プロムナード|コンサート通い~病気と付き合いながら|藤堂清
コンサート通い~病気と付き合いながら
Text by 藤堂清 (Kiyoshi Tohdoh)
間質性肺炎という確定診断を受け1年以上が経過した。治療法はなく、徐々に悪化し、いずれは呼吸困難で死にいたる病という認識はあったが、多少の時間的余裕はあるだろうと高を括っていた。が、思っていたより早く変化が訪れた。9月の半ばから、少し動くと息が上がるようになり、これはマズイと。決定的だったのは、コンサートに行こうと歩き出したとき、なんとしても足が前に出ず、なかなか進まない、それでも息が切れてしまう。最寄り駅まで半分くらいのところで、これではとても会場まで行きつけないと自己判断せざるを得なかった。チケットを紙屑にするのもくやしかったし、なにより楽しみにしていた演奏会を諦めるのはつらかった。家に戻ってしばらくすると呼吸も落ち着き、なんでもなかったようになり、残念な気持ちはより大きくなった。
次の診察日にその状況を伝えたところ、在宅酸素療法 (HOT) に移行した方がよいとの判断が下る。HOTとは、医師の処方に基づき、自宅で酸素吸入を行う治療である。当面は労作時に2リットル/分の酸素を吸入するというのが処方。歩いたり、トイレに行ったり、入浴したり、あるいは食べたりするときに利用する。特に階段の昇り降りは負荷が高いので注意が必要とのこと。家の中では、オキシジェンステーションという機器から供給される酸素を使うが、外に出るときは、酸素ボンベを引っ張っていく。いささか不自由だが、まあ仕方がない。おかげで行動範囲は拡がった。
なんとかコンサートに行く、というのが次なる目標となる。家から最寄り駅くらいまでなら歩けるだろうと思うのだが、同居人が無理だと言い張る。仕方なく駅まではタクシーで行くことに。駅の中は幸いバリアフリーになっており、問題なく電車に乗れた。
こうなってからの最初のコンサートはTOPPANホール。最寄り駅である江戸川橋からも少し距離があるので、やはりタクシーのお世話になる。ホールに直接着けることができるので、問題なく到着。コンサートで音楽を聴いている間は、安静時ということで酸素吸入が不要なので、いつもと同様に楽しむことができた。ただ酸素ボンベを置く場所を考えると通路際あるいは前が通路といった席が望ましいことは分かった。この日用意していた席は中央通路の後ろだったので幸いだった。このホール、前の方の席はゆるい傾斜でくだりの階段となっている。一方後方は少し急なのぼり階段でこちらは避けたいところだ。階段を使わずに済むあるいはそれが軽微な範囲が広いことはありがたいことだ。
次に向かったのはNHKホール。渋谷駅までは電車で行けるが、そこからが難問。タクシーで近くに行くといっても、ホールの入口から200m位のところまでしか入れない。その距離は歩くことが必須となる。酸素ボンベを引きずりながら行くのである。それを乗り越えてホールに入り、会場のフロアに行くには今度は階段を使わなければならない。1階席には20段以上の階段を降りる必要が、2階席には数段ほど上がる必要がある。各フロア間にはエレベーターがあるので、より階段が少ない方法で移動する。この日の席は1階だったので、2階に上がって、エレベーターで降りる。少々面倒だが、まあ仕方がない。とはいえ、席に着くためには別の階段をのぼり、またくだっていくことになる。もう一つの問題はトイレである。開演前、休憩時に長い行列ができる。下手をすると行列に並ぶために延々と歩かなければならない。それを避けるためには、早めに出て、列が短い間に並ぶことが必須。この日はうまく実行できた。
次のホールは東京オペラシティ。ここに行くためには乗り換えが必要となる。方法は複数あるが、どれもそれなりに人混みを歩くことになる。同居人の強い反対にあい、やむをえず、ホールまでタクシーを使う。できれば、公共交通機関をつかった経路で行きたいものだが・・・。このホール、タクシーの降車位置から少し距離はあるが、エスカレーターを使えば、上下の移動なしで行きつくことができる。また、ホール内の移動もゆるやかな斜面があり、ほとんど階段の昇り降りが必要ない。なかなかありがたい。
日生劇場にも行った。千代田線の日比谷の駅から近いこと、乗り換えが比較的容易ということで、地下鉄を乗り継いで向かった。地上に出るのに少し迷ったが、なんとか解決し、ホールまでの平らな道を歩いた。ホールに着くと、私の姿をみて、スタッフがサポートしてくれた。座席を確認し、近いフロアまでエレベーターで連れて行ってくれ、席までの行きやすい道を教えてくれる。これは本当に助かった。
他のホールの場合どうなるか、シミュレーションしてみるが、むずかしそうなのは東京文化会館、どこの席でも階段を避けることは出来そうにない。またトイレに行くにも階段の昇り降りが必要。だからといってこのホールで行われるコンサートをあきらめたくはない。なんとかしたいものだ。
階段の昇り降りなど、今はまあこなしているが、それを含め、この状態、いつまで続けられるだろうか。コンサート通いの幅も拡げたいのだが。
(2026/1/15)