルトに、コンクール第二次予選で弾いたベートーヴェン、本選でのブラームス、ドホナーニである。特に安並が東京音楽大学大学院で現在研究中のドホナーニが、他の3人のピアノ作品の系譜からどのように導かれるのか、彼の知性と感性の見せ所となろう。

12/2@よこすか芸術劇場
https://www.yokosuka-arts.or.jp/performance/detail/?id=342

 

 

 

♩12/2 シューベルトの時代のピアノで聴く『冬の旅』

オペラ、北欧作品、歌曲と幅広く活躍する気鋭のバリトン・井上雅人が、歌曲というジャンルの極北であるシューベルト「冬の旅」を歌う。今年初めて開催されたショパン国際ピリオド楽器コンクールで第2位を受賞したフォルテピアノ奏者の川口成彦が共演で、会場に1820年のフォルテピアノを持ち込んでの演奏になるという。シューベルトの時代の響きに想いを馳せる一夜となろう。

12/2 13:00~ , 18:00~ (2回公演)@ソフィアザール・アネックス「バロック」
http://masatoinoue.com/concert/20181202b/

 

 

 

♩12/2 京響プレミアム 岸田繁交響曲第二番初演

「くるり」の岸田繁が2作目となる交響曲を発表する。前作同様、広上淳一率いる京都市交響楽団が初演の大役を担う。交響曲作家として鮮烈なデビューを果たしてから丸2年。どこかノスタルジックな岸田節に溢れ出るような音のアイディアを今度はどのような織物へと仕立て上げたのか、大いに期待したい。

12/2@京都コンサートホール
https://www.kyoto-symphony.jp/concert/detail.php?id=734&y=2018&m=12&kch=1
また、この新作初演は下記の2ヶ所でも開催されるため、京都を見逃してもまだチャンスはありそうだ。
名古屋公演 2018年12月4日@愛知県芸術劇場コンサートホール
https://www.kyoto-symphony.jp/concert/detail.php?id=735&y=2018&m=12
東京公演 2019年3月30日@東京オペラシティコンサートホール
https://www.kyoto-symphony.jp/concert/detail.php?id=737&y=2019&m=3

 

♩12/2 第3回伊左治直個展「南蛮劇場」

諧謔と詩情、奇想と正統、西洋と東洋、それらの融合を象徴した「南蛮劇場」というタイトルで第3回伊左治直個展が開かれる。年齢不問の演奏者たち、西洋楽器と日本伝統楽器、求道会館という西洋と東洋の様式が融合した会場、そして「酔っぱらいと綱渡り芸人」「熱帯伯爵」といった曲名が並んでいるのを見るだけで伊左治のあの音楽が聴こえてくるようではないか。国籍や様式といったものを越えた、音楽と詩の始原的な姿が現れてくるのを是非聴き届けたい。

12/2@求道会館
https://namban.wixsite.com/isajisunao
関連記事:本誌五線紙のパンセ
五線紙のパンセ|酔っぱらいと綱渡り芸人(I)|伊左治直

 

♩12/5 シュトックハウゼン&シューベルト~星と冬の旅

バリトンの松平敬とヴィブラフォンの會田瑞樹が、シュトックハウゼンとシューベルトの作品を取り上げる。シュトックハウゼンはティアクライス(十二宮)とヴィブラ=エルーファ、シューベルトは《冬の旅》から、松平自身による編曲で、バリトンとヴィブラフォン版で演奏される。演奏だけでなく、作品分析や編曲まで手掛ける松平が、若手の打楽器奏者會田とともに紡ぎ出す、シュトックハウゼンの星の旅、シューベルトの冬の旅、二つの刺激的な旅に行ってみようではないか。

12/5@近江楽堂
https://www.facebook.com/events/1351997638277285/

 

 

♩12/7,9 ジョナサン・ノット指揮東京交響楽団 モーツァルト:歌劇《フィガロの結婚》

一昨年の《コジ・ファン・トゥッテ》、昨年の《ドン・ジョヴァンニ》に続く3作目、ダ・ポンテ3部作がこれで完結する。これまでと同様ハンマーフリューゲルは指揮者ノットが担当する。演奏会形式ではあるが、舞台のあいたところを使っての演技は加えられる。マルクス・ウェルバのフィガロ、ミア・パーションの伯爵夫人、リディア・トイシャーのスザンナ、アシュリー・リッチズの伯爵と、中堅・若手の有望株でかためたキャストも期待できる。マルチェリーナにベテランのジェニファー・ラーモアが加わるのも楽しみ。

12/7@ミューザ川崎シンフォニーホール
http://www.kawasaki-sym-hall.jp/calendar/detail.php?id=2261&y=2018&m=12
12/9@サントリーホール
http://tokyosymphony.jp/pc/concerts/detail?p_id=ekUiWHUUEwg%3D

 

♩12/10 マハン・エスファハニ チェンバロ・リサイタル

圧倒的なテクニックでチェンバロを操るマハン・エスファハニがスティーヴ・ライヒのミニマル・ミュージックの古典『ピアノ・フェイズ』に挑む。さらに、現代イギリスのマイケル・ナイマン『チェンバロ協奏曲』(指揮:川瀬賢太郎、日本センチュリー交響楽団)とJ・S・バッハの古典中の古典『ゴルトベルク変奏曲』という振り幅の大きさに我々はついていけるのだろうか?大いに期待したい。

12/10@すみだトリフォニーホール大ホール
http://www.triphony.com/concert/detail/2017-12-002187.html

 

 

 

♩12/12 Curious Chamber Players 東京公演 2018

スウェーデンから「奇妙な(curious)」現代音楽集団が来日する。2003年の結成以来、前衛・実験・ミニマル・ノイズ・電子音楽・即興と幅広い「新しい」音楽レパートリーを探求し続けてきたこの集団が、日本の先鋭的な作曲家たちと邂逅する。「好奇心のある(curious)」人間ならばこの機会を逃してはならない。

12/12@ルーテル市ヶ谷ホール
https://www.facebook.com/events/247708429426583/?active_tab=about
(Curious Chamber Players 公式HP)
https://www.curiouschamberplayers.com/

 

 

♩12/12 本村睦幸リコーダーシリーズ第12回 没後250年ヴェラチーニのリコーダーソナタ

今年アニバーサリーを迎えている作曲家の中でもほとんど注目されていないフランチェスコ・マリア・ヴェラチーニ(1690 – 1768)をフューチャーしたコンサート。ドレスデン宮廷などで活躍した彼の作品が本村睦幸(リコーダー)、山本徹(バロックチェロ)、根本卓也(チェンバロ)のピリオド楽器による演奏でまとめて聴ける貴重な機会をお見逃しなく。

12/12@近江楽堂
http://mutsuyukimotomura.com/181212/index.html

 

 

 

♩12/12 ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団

N響首席指揮者としてますますお馴染みの存在になったパーヴォ・ヤルヴィが、かねてよりの手兵であるDKBと来日する。メイン曲のシューベルト「グレイト」は昨年9月にN響とも演奏したばかりだが、その際は16型の大編成をとった。カンマー(室内)という名の通り、小編成による鋭敏な音楽作りを身上とするDKBとの演奏ではまた全く違った仕上がりになるのではないか。艶やかな美音を持つ名手ヒラリー・ハーンを独奏に迎え、バッハの協奏曲2曲を披露する前半もむろん楽しみ。

12/12@東京オペラシティ コンサートホール
https://www.operacity.jp/concert/calendar/detail.php?id=8768

 

 

♩12/14 アラン・ギルバートと都響メンバーが届けるブラームス六重奏

今夏から都響の首席客演指揮者に就任したアラン・ギルバートが、同オケへの12月客演に合わせメンバーとの室内楽演奏会をもつ。指揮者として活躍しつつ、ヴァイオリンやヴィオラの演奏も継続している彼が、都響の「顔」ともいえる名手達とどのようなブラームスを演奏するのか。ヴァイオリンとしてリードするのではなく、音楽の色合いを静かに変える内声(=ヴィオラ)として加わるのがまた興味深い。

12/14@浜離宮朝日ホール
https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/event/2018/12/event1187.html

 

 

 

♩12/16、17、18 パリ管弦楽団

パリ管弦楽団が、2016/17シーズンより音楽監督を務めるダニエル・ハーディングと来日。コンビ発足直後の2016年冬にも来日した彼らだが、現在進行中の2018/19シーズンをもって解消することが発表されている。つまり本ツアーが2回目にして最後の来日となる可能性が大きいということだ。今回はベートーヴェン「田園」にマーラー「巨人」、イザベル・ファウストが共演する協奏曲もベートーヴェン、ベルクと、殆どが独墺音楽というプログラム。フランスの楽団の来日公演としてはやや異色に思えるこの選曲で、どのような音楽を聴かせてくれるだろうか。

12/16@東京芸術劇場コンサートホール
http://www.kajimotomusic.com/jp/concert/k=697
12/17@サントリーホール
http://www.kajimotomusic.com/jp/concert/k=676/
12/18@サントリーホール
http://www.kajimotomusic.com/jp/concert/k=677/

 

♩12/18 アンドレアス・シュタイアー プロジェクト10

ドイツ古楽界をリードするチェンバリスト、アンドレアス・シュタイアーのシリーズ。今回はJ・S・バッハ(1685-1750)に至るまで、更にその後のドイツ鍵盤楽曲の歩みを辿る。J・S・バッハのみならず、J・P・スウェーリンク(1562-1621)、J・J・フローベルガー(1616-1667)、G・ベーム(1661-1733)、F・クープラン(1668-1733)、A・ヴィヴァルディ(1678-1741)、W・F・バッハ(1710-1784)を彼独自の6つのテーマで並べたプログラムに心躍る。

12/18日@トッパンホール
http://www.toppanhall.com/concert/detail/201812181900.html

 

♩12/20 弓新ヴァイオリン・リサイタル

世界を股にかけて活躍中の1992年生まれの気鋭の俊英・弓新がフランスのピアニスト、ナタナエル・グーアンと組む。バッハ、ベートーヴェン、シューベルト、ストラヴィンスキーが並んだ、一切の逃げも許されない曲目には早くも王者の風格すら漂う。王道を突き進む弓のヴァイオリンの妙技に期待したい。

12/20@東京文化会館 小ホール
http://www.pacific-concert.co.jp/concert/view/915/

 

 

 

 

♩12/21 シャイニング・シリーズVol.4 成田達輝×阪田知樹 デュオコンサート

現在26歳のヴァイオリニスト・成田達輝、25歳のピアニスト・阪田知樹、この若人たちの気迫は曲目を見れば伝わってくる。シュニトケ、シマノフスキ、ラヴェル、イザイ、フランク、あえてクラシックの本流を外した選曲と、12月に「シュニトケのきよしこの夜」を聴かせる反骨精神。時代を変えるこの革新への心意気を真正面から受け止めたい。

12/21@東京文化会館 小ホール
http://www.t-bunka.jp/stage/host_10849.html

 

 

 

 

♩12/21 松平頼曉 オペラ『The Provocators~挑発者たち』

87歳にして未知なる前衛の道を突き進む作曲家・松平頼曉が28年を費やして完成させたオペラが遂に世界初演される(ピアノリダクション版、コンサート形式)。「ある架空の独裁国。そこには反政府集団がいる。彼らの存在を理由に、秘密警察や軍隊を増強する政府」という題材、『The Provocators(挑発者たち、煽動者たち)』というタイトルを聞いて背筋に冷たいものを感じない今の日本人がいるだろうか。戦争を知る前衛作曲家が書いた「現代オペラ」を今こそ聴く時なのだ。

12/21@イタリア文化会館アニエッリホール
https://www.confetti-web.com/detail.php?tid=48220

 

♩12/21 漆原朝子&ベリー・スナイダー

ヴァイオリニストの漆原朝子がシューマンのソナタ全曲演奏に再び挑む。彼女がこの意欲的な取り組みを最初に行ったのは2002年。演奏機会の少ない第3番も含め、一夜での全曲演奏は大きな話題を呼んだ。今回共演するのは、当時と同じくベリー・スナイダー。感動の再来はなるか。いやむしろ、円熟した漆原=シューマンの新たな世界をぜひ期待したい。

12/21@京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ
http://www.kojimacm.com/digest/181221/181221.html

 

 

 

♩12/22 横山博 プリペアド・ピアノ・リサイタル ケージ『ソナタとインターリュード』全20曲

1949年初演、ジョン・ケージ『プリペアド・ピアノのためのソナタとインターリュード』、現代の古典と言われるべきこの作品であるが、ケージが本来想定していたのはスタインウェイMという通常のフルコンサートピアノより小さいピアノなのである。歴史的奏法を学んだチェンバリスト・横山博が今回開くのはその両国門天ホール所蔵のスタインウェイMによる、ケージの意図を正確に再現した演奏会である。およそ70年の時を超えて聴こえてくるケージの音に耳を澄ませたい。
公演終了後、解説とプリペアド・ピアノの無料試奏可能(事前申し込みが必要)。

12/22@両国門天ホール
https://prepared-steinway-piano.peatix.com/?fbclid=IwAR2aZfQG8mJIFSLwCHbXaAPGYEK1W1mnrmWm7j-xpS7uilnXrAu0tTntQps

 

♩12/29 高橋悠治作品演奏会 I 歌垣

一つ所に留まることを知らない現代音楽の旅人・高橋悠治の室内楽個展を、彼を尊敬してやまない現代日本を代表する作曲家・指揮者の杉山洋一が企画・指揮する。1964年から2018年までの50年以上に渡る作品群によって、30人以上の多彩な演奏家たちとともに高橋の旅路を辿るまたとない機会となろう。

12/29 15:30~、19:00~ (2回公演)@東京オペラシティリサイタルホール
https://www.confetti-web.com/detail.php?tid=48355