新日本フィルハーモニー交響楽団室内楽シリーズXIII | 齋藤俊夫

新日本フィルハーモニー交響楽団室内楽シリーズXIII
  ~楽団員プロデューサー編~#107 何気ない、その一言が…

2017年4月5日 すみだトリフォニー小ホール
Reviewed by 齋藤俊夫(Toshio Saito)

<演奏>
フルート・企画:渡辺泰
ヴァイオリン:岸田晶子
ヴィオラ:井上典子
チェロ:多田麗王
ファゴット:石川晃
ハープ:梶彩乃

<曲目>
ヴィラ=ロボス:『ブラジル風バッハ第6番』
ドヴィエンヌ:ファゴット四重奏曲ハ長調
ドビュッシー:フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ
ジョリヴェ:『リノスの歌』(五重奏版)
(アンコール)ドビュッシー:『小組曲』より第3曲
ヴィラ=ロボスのフルートとファゴットによる二重奏、第1楽章は空を駆け巡る小鳥のようなフルート、悠然と滑空する鷲や鷹のようなファゴットの2つの対比的楽想が面白く感じられた。陳腐な喩えかもしれないが、南米の大きな空と陽光を想起させられた。第2楽章になると両楽器の動きが活発化し、より劇的になるのだが、今回の演奏は筆者の感覚ではやや消化不良。もっと音楽に感情や物語的構築性を与えてほしかった。

次のドヴィエンヌは予想を良い意味で外された。全編を通じて、石川晃のファゴットの、場面による音色の細かな使い分けがまず見事。そして各楽器が前に出たり後ろに引いたりするアンサンブルの妙。なんと明朗快活でユーモラスな音楽であることか。フランス古典期にこんな魅力的な音楽があったとは不勉強にして知らなかった。最後の全奏まで、ファゴットの持つ天性のユーモアを余すところなく存分に楽しませてもらった。

ドビュッシーは言わずと知られた名曲であるが、いささか渡辺泰のフルートが平板に聴こえてしまった。フルートで発し得る3オクターヴの音域のうちの一番低いオクターヴの音が冴えない。フルートの楽器の特性上この低音域は音を響かせるのが最も難しいのは重々承知であるが、しかし高音域では実に朗らかに奏でるのに低音域では別人のようにパッとしない。

このフルートへの不満は続くジョリヴェでも抱かざるを得なかった。この作品では民族的な楽想を全編に渡ってフルートが牽引するはずなのに、その肝心のフルートがくぐもっていてはそうもいかない。高音・強音・高速ならば実に切れ味の鋭いフルートなのだが、低音・弱音・緩徐になると音の輪郭線がぼやけてしまう。残念としか言いようがない。

アンコールのドビュッシーは今回の演奏者6人が揃ってのメヌエットであったが、これは佳品。束の間の音楽的散歩を楽しく締めくくれた。