PURCELL PROJECT 2017|藤堂清

PURCELL PROJECT 2017
オードとアンセム〜声楽芸術の結晶〜

2017年10月20日 Hakuju Hall
Reviewed by 藤堂 清 (Kiyoshi Tohdoh)
写真提供:OFFICE ARCHES

<演奏>
ソプラノ:澤江衣里、藤崎美苗
アルト:青木洋也、布施奈緒子
テノール:石川洋人、中嶋克彦
バリトン:加耒 徹
バス:藤井大輔
バロック・ヴァイオリン:宮崎蓉子、廣海史帆
バロック・ヴィオラ:中島由布良
ヴィオローネ:西沢央子
オルガン:山縣万里

<曲目>
ヘンリー・パーセル(1659-1695)
 見よ、私は幸福な知らせをもたらそう Z.2
 おお、主に感謝を捧げよ Z.33
 誰が私たちの知らせを信じてくれたろうか? Z.64
——————-(休憩)——————-
 パヴァーヌ ト短調 Z.752
 シャコンヌ ト短調 Z.730
 おお主よ、私をお救い下さい Z.51
 厳しい天候と戦場の危難から Z.325

 

パーセル・プロジェクトは2009年ヘンリー・パーセル生誕350年を機に、青木洋也の呼びかけにより結成された。古楽器を使用し作曲家の当時の音、その時代様式で、オードとアンセムといった声楽作品を中心に演奏してきている。
7回目となる今年のプログラムもオード1曲とアンセム4曲を中心に編まれている。
アンセムとは、英国国教会の典礼で用いられる教会音楽の総称で、聖書や祈祷書の言葉が用いられる。この日は、通奏低音を伴う独唱部分と合唱部分が交代しながら歌いつがれていくヴァース・アンセムのみが取り上げられた(一方、ア・カペラによるものをフル・アンセムと呼ぶ)。
オードは、独唱、重唱、合唱、器楽といった楽曲を組み合わせたもので「バッハのカンタータに近い(プログラムより)」。プログラムの最後の曲がそれで、王女アンとデンマークの王子ジョージの結婚を祝う内容となっている。

出演した歌手の多くがバッハ・コレギウム・ジャパンに参加するなど、バロック音楽の分野で実績を積んできている。この日は合唱も各パート1~2名の形で演奏されたため、それぞれの歌手の力の均一性と他のパートと声をとけ合わせることが求められたが、独唱、重唱、合唱、どれも安定感があり美しい歌を聴かせてくれた。

一曲目の《見よ、私は幸福な知らせをもたらそう》はキリストの降誕を語るもの、クリスマス礼拝のために書かれた喜びの歌。バスの独唱には、2オクターブにおよぶ下降音階があり、曲全体のソロでも中心的な役割を持つ。これを歌った藤井は高い音には少し苦労したが、難役を歌いこなしていた。弦楽器4本とオルガンによる器楽も明るい音を奏でる。合唱の部分では、ソロと音圧の違いがあるわけではないが、ピュアな響きが聴けた。
二曲目の《おお、主に感謝を捧げよ》の最後の部分、「アーメン」をソリストと合唱が交代で歌うところでは、歌い手の数の差があった方が効果的だったろう。パーセルの時代には合唱団によって歌われていたのではないか。
前半最後の曲《誰が私たちの知らせを信じてくれたろうか?》はキリストの受難を歌うアンセム。ここでは合唱のパートを少人数で歌っても違和感はない。最初の曲とは対照的な嘆きの歌である。

後半は器楽曲に続き、アンセム《おお主よ、私をお救い下さい》が、そして最後にオード《厳しい天候と戦場の危難から》が演奏された。
このオードは世俗的な内容であり、歌詞もそのために書かれている。器楽の役割が多く、曲想もはなやかな部分が多く、ソロによるアリアのような構成の曲もある。ソロ・パートの充実が聴けたが、最後、澤江の美しい声がコンサートを締めた。

ヘンリー・パーセルという一人の作曲家に焦点をあてたこのプロジェクト、アンセムだけでも60曲以上あることを考えるとまだ道半ば。まずはすべてを音にすることが目標だろうが、パーセルの魅力を広く伝えるためには、再演、再々演を行うことも必要だろう。
若い歌手が加わっていることはプロジェクトの今後にとって明るい材料。各人がそれぞれ古楽の分野などでの活動でいそがしいとは思うが、なんとか調整し、年2回くらいのペースに加速していくことを期待したい。