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Back Stage|「新音楽監督・上岡敏之とともに刻み始めた、新たな歴史のはじまり。」|湯川裕子   

(C)K.Miura 演奏会風景(すみだトリフォニーホールにて)

「新音楽監督・上岡敏之とともに刻み始めた、新たな歴史のはじまり。」

text by 湯川裕子(Yuko Yukawa) 

新日本フィルハーモニー交響楽団は、2016年9月に第4代音楽監督にドイツの歌劇場で研鑽を積んだ上岡敏之が就任、あらたなスタートを切りました。新体制で迎えた2017年は、オケの45周年であり、また、本拠地のすみだトリフォニーホールが20周年となる、記念年です。

<トリフォニーホールとともに歩んできた20年>
新日本フィルは、1972年、「一緒に音楽をやろう!」と、指揮者・小澤征爾のもと楽員による自主運営のオーケストラとして創立。以来、優れた企画と充実した演奏で好評を得てきました。
1997年より墨田区に移転し、同年オープンのすみだトリフォニーホールを活動の本拠地とし、日常の練習と公演を行うという日本初の本格的フランチャイズを導入しました。小澤征爾桂冠名誉指揮者も大絶賛するトリフォニーという優れたホールで、本番と同環境でリハーサルを積み重ねることができるという環境がいかに恵まれているかは語り尽くせません。
同時に、定期演奏会や特別演奏会のほか、地元の学校体育館や小中学校の音楽授業、各種施設を訪れるなど、地域に根ざした演奏活動も精力的に行っています。墨田区の成人式でも毎年演奏させていただいているので、学生時代に音楽体験としてオケに触れて下さった方に、お祝いという形で二十歳の節目ににまた新日本フィルの演奏を聴いていただけるというのは、大変感慨深いことです。

<あらたな音楽監督ともに奏でる、反・予定調和の音楽>

(C)K.Miura 演奏会風景/上岡敏之(すみだトリフォニーホールにて)

長い期間にわたり音楽監督というポジションの不在が続いていた当団ですが、2016年9月からの新シーズンより、指揮者の上岡敏之氏が、音楽監督に就任しました。これまでのキャリアのほとんどがドイツに置かれている上岡監督。もちろん日本でも数多く客演をしてきていますが、お客様にとっては、いわば逆輸入のような感覚が強いのではないでしょうか。 そして9月の就任披露公演から、8回の演奏会を経ていますが、まだまだ様子見をされているお客様もいらっしゃることではないかと思います。そんな皆様にこそ、今、この時期にしか見られないもの=あたらしい「新日本フィルの音楽」が形成されていく過程を、一緒に体験していきませんか?とお誘いしたいです。
背景もシステムも一人ひとりの国民性も異なる国で活躍してきた上岡監督によると、前述の通り、すみだの町と根付いた音楽活動をしてきた新日本フィルは、地元に密着し、身近なお客さんと音楽というコミュニケーション手段をもって、ともに成長してゆけるという点で、東京のなかでも「最もドイツ(ヨーロッパ)での環境に近い」という認識を持っているそうです。
そこで、まずは「日本的な、外枠をつくって当てはめていくやりかたや、自己主張を抑えた“謙譲の美徳”のようなものを取っ払い、それぞれの個性を引き出す作業」に意識を置いていると言います。「オーケストラは、あくまでも人間の集団。枠に当てはめるのではなく、それぞれの演奏者が自分の音を正直に出せる環境を作り、そうした個々の内側から出てくるものをまとめあげることが、自分の仕事。そのために楽譜というものがあります。その点では、楽員の皆がとてもオープンな気持ちで、楽譜を一緒に読み、そこに書かれていることを精一杯表現してくれている。皆でひとつのものを作る時間を共有し、丁寧に音楽を作っていける状況にあります」とのこと。

(C)K.Miura  リハーサル風景(すみだトリフォニーホールにて)

楽団とそこから生み出される音楽に対しても、楽譜を通して作曲家と楽曲に向き合う姿勢も、上岡監督は“真摯”そのものです。愚直なまでに、と付け加えても良いかもしれません。そんな彼の口から繰り返し出てくる言葉は、「楽譜に忠実に」。そして「楽譜はうそをつかない」とも。これまでの演奏習慣に引っ張られることなく、楽譜を読み解く作業を大切にすることで、日本のお客様が聴き慣れたものとは、おのずと変わってきてしまうだろうと言います。それは、言うなれば“反・予定調和の音楽”。だからこそ、耳になじみのある表現とは異なるものが聴こえてきたときに、その期待を越える感動を味わっていただけるようになることが目標です。同時に、このオケとこのシェフだからこそ生まれた表現をとおして、作曲家と楽曲への最大限の敬意というものを感じ取っていただくことができれば幸いです。

<今しか観られない!新時代の胎動を楽しんで>

(C)K.Miura 演奏会風景(すみだトリフォニーホールにて)

2017年3月からは、本シーズンの後半戦へ突入。定期演奏会には、上岡音楽監督が毎月連続で登場します。3月17日(金)19時、18日(土)14時より本拠地トリフォニーホールで開催の「トパーズ<トリフォニー・シリーズ>」では、当団首席ファゴット奏者の河村幹子をソリストに迎えて、モーツァルトの『ファゴット協奏曲』 変ロ長調 K.191を演奏します。 抜擢された河村も、「自宅の次、下手したらそれよりも長い時間を過ごしているトリフォニーホールという場所で、ファミリーとの演奏会。もちろんお客様も、定期演奏会に来てくださる、家族の一員のような方がた。ですから、ホームコンサートのような感覚で、アットホームな、暖かい気持ちでお客さまに楽しんでいただきたい」とのこと。今後も音楽監督のもと、楽員たちの魅力がフィーチャーされる演奏をお届けする機会があることと思います。
その後、4月以降も世界の才能あふれるソリストたちとともにお届けします。オイストラフ、メニューイン以来の才能として知られるヴァレリー・ソコロフとともにお送りするブラームスの『ヴァイオリン協奏曲』ニ長調 op.77をはじめとして、5月には、ワーグナー歌手としてドイツオペラ界で注目されるカトリン・ゲーリングが初来日。ドイツで彼女と共演している上岡監督が太鼓判を押す逸材とともにワーグナーの『ヴェーゼンドンク歌曲集』女声のための5つの詩をお送りします。
そして、今シーズンからの目玉のひとつである、「リクエスト・コンサート」!2017年2月末までお客様から募集していたリクエスト曲のなかから、上岡監督がセレクトしたプログラムを演奏します。曲目の発表は4月以降の予定。立ち上げの年の締めくくりに、こちらもどうぞお楽しみに。

これからどんどん、リアルタイムで「新日本フィルにしかない音楽」へと変貌してゆく姿、そしてオケが成長するべく邁進しております姿を、暖かく、ときに厳しく見守っていただければ幸いです。

湯川裕子(新日本フィルハーモニー交響楽団 広報)


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公演情報
新日本フィル定期演奏会
第570回トパーズ<トリフォニー・シリーズ> 3月17日(金)19時/18日(土)14時 会場:すみだトリフォニーホール
第571回ジェイド<サントリーホール・シリーズ>3月25日(土)14時 会場:Bunkamuraオーチャードホール
第6回トパーズ 4月7日(金)19時/8日(土)14時 会場:すみだトリフォニーホール
第572回ルビー<アフタヌーン コンサート・シリーズ>4月14日(金)・15日(土)各日14時 会場:すみだトリフォニーホール
第573回 ジェイド5月11日(木)19時 会場:東京オペラシティ コンサートホール
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