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撮っておきの音楽家たち|チョン・キョンファ|林喜代種

チョン・キョンファ(ヴァイオリン奏者)

2017128日 サントリーホール
photos & text by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)

ヴァイオリニストのチョン・キョンファがJ.S.バッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」と「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ」をそれぞれ1曲ずつ番号順に、2回の休憩を挟んで全6曲を演奏した。会場はヴァイオリンを持った若い人や韓国の人らしい人で一杯だった。
厳しい表情で演奏するかと思うと、一瞬満面に笑みを浮かべ弾き進む。没頭する曲のなかを変幻自在に往来する。自分を身体全体で表現しているように思われた。無我の境地か。
中でも「無伴奏パルティータ第2番」は聴く者をグイグイと引きよせ魅力に満ちた演奏を聴かせた。J.S.バッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」と「パルティ-タ」は13歳の時から弾き続けている曲である。
6歳でヴァイオリンを学ぶ。1961年からジュリアード音楽院のイヴァン・ガラミアンのもとで学び始めて2016年で55年経つ。ヨーロッパで巨匠シゲティにも師事。
その成果として15年振りのスタジオ録音のCDが2016年10月にリリースされた(ワーナー・クラシックス)。
68歳でJ.S.バッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」と「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ」の全曲録音は、世界最高齢ヴァイオリニスト記録となる。これまではイダ・ヘンデルの67歳録音が世界記録だった。
これらの全曲演奏は昨年5月に北京で行われた。日本公演の後は今年の5月にロンドンのバービカンセンター、ニューヨークのカーネギーホールと続いて演奏する。
チョン・キョンファは音楽一家に生まれる。弟は指揮者・ピアニストのチョン・ミョンフン、チェリストのチョン・ミョンファは姉である。チョン・トリオとして2004年8月には東京で演奏会。2005年9月、指の故障で演奏を中断する。2011年12月に6年間のブランクを経てカムバックする。2013年6月日本公演を、1998年以来15年振りに行う。2015年4月再来日で強烈で印象的な演奏。
インタビューで「年とともに何かが失われていくことに絶望してはいけない。エネルギーをもって自分の人生を選び取って行くことが大切」と答えている。