Menu

注目のコンサート|2018年10月

♩ 10/3 井上道義&読売日本交響楽団 マーラー/交響曲第8番『千人の交響曲』

東京芸術劇場に縁のある演奏家たちが、マーラーの超大作に結集する。芸劇と事業提携を結ぶ読響、首都圏の音大による合同コーラス(同ホールとミューザ川崎で毎年催される音楽大学フェスティバルが連想できよう)、日本を代表する独唱陣。この豪華な布陣を率いるのは、芸劇シアター・オペラはじめ数多くの公演で指揮を務めてきた鬼才・井上道義である。東京芸術劇場で重ねられてきたマーラー演奏の歴史に、また新たな1ページが加わる。
10/3@東京芸術劇場
http://www.geigeki.jp/performance/concert142/

 

 

♩ 10/3、6、8、10、13、14 新国立劇場 モーツァルト《魔笛》

9月にオペラ部門の芸術監督に就任する大野和士、その就任第1作となる。新国立劇場での《魔笛》は、ミヒャエル・ハンぺの演出で1998年5月にプレミエ公演が行われ、それ以降、数年ごとに上演されてきた。今回のプロダクションは、ウィリアム・ケントリッジの演出によるもので、2005年のベルギーのモネ劇場での初演の後、ミラノ・スカラ座、エクサン・プロヴァンス音楽祭などで上演され、高い評価を得ている。レンタルではなく、上演権、装置を買い取り、継続的に上演が可能なように整備しての新制作、芸術監督・大野の強い思いが感じられる。指揮のローラント・ベーアほか新国初登場の海外組に、旬の国内組を配したキャストも楽しみ。
10/3,6,8,10,13,14@新国立劇場オペラパレス
https://www.nntt.jac.go.jp/opera/die-zauberflote/

 

♩ 10/4〜7 アジア オーケストラ ウィーク 2018

今年で17年目を迎えるアジア オーケストラ ウィークは、アジア太平洋地域から国々を代表するオーケストラを招き、演奏と共に各国それぞれの多様な文化と伝統を味わうコンサート。これまでに15ヶ国からオーケストラが参加した。今回来日するオーケストラは、フィリピン・フィルハーモニック管弦楽団と杭州フィルハーモニック管弦楽団。ホスト・オーケストラは群馬交響楽団。バラエティ豊かな曲目も魅力だ。
10/4 群馬響とフィリピン・フィルの合同演奏会@久慈市民文化会館
10/5 群馬交響楽団@東京オペラシティ コンサートホール
10/6 フィリピン・フィルハーモニック管弦楽団@東京オペラシティ コンサートホール
10/7 杭州フィルハーモニック管弦楽団@東京オペラシティ コンサートホール
http://www.orchestra.or.jp/information/2018/-2018-1/

 

♩ 10/4、5 東京フィルハーモニー交響楽団
第911回サントリー定期シリーズ&第120回東京オペラシティ定期シリーズ

今年5月の「フィデリオ」でワールドクラスの演奏を聴かせた名誉音楽監督チョン・ミョンフンが、東フィルの指揮台に早くも帰還。前半のブラームス「ヴァイオリン協奏曲」でソロを弾くのはチョン・キョンファで、日本では16年ぶり(東フィルでは初)というビッグな姉弟共演が実現する。お互いを知り尽くした間柄ならではの、密接な音楽言語による演奏に期待したい。後半、フランス楽壇で長く活躍する指揮者が手がけるサン=サーンス「オルガン付き」ももちろん楽しみだ。
10/4@東京オペラシティ コンサートホール
http://www.tpo.or.jp/concert/20181004-01.php
10/5@サントリーホール
http://www.tpo.or.jp/concert/20181005-01.php

 

♩ 10/5〜13 サントリーホール ARK クラシックス

10/5の前夜祭から始まるサントリーアークヒルズでのARK HILLS MUSIC WEEK2018
はアーティスティック・リーダーに辻井伸行、三浦文彰を迎え、多彩な室内楽の饗宴を繰り広げる。ヴィキングル・オラフソンによるコンテンポラリー・ナイト<フィリップ・グラス>や、イタリアのコントラバス四重奏団ザ・ベース・ギャングなど刺激的だ。
10/5~13@サントリーホール&ブルーローズ
https://www.suntory.co.jp/suntoryhall/schedule/detail/20181005_S_3.html

 

 

♩ 10/6 東京佼成ウインドオーケストラ 第140回定期演奏会

古典・ロマン派・近現代といかなる音楽も鮮やかな棒で音化する日本指揮界の至宝・秋山和慶。今回その秋山が佼成ウインドで挑むプログラムは、実に色彩豊かだ。佼成ウインドが委嘱したリード「法華経からの三つの啓示」に始まり、独奏者とバンドが独特の色彩をもってぶつかり合うジョリヴェ「トランペット協奏曲第2番」では同団首席奏者の本間千也が魅了する。「ザノーニ」と並ぶクレストンの傑作「プレリュードとダンス」は上述のジョリヴェ作品と同時期の成立。我々と同時代の作品であるヴァンデルロースト「アルセナール」、長生淳「トリトン」はこの並びの中でどう聴こえるだろうか。
10/6@東京芸術劇場
http://www.tkwo.jp/concert/subscription/140.html

 

 

♩ 10/7 東京交響楽団 川崎定期演奏会第68回

戦前生まれの4人の作曲家(深井は1907年、小山、早坂、伊福部は1914年生まれ)の1950年代から1960年代の作品がプロオーケストラによって演奏されるという稀有な舞台が実現する。西洋音楽と日本民族主義、日本人とアイヌ文化という相克の中でどのような音楽を彼らは創造したのか聴き届けたい。気鋭の指揮者・大井剛史とピアニスト・阪田知樹にも注目だ。
10/7@ミューザ川崎シンフォニーホール
http://tokyosymphony.jp/pc/concerts/detail?p_id=rKYaqwTshlE%3D

 

 

 

♩ 10/7、11、18 ポリーニ ピアノ・リサイタル

シューマンとショパン、ショパンとドビュッシー、シェーンベルクとベートーヴェン「ハンマークラヴィーア」。どの公演を選ぶかに迷う人は多かろう。彼の歩みと照らし合わせても、そして現在、彼の立つ地点を見極めようとしても、何が聴こえるかは行ってみないとわからない。境地などというものは、どのようにでも言えるものだ。世紀の天才の来し方と今を、自分の耳目で確かめに行っていただきたい。ピアノ演奏史に刻まれるひとときとなろうことは間違いない。
10/7,11,18@サントリーホール
http://www.kajimotomusic.com/jp/concert/k=682/

 

 

♩ 10/12、13 ポリーニ・プロジェクト2018 I、II

マウリツィオ・ポリーニのプロデュースによるポリーニ・プロジェクトが今年も開催される。第1日は90年代生まれの若手を多く起用しての現代のシャリーノ、そしてハーゲン・クァルテットと堤剛によるシューベルトの古典、第2日はハーゲン・クァルテットによるベルク、ウェーベルン、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲が取り上げられる。西洋音楽の伝統と、それに連なる現代を俯瞰するまたとない機会となろう。
10/12,13@トッパンホール
http://www.toppanhall.com/concert/detail/201810121900.html
http://www.toppanhall.com/concert/detail/201810131700.html

 

 

♩ 10/13 光と色彩の作曲家クロード・ドビュッシー

第1回は「ドビュシーの “ド” から “シ” まで」〈初級編〉。ドビュッシー没後100年を迎える今年、その偉業を振り返るコンサートが各地で行われているが、京都では音楽学者による解説を交えながら、初級編、中級編、総括編と3回にわたってその魅力を堪能する催しが行われる。第1回はナビゲーターに音楽学者の岡田暁生、ピアニストに中川俊郎、小坂圭太の二人を迎えて、 ドビュッシーの”ド” から “シ”まで、その全てを味わおうという企画だ。とはいえ、これが「初級編」というのだから、ドビュッシー・ファンはおろか、まだ馴染みの薄いという人にもその真髄を知るにはうってつけの機会となりそうだ。
10/13@京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ
https://www.kyotoconcerthall.org/debussy2018/
関連記事:本誌 Back Stage
Back Stage|京都コンサートホールでドビュッシーを「感じる」|高野裕子

 

♩ 10/13 神奈川フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会 みなとみらいシリーズ第343回

2001年大阪の小学校での無差別殺傷事件の犠牲者遺族の手記からとられたテクストを元とした権代敦彦『子守歌』の再演。神奈川フィルの常任となった川瀬の念願であり、名フィルとも2015年に演奏している。権代が自らの信仰とともに問う「永遠とは何か」。生と死に真正面から向き合う音楽が、「天上の喜び」とも題されるマーラー『交響曲第4番』とどのような照応を見せるだろうか。
10/13@横浜みなとみらい大ホール
http://www.kanaphil.or.jp/Concert/concert_detail.php?id=554
本誌 Back Stage:
http://mercuredesarts.com/2017/12/14/back-stage-kanagawa_philxkawase/

 

♩ 10/13 メナヘム・プレスラー&マティアス・ゲルネ

94歳のメナヘム・プレスラーと51歳のマティアス・ゲルネによるシューマンの夕べ。昨年の来日で絶賛を浴びたプレスラーが再び日本の舞台に立つ。発表されているプログラムでは、彼のソロは《子供の情景 作品15》。滋味あふれる音楽が聴けることだろう。ゲルネはプレスラーに伴われて《詩人の恋》を歌う。ピアニストによって歌の作りがかなり変わるゲルネだが、プレスラーとの共演がどのような化学反応をおこすか。最後の曲の後奏の美しさを楽しみたい。
10/13@サントリーホール
http://amati-tokyo.com/performance/20110617.html

 

 

♩ 10/17日 クピドのまなざし

クピド(キューピッド)の気まぐれに翻弄される人間世界の恋の歌を揃えたコンサート。
モンテヴェルディを起点として、パンドルフィ・メアッリ、デッラ・チャイアといった知られざる17世紀イタリア作曲家の作品を古楽器奏者の名手たち(ソプラノ村田淳子、バロック・ヴァイオリン杉田せつ子、チェンバロ北谷直樹、テオルボ高本一郎)の演奏で聴く贅沢!
10/17@日本福音ルーテル東京教会
https://www.facebook.com/events/438500969941758/

 

 

♩ 10/19 日本センチュリー交響楽団 いずみ定期演奏会 No. 39「ハイドンマラソン」

首席指揮者飯森範親が日本センチュリー交響楽団と共にハイドンの全交響曲を演奏し、CD化を目指す「ハイドンマラソン」も今年で4年目を迎えた。本公演では、「疾風怒濤」期の作品である第39番に、新たな時代への眼差しが感じられる第61番、そして第73番「狩り」を選曲。そればかりか、これらの楽曲の間には黛敏郎の無伴奏チェロ独奏の作品《文楽》が挟まれる。ソリストを務めるのは当楽団首席チェロ奏者の北口大輔。飯森が繰り出すハイドンの世界と共に、この珍しい選曲の妙をぜひとも堪能したい。
10/19@いずみホール
http://www.century-orchestra.jp/concert/izumi39/
関連記事:本誌 Back Stage
Back Stage|創立30周年に向けて駆け抜ける、日本センチュリー交響楽団のハイドンマラソン|山口明洋

 

♩ 10/22 フライブルク・バロック・オーケストラ mit キャロリン・サンプソン

1987年の発足以来、古楽シーンをリードするフライブルク・バロック・オーケストラ。ヤーコプス、エラス=カサド、イザベル・ファウストら傑出した共演者との録音も我々に新鮮な楽曲の魅力を届けてくれている。本邦でもお馴染みの名花キャロリン・サンプソンもそんな共演者の一人だ。この組み合わせによるバッハのカンタータ集にも収録された《わが心は血にまみれ》BWV199、《今ぞ去れ、悲しみの影よ》BWV202を楽しみに待ちたい。中プロ、オーボエとヴァイオリンのための協奏曲(BWV1060a)でもこの傑出したアンサンブルならではの活き活きとした音楽が期待できよう。
10/22@トッパンホール
http://www.toppanhall.com/concert/detail/201810221900.html

 

♩ 10/24 東京都交響楽団 第864回定期演奏会

世紀をまたいでオーストリアで活躍した作曲家、シュレーカーとツェムリンスキーの第一次世界大戦中から戦間期の作品2作が演奏される。ファンタスティックな色彩に満ちたシュレーカー『室内交響曲』、喜怒哀楽に慕情に激情と様々な「情」が渦巻くツェムリンスキー『叙情交響曲』、共にロマン主義の時代の終わりを飾った名曲である。大野和士と、彼が見込んだ二人の歌手がどのようにこの音楽で時間空間を彩るのか楽しみである。
10/24@東京文化会館
http://www.tmso.or.jp/j/concert_ticket/detail/detail.php?id=3141&year=2018&month=10

 

 

♩ 10/24 ジュリアード弦楽四重奏団

オーケストラではないのだから、1946年創設のジュリアード弦楽四重奏団(SQ)がその72年後の2018年にも未だ活躍しているということ自体がまず驚異的だ。新陳代謝のように度々メンバーの入れ替えを行い、当然のことながらその音楽はそれに伴って変化を繰り返す。その意味では今のジュリアードSQは巷間言われるような「最盛期」(1960年代~1970年代としておこう)の彼らではない。しかし、不思議なことに今でもジュリアードSQは表面的な相違点を越えてやはり圧倒的にジュリアードSQなのだ。禅問答めくが、それを敢えて一言で申すなら「求心力」とでも言っておこう。ジュリアードSQ的求心力。2017/2018シーズンをもって第1ヴァイオリンのジョセフ・リンが退団し、この9月からアレタ・ズラがその任に就く。さて、何が変わっているのか。ジュリアード的求心力は?
10/24@ヤマハホール
https://www.yamahaginza.com/hall/event/003163/

 

♩ 10/27 宮田大 チェロ コンサート with ウェールズ弦楽四重奏団

非常に贅沢なコンサート。前半は宮田大によるバッハ:無伴奏チェロ組曲第3番。想像してみよう、極めて豊穣な音響を誇る軽井沢大賀ホールを素晴らしい美音を持つ宮田のチェロ演奏「のみ」が満たす。Less is moreとはこのことか。後半は今や飛ぶ鳥を落す勢いのウェールズ弦楽四重奏団が加わってのシューベルトの傑作、弦楽五重奏曲。宮田&ウェールズは当曲を東京・春・音楽祭でこの4月に披露しているが、それは大変な名演奏だったと聞く。既に勝手知ったるこの両者が名ホールで再演、とあらばいやが上にも期待は高まる。
10/27@軽井沢大賀ホール
http://www.ohgahall.or.jp/concert/details.php?cid=4269&year=2018&mon=8&v=2

 

 

♩ 10/28 八村義夫 生誕80年祭「無垢の予兆」

今年生誕80年を迎える八村義夫(1984年享年46歳)へのオマージュ。八村の合唱作品は2曲のみだが、その2曲、アウトサイダー第1番《愛の園》、アウトサイダー第2番を中心に八村の愛したジェズアルドのマドリガル、ブソッティのほか伊左治直の新作(委嘱初演)を並べた。演奏は西川竜太率いるヴォクスマーナ、クール・ゼフィール、空(くう)、 暁。「ひとつの音に世界を見、ひとつの曲に自らを聞く」八村の世界をどのように描き出すか。秋の夜、静かに心を傾けたい。
10/28@トッパンホール
http://www.toppanhall.com/sph/concert/detail/201810281800.html
関連記事:本誌「五線紙のパンセ」
五線紙のパンセ|敦盛|伊左治 直 

 

♩ 10/31 藤倉大 オペラ「ソラリス」

今をときめく作曲家・藤倉大の初オペラ作品は、スタニスワフ・レムの傑作SF小説「ソラリス」を題材とする。タルコフスキーやソダーバーグが映画化し、その度に原作小説の解釈で論争が起きてきたこの20世紀の古典SFを藤倉大がどのようにオペラ化したのか、興味津々である。
10月31日@東京芸術劇場
http://www.geigeki.jp/performance/concert139/

 

 

 

♩ 10/31、11/1 シュターツカペレ・ドレスデン

ドイツの古豪シュターツカペレ・ドレスデンが、首席指揮者クリスティアン・ティーレマンと来日する。前回(2016年)来日時は「アルプス交響曲」、ホール・オペラでの「ラインの黄金」など大編成による重厚なプロで気を吐いた当コンビ。今回取り上げるのは対照的に、シューマンの交響曲全曲というシンプルなプログラムだ。とはいっても指揮者・オーケストラ双方にとって自家薬籠中のレパートリー。零れんばかりのロマンティシズムが魅力的な第2番、後半に壮大なビッグバンを内包する第4番と、このコンビが繰り広げるスケール大きな演奏が眼前に浮かぶようだ。
10/3,11/1@サントリーホール
http://www.japanarts.co.jp/concert/concert_detail.php?id=663