Back Stage|創立30周年に向けて駆け抜ける、日本センチュリー交響楽団のハイドンマラソン|山口明洋

創立30周年に向けて駆け抜ける、日本センチュリー交響楽団のハイドンマラソン

text by 山口明洋(Akihiro Yamaguchi)

私たち日本センチュリー交響楽団は、1989年12月に活動を開始しました。来年度には創立30周年を迎えようとしています。初代指揮者にウリエル・セガル(現名誉指揮者)を迎えて、高関健(首席指揮者)、小泉和裕(首席指揮者、音楽監督)と続き現在は飯森範親が首席指揮者を務めています。大阪府によって創団されたこともあり、大阪府豊中市の府立服部緑地公園の中にある専用練習場センチュリー・オーケストラハウスが本拠地になります。この施設は100名のオーケストラと200名の合唱団が入ることが出来る合奏場を中心に、事務局や楽団員室、ライブラリー、楽器庫等、楽団の核となる大切な場所です。施設として機能的なだけでなく、ロケーションも自慢で、広大な公園の一角にあることから四季折々の自然を感じながら演奏活動に取り組むことが出来ます。とても幸せなことだと感じていますし、演奏にも様々な形で良い影響を与えていると思います。

2014年に飯森範親が首席指揮者に就任して、直ぐに取り組んだのがブラームスの交響曲の全曲録音でした。3日間で2回のコンサートをライブレコーディング、中日も終日レコーディングという大変厳しいスケジュールでしたが、飯森はレコーディングを重視していく姿勢をオーケストラに明確に伝えました。さらに飯森は、休止していたいずみ定期演奏会を再開しました。響きの良いいずみホールでのいずみ定期演奏会は1999年にスタートしましたが、2005年1月の第22回公演を最後に休止していたのです。再開したいずみ定期演奏会は「温故知新」というテーマで、古典作品を中心に取り上げました。その第1回目にメインに据えたのがハイドンの交響曲第104番「ロンドン」だったのです。こうして、センチュリーのハイドンマラソンへのカードが揃い始めます。
この時のハイドンの「ロンドン交響曲」は瑞々しい演奏だったと記憶しています。ちょうど翌年度の企画を進めていた頃で、「温故知新」の次の一手に苦慮していた頃でした。といっても私自身は当時他部署にいて、隣の席から企画制作担当を覗いての印象ですが・・・。かつてセンチュリーのいずみ定期演奏会はひと捻り利いたプログラムが特徴でした。第1回はヘルムート・ヴィンシャーマンを迎えて、モーツァルトの教会ソナタやギルマンのオルガン協奏曲を取り上げています。20世紀以降の作品も積極的で、第21回は小泉和裕の指揮で伊福部昭の『二十絃箏のための交響的エグログ』(野坂恵子独奏)とメシアンの「「キリスト昇天」といった具合です。さぁ、飯森範親は何をやろうと言うのか。
「ハイドンをやろう、交響曲を全曲、それを録音しよう」
その時の企画制作担当は目玉が飛び出そうになったと言います。交響曲は104曲・・・何年かかるんだ、ほとんどの作品は知られていない・・・何人聴きに来るんだろう。
それでも、やってみようという空気になったのは、先の『ロンドン交響曲』の手応えがあったからだと思います。急ピッチで準備が進みました。 「ハイドンマラソン」というコピーは飯森自身の作という気合いの入りよう。
かくして2015年6月の第27回いずみ定期演奏会で飯森範親とのハイドンマラソンはスタートしました。ハイドンの交響曲第35番、アントニオ・メネセスをソリストに迎えたチェロ協奏曲第2番、交響曲17番、そして交響曲第6番「朝」。ソリストの好演にも恵まれて、爽やかにハイドンの音符たちが駆け抜けました。第28回いずみ定期演奏会には有名作の交響曲第101番「時計」等を演奏して、大阪芸術祭賞奨励賞を受賞することが出来ました。幸先の良いスタートが切れたと思います。この頃の演奏はすでにライブ録音をリリースしていて、いつでも聴くことが出来ます。

4年目となる2018年度のハイドンマラソンは、いずみホールが改修工事のため2回の開催となります。昨年度のハイドンの交響曲は、「疾風怒濤時代の作品とパリ交響曲」をテーマにしたので、今年は「疾風怒濤、その後」をイメージしました。さらに楽団員をソリストに起用して邦人作品をプログラムしました。首席チェロ奏者北口大輔は黛俊郎の『文楽』を弾きます。実は2015年に淡路で人形浄瑠璃と「文楽」を共演した北口の舞台を観て、いつか大阪でも・・・と機会を伺っていたのです。今回はチェロ独奏のみでのステージとなります。コンサートマスターの松浦奈々は野村誠の「ポーコン」という曲を披露します。ハイドンマラソンの大きな問題は打楽器奏者の出番が限られているのです。「当団には個性豊かな打楽器の名手廣川祐史がいるのに勿体ないなぁ」と思っていたところ、偶然「ポーコン」の録音を聴きました。3名の打楽器奏者とヴァイオリンの協奏曲、「これだ!」って思いましたね。作曲家の野村誠は当団のコミュニティプログラム・ディレクターを務めており、音楽を通して就労支援、地域振興等、楽団員と共に興味深いワークショップを展開しています。
これからはハイドンを縦糸にしながら様々な作品を、どんどんプログラムに入れていこうと思います。

ハイドンの交響曲の達成状況は今年度末で40曲。まだまだ長い道のりです。ただ走るだけだと、やっぱり辛いと思いますが、美しい景色が見えたり、伴走してくれる人がいると面白くなると思います。ぜひ皆さまに日本センチュリー交響楽団の演奏を聴いていただきたいと思います。こうして沢山のハイドンの交響曲に携わっていると、どんどん親近感湧いてきます。おそらくハイドンさんはシャレの解る面白い人だったと思うのです。私たちは大阪のオーケストラですから、オモロイ人は大好きですよ!

山口明洋(日本センチュリー交響楽団演奏事業部長)

(2018/6/15)

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公演情報
いずみ定期演奏会No.39 ハイドンマラソン
2018年10月19日(金)19:00開演(18:00開場)
ハイドン:交響曲第61番 ニ長調
ハイドン:交響曲第39番 ト短調
黛 敏郎:文楽(無伴奏チェロによる独奏)
ハイドン:交響曲第73番 ニ長調 「狩り」
指揮:飯森 範親(日本センチュリー交響楽団首席指揮者)
チェロ:北口 大輔(日本センチュリー交響楽団首席チェロ奏者)
A席 4,500円 B席 3,500円
http://www.century-orchestra.jp/concert/izumi39/

いずみ定期演奏会No.40 ハイドンマラソン
2019年1月25日(金)19:00開演(18:00開場)
ハイドン:交響曲第12番 ホ長調
ハイドン:交響曲第65番 イ長調
野村 誠:ポーコン(ヴァイオリンとポータブル打楽器のための協奏曲)
ハイドン:交響曲第94番 ト長調 「驚愕」
指揮:飯森 範親(日本センチュリー交響楽団首席指揮者)
ヴァイオリン:松浦 奈々(日本センチュリー交響楽団コンサートマスター)
A席 4,500円 B席 3,500円
http://www.century-orchestra.jp/concert/izumi40/