新日本フィルハーモニー交響楽団 ルビー〈アフタヌーン コンサート・シリーズ〉第4回|藤原聡   

新日本フィルハーモニー交響楽団 ルビー〈アフタヌーン コンサート・シリーズ〉第4回

2017年2月3日 すみだトリフォニーホール
Reviewed by 藤原聡( Satoshi Fujiwara)
Photos by 林喜代種( Kiyotane Hayashi)撮影日:24

<演奏>
ユッカ=ペッカ・サラステ(指揮)
レイ・チェン(ヴァイオリン)

<曲目>
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64
(ソリストのアンコール)
パガニーニ:『24のカプリース』 op.1~第21番
チャイコフスキー:交響曲第4番 ヘ短調 op.36
(オーケストラのアンコール)
シベリウス:『悲しきワルツ』 op.44-1

 

サラステ、新日本フィル初登場。今回の2回のコンサートのためだけに来日したとのことだが、定期演奏会とは言え平日マチネ、かつオーケストラ側もさほど大きくサラステ登場を宣伝している気配もなかったように思え、それゆえ客入りを若干心配していたのだが、蓋を開けて見ればなかなかの埋まり具合(これがソワレであればさらに集客があったのでは。せっかくのサラステでやや残念ではある)。そして先に結論を書けば、この共演は大成功だったと思う。

まずはレイ・チェンを迎えてのメンデルスゾーン。筆者は録音も含めて今回がこのヴァイオリニストの初聴きであったが、当日のプログラムを見ると「鈴木メソッドでヴァイオリンを始める」とあり、悪しき先入観かも知れない、と思いながらも「正確・清潔で良くも悪くも無色透明な音楽をやるのだろうか?」などと勘繰っていたが、まるで違った。非常に押し出しの強い演奏である。いささかヴィブラートを効かせ過ぎか…と思う間もなく、そのボリューミーかつ素晴らしい美音による大柄な表現に無条件にノックアウトされてしまう。あくまで開放的な表現であり、場合によっては「雑」ですらあり(必ずしも否定的な意味ではない)、それは第2楽章でも同様である。先日のパリ管弦楽団来日公演で耳にしたジョシュア・ベルによる神経質で鋭利な演奏とは真逆、と言ってもよい。より細やかで抒情的な演奏を好む向きは好まない演奏かも知れぬが、一歩間違うと退屈なものになりがちなこの曲をフレッシュに聴かせる才能は大したものである。
アンコールにはパガニーニの『24のカプリース』から第21番。メンデルスゾーンも良かったとは言え、やはりこういうヴィルトゥオジティを前面に出した曲においてレイ・チェンの本領はさらに発揮される。

後半はチャイコフスキーの『交響曲第4番』。冒頭の決然とした金管からして居住まいを正されるようだ。全体にテンポは速めで剛直、造形は引き締まって筋肉質、とでも形容できる。陰鬱な表情はなく、標題音楽的な要素を感じさせる、と言うよりは純音楽的であるが、しかしながら全くそこに不満を感じさせない。サラステのドライヴぶりが圧倒的に優れているためだ。初客演でこれだけのコントロールが出来ることが凄い。特に印象深かったのが中間楽章、殊に後者(速い!)での音響バランスの構築で、非常に細に穿っている。フレージングや強弱の微細な変化によって、今まで聴いたことのないような「ピチカート・オスティナート」となっていたのが痛快。各パート毎の浮き沈みの妙(例えば3小節目での2nd vnのC音のアクセントによる「浮き出し」)。作曲者がフォン・メック夫人宛の手紙に記した「気まぐれなアラベスク」ぶりをたっぷりと堪能させてくれたのだ。終楽章の段階的な音響構築も非常に考え抜かれており、ただの爆演とは程遠いが、しかしその整然とした爆発ぶりが見事、の一語。好不調の波が激しい新日本フィルのここでの好調ぶりはどうだ。実に頼もしい。

初客演かつマチネだからか、定期演奏会では珍しいオーケストラ・アンコールにシベリウスの『悲しきワルツ』。ここではその幽玄な表情に魅せられることしきり。サラステにはぜひ新日本フィルに再登壇して欲しいところである。