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ウィリアム・クリスティ&レザール・フロリサン|藤堂清 

%e3%83%95%e3%83%ad%e3%83%aa%e3%82%b5%e3%83%b3lウィリアム・クリスティ&レザール・フロリサン 
<イタリアの庭で~愛のアカデミア>

20161013日 サントリーホール
Reviewed by 藤堂 清(Kiyoshi Tohdoh
Photos by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)

<演奏>
指揮:ウィリアム・クリスティ
ソプラノ:ルシア・マルティン=カルトン
メゾ・ソプラノ:レア・デザンドレ
カウンターテナー:カルロ・ヴィストリ
テノール:ニコラス・スコット
バリトン:レナート・ドルチーニ
バス:ジョン・テイラー・ウォード
オーケストラ:レザール・フロリサン

<曲目>
ストラデッラ: カンタータ《アマンティ・オーラ》から
ヘンデル: オペラ《オルランド》/オラトリオ《時と真理の勝利》から
ヴィヴァルディ: オペラ《オルランド・フリオーソ》/《離宮のオットー大帝》から
チマローザ: オペラ《みじめな劇場支配人》から
サッロ: オペラ《カナリー劇場支配人》から
モーツァルト: バスとオーケストラのためのアリエッタ《御手に口づけすれば》
ハイドン: オペラ《歌姫》/《騎士オルランド》から、他
プログラム詳細
—————–(アンコール)———————–
ロッシーニ:オペラ《ラ・チェネレントラ(シンデレラ)》から 第2幕の6重唱<あなたですね>
ストラデッラ:カンタータ《ねえ、恋人さんたち(愛のアカデミア)》から マドリガーレ<愛の神は巧みな師匠だ>
ジャキェス・デ・ヴェルト:《5・6・7声のマドリガーレ集》第5巻から マドリガーレ<もはや涙ではない>

ウィリアム・クリスティとレザール・フロリサンの来日公演、ラモーの《レ・パラダン-遍歴騎士》をBunkamuraで行って以来で、ちょうど10年ぶり。今回のメンバーは、クリスティとレザール・フロリサンが若手歌手育成のために行っているプロジェクト《声の庭》に参加している6名。すでに世界各地で演奏しているが、この日がアジア・ツァーの初日、この後、ソウル、上海、マカオで公演が行われた。

プログラムは、前後半それぞれ複数の作曲家の作品を並べ、全体としてストーリー性を持たせたもの。
第1部は、アレッサンドロ・ストラデッラのカンタータ《ねえ、恋人さんたち(愛のアカデミア)》を中心に、バンキエーリ、ヘンデル、ヴィヴァルディといったその前後の時代の曲を交え、「愛の神」をたたえる。舞台前面の台には、「愛の弓矢」が置かれ、それを受け渡すことでストーリーが展開する。
第2部は、ハイドンの歌劇《歌姫》からの抜粋を中心に、チマローザ、ポルポラ、モーツァルトの曲をはさみ、歌手のわがままに翻弄される作曲家、劇場支配人を描く。休憩中から舞台中央で作曲家が楽譜を書いている。それを出てきた歌手たちに渡すが、あまり良い顔はされない。劇場支配人も関わり、上演上のゴタゴタが繰りひろげられる。
こういった曲の構成、バロック期に行われていたパスティッチョ・オペラの現代版といえるだろう。次々とくりだされる名曲に、作曲家の違い、作曲時期の違いを超え、一まとまりの作品として楽しんだ。
セミ・ステージング演出は、ソプラノのソフィー・デインマンが担当。カーテン・コールでは呼び出されていた(来ているのなら、ソロ・リサイタルをやってくれればよいのに・・・・)。

歌手は、ソプラノ、メゾ・ソプラノ、カウンターテナー、テノール、バリトン、バス各1名、さまざまな重唱も可能な編成。20代前半から30前後までの若手で、クリスティが選んだだけあり、基礎的なテクニックはもちろん、表現力もしっかりしている。
レザール・フロリサンのメンバーもずいぶん若い人が多い。着実に世代交代を図っているようだ。
クリスティの下から、多くの人が独立し、新たなバロック・グループが生まれ、拡がっている。彼自身も、今回率いてきたような育成システムを続け、若手の成長を手助けしている。これを聴いて古楽を志す人が増えればと思う。

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