名古屋フィルハーモニー交響楽団 創立50周年記念 東京特別演奏会|藤原聡

名古屋フィルハーモニー交響楽団 創立50周年記念 東京特別演奏会

2017年3月20日 東京オペラシティ コンサートホール
Reviewed by 藤原聡(Satoshi Fujiwara)
Photos by 林喜代種(Kiyotane Hayashi

指揮:小泉和裕

<曲目>
ブルックナー:交響曲第8番 ハ短調(ハース版)

 

名古屋フィルは、札幌交響楽団や群馬交響楽団のように毎年定期的に東京公演を行なっている訳ではない。記憶が定かでないが、このオケの東京来演も久しぶりのような気が。今回は2016年4月より同フィルの音楽監督に就任した小泉和裕がタクトを執る。曲目はブルックナーの『交響曲第8番』。このコンサートに先駆けて地元名古屋では同一プログラムによるコンサートが2回もたれており、それだけに本公演での完成度に大いに期待が高まるというもの。

最初に一言で演奏の印象を述べれば、「小細工なし、構築の美、王道中の王道的名演奏」とでもなろうか。とにかくテンポを動かさない。そして、細部の表情を綿密に彫琢したり、パートバランスを都度変化させて分析的な様相を見せる、という行き方ではなく、総合的な音響体としてオケを鳴らし切る。いささか愚直かつ生真面目過ぎる気がしない訳でもないが、余計なことをしない小泉の指揮だからこそ、楽曲の構築美、とでもいったものがうっすらと浮かび上がってくる。全曲のフォルムへ聴き手の意識が向かうような演奏。

反面、第2楽章のトリオなどはやや陰影に乏しいきらいもあり、アダージョも美しいのは間違いないが繊細さや微妙な表情の差異にはさほどこだわらずにやや大らかである。こういう箇所においてはより「突っ込んだ」表現を聴きたくなってしまう。弦楽器群の音色には更なる深みが必要と思う。コーダは淡白か。

この日の演奏で最も良かったのは終楽章であろう。名古屋フィルの技術力は大変に高く、特に金管群が素晴らしい。底力のあるホルン、パワーと膨らみある美しい音を兼備したトロンボーン。トランペットの輝かしさ。これらの響きのバランスも見事であり、それゆえ迫力があっても全くうるさくならない。力強い弦もそれにかき消されることなく拮抗する。しかしながら、小泉の「直球」な解釈をより説得力ある演奏に仕上げるためにはオケに力強さだけではなく主に弱奏でのニュアンスや強奏での深み、響きのコクや奥深さが必要かも知れない。こうなれば鬼に金棒だろう。繰り返すが、名古屋フィルの演奏は大変に見事だった。であるから、これはより高いレヴェルでの話ということにはなる。

筆者は関東住まいゆえ名古屋フィルをそう頻繁には聴けないが、しかし同フィルを、とりわけ小泉との組み合わせで定点観測的に聴いて行きたい、と思わせるに十分なコンサートであった。