神奈川フィルハーモニー管弦楽団 定期演奏会 みなとみらいシリーズ第328回|谷口昭弘

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 定期演奏会 みなとみらいシリーズ第328回

2017年4月8日 神奈川県立音楽堂
Reviewed by 谷口昭弘(Akihiro Taniguchi)
Photos by 藤本史昭/写真提供:神奈川フィルハーモニー管弦楽団

<演奏>
川瀬賢太郎指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

<曲目>
エサ=ペッカ・サロネン:フォーリン・ボディーズ
(休憩)
マーラー:交響曲第1番 二長調《巨人》

 

ステージいっぱいの楽団員による大編成のオーケストラは、新シーズンのオープニングにふさわしいということか。グランカッサとタムタムによる冒頭から、サロネンの《フォーリン・ボディーズ》の第1楽章はメカニカルなリズムと色彩豊かなオーケストレーションで圧倒する。前者はときおり軋むような不協和音につながり、後者はステージのあちこちから放たれるオスティナート音型に象徴される。幅広い音色パレットを駆使し、微妙な音のグラデーションが展開される第2楽章につづき、第3楽章は多層に重なり同時進行するオスティナート。明確な旋律はないものの都度都度付加される音色がフレーズ感覚を生み出していく。指揮者の川瀬は、エネルギーの源泉としてのオーケストラのダイナミズムを器用に操っていた。

マーラーの「第1」は、霧の中から泉が湧き出すようなオープニングから始まる。この静寂さはソナタ主部に入っても続いていく。どんよりとした重さはなく、軽やかに、そして細やかに。わざとらしく弾きすぎることもない。一方トランペットによる《さすらう若人の歌》第2曲の動機は抑制することなく繰り返して奏されるため、このモティーフが随所で反復されて出現していたことに驚かされた。この静寂はしかしながら提示部の終わり、再現部の手前、そして楽章全体の終わりの部分などでは見事に、そして巧妙に吹き飛ばされる。不思議な納得感を覚えた。
第1楽章の勢いを削ぐことなく間髪を入れずに始まった第2楽章は、節度を持ったグロテスクな音楽だが、その節度とグロテスクさといった両極端を表出する要素を様々な楽想から川瀬は引き出していく。切り替わりを明確にするためトリオは、これ見よがしの優美なワルツにしてもよいのだろうが、ここでも川瀬は第1楽章同様に、抑制された美しさを保ち、主部とのバランスをうまく保っていた。
第3楽章は短調による不条理な《フレール・ジャック》が一方にあり、もう一方には首席奏者たちで行われる酔狂なセクションや《さすらう若人の歌》の終曲を引用した透徹した部分がある。こういった交錯した世界観を醸し出すために、川瀬は各セクションの個性を大切にしつつ、全体として一つの個としての流れを貫いていた。
第4楽章は、一つの場面から次の場面への移行・転換が見事で、ソナタ形式などの既成の形式を別の原理が侵食している感覚を、時には丁寧に、時には強固に進めながら聴かせた。そしてホルン奏者を立たせての一気呵成に持っていくエンディングで会場を大いに湧かせていた。