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アンネ・ゾフィー・フォン・オッター クリスマス・ソングズ |藤堂清

アンネ・ゾフィー・フォン・オッター クリスマス・ソングズ
Anne Sofie von Otter Christmas Songs

2025年12月8日 東京オペラシティ コンサートホール
2025/12/8 Tokyo Opera City Concert Hall
Reviewed by 藤堂清 (Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 大窪道治/写真提供:東京オペラシティ文化財団

<出演 >        →Foreign Languages
アンネ・ゾフィー・フォン・オッター(メゾソプラノ)●
ファビアン・フレドリクソン(ギター)★
クリストフ・ベルナー(ピアノ)◆

<曲目>
シューベルト:冬の夕べ D938 ● ◆
ヴォルフ:ああ、幼な児の瞳は ● ◆
ヴォルフ:棕櫚のこずえにただよう天使よ ● ◆
ブラームス:《6つの小品》op.118から〈ロマンス〉◆
ブラームス:《5つの歌曲》op.49から〈子守歌〉● ★ ◆
シューベルト:冬の歌 D401 ● ★
コルネリウス:《クリスマスの歌》op.8から
  〈シメオン」● ◆
  〈聖なる三博士」● ◆
シューベルト:《楽興の時》D780から 第3曲 ヘ短調 ◆
フォーレ:ノエル op.43-1 ● ★ ◆
ドビュッシー:もう家のない子たちのクリスマス ● ◆
ラヴェル:おもちゃのクリスマス ● ◆
ペルト:アリーナのために ◆
ペルト:クリスマスの子守歌 ● ★ ◆
レーガー:聖母マリアの子守歌 op.76-52 ● ★ ◆
————————–(休憩)————————–
ノルドクヴィスト:クリスマス、輝かしいクリスマス ● ◆
シベリウス:《5つのクリスマスの歌》op.1から
  〈輝きも、金も、華やかさも与えないで〉● ◆
  〈いまクリスマスがやってくる〉● ★ ◆
イザーク:今や全地は安らかに憩い ● ★
グルーバー:きよしこの夜 ● ★ ◆
パーセル:《アーサー王》から〈あなたは何の技を(コールド・ソング)〉● ★ ◆
J.S.バッハ:《フランス組曲第5番》ト長調BWV816から〈サラバンド〉◆
スティング:You Only Cross My Mind in Winter ● ★
B.アンダーソン:Little things ● ★
I.バーリン:恋に寒さを忘れて ● ★ ◆
W.ケント:クリスマスを我が家で ● ★ ◆
モレウス:コッポンゲン ● ★ ◆
———————–(アンコール)———————–
R.セクスミス:Maybe this Christmas ● ★ ◆
H.シュミット:ミュージカル《ファンタスティックス》より
    〈思い出の9月〉(Try to Remember)● ★ ◆

 

今年70歳をむかえたアンネ・ゾフィー・フォン・オッター、今回の来日では、12月に4都市(横浜、高崎、東京、兵庫)でクリスマス・ソングズというタイトルのリサイタルを行った。この日はその3回目である。彼女の前回の来日はもう10年前、カミラ・ティリングとのデュオリサイタルであった。そのとき「彼女らがあまり時をあけずに来日してくれることを期待したい」と書いたが、結局その期待は実らず10年が経ってしまった。
この日のプログラムはキリストの生誕あるいはクリスマスの季節をテーマとするもの。前半は、シューベルト、ヴォルフ、ブラームス、コルネリウス、レーガーのドイツ歌曲、フォーレ、ドビュッシー、ラヴェルのフランス歌曲に、ペルトの歌曲で構成された。後半は、ノルドクヴィスト、シベリウス。イザークとスウェーデン語の歌で始まり、ドイツ語でグルーバーの〈きよしこの夜〉、この日唯一のオペラ作品、パーセルの《アーサー王》から。そしてピアノ独奏で、J.S.バッハの《フランス組曲第5番》から「サラバンド」を挟んで、その後はマイクを持ってポップス系を歌っていく。スティング、ABBA、バーリン、ケント、モレウスといった具合。
クリスマスといっても日本でのようなお祭り騒ぎとは無縁、しっとりとした曲調のものが多い。ドビュッシーの〈もう家のない子たちのクリスマス〉のように戦禍のなかでのクリスマスを歌った曲もある。オッターの歌唱も張り上げるところは少なく、淡々と紡いでいく。その分、ラヴェルの〈おもちゃのクリスマス 〉の最後で「ノエル、ノエル、ノエル」と強く歌い上げたのは印象に残った。パーセルの《アーサー王》から〈あなたは何の技を(コールド・ソング)〉、これはいかにもオペラという歌い方、ダイナミクスを大きくとり、強調するところを明確にしている。
10年前、60歳の時と較べると、声自体のつやは多少落ちているように感じられるが、音楽的な表現の幅は変わりがない。スーッと伸び会場を埋める響きの気持ちよさ。言葉を大切にした歌い方(エストニア語まではわからないが)。曲ごとに変える表情の多彩さ。
ファビアン・フレドリクソンのギター、クリストフ・ベルナーのピアノとの共演。歌曲では多くがピアノとの演奏となるが、ギターをまじえた編曲もあり、色合いの変化を楽しませてくれた。ベルナーのピアノは、オッターが共演してきたフォシュベリ等と較べると、マイルドなもので、もう少し踏み込んでくれればと思わなくもないが、安定しているとはいえるだろう。フレドリクソンのギターはアットホームな感じで、この日のプログラムに合致していた。
これが、彼女の最後の日本ツアーということだが、まったく衰えは見せずに、多様な曲を聴かせてくれた。まだまだ聴きたかったと惜しまれつつ去るのが彼女らしい。

(2026/1/15)

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<Performers>
Anne Sofie von Otter (Mez), Fabian Fredriksson (Gt), Christoph Berner (Pf)

<Program>
Schubert: Der Winterabend, D938
Wolf: Ach, des Knaben Augen
Wolf: Die ihr schwebet um diese Palmen
Brahms: “Romanze” from 6 Stücke, op.118 (piano solo)
Brahms: “Wiegenlied” from 5 Lieder, op.49
Schubert: Winterlied, D401
Cornelius: “Simeon” from Weihnachtslieder, op.8
Cornelius: “Die Könige” from Weihnachtslieder, op.8
Schubert: Moments musicaux, D780: No.3 in F minor (piano solo)
Fauré: Noël, op.43-1
Debussy: Noël des enfants qui n’ont plus de maison
Ravel: Noël des jouets
Pärt: Für Alina (Piano solo)
Pärt: Christmas Lullaby
Reger: Mariä Wiegenlied, op.76-52
————————–(Intermission)————————–
Nordqvist: Jul, jul, strålande jul
Sibelius: “Giv mig ej glans, ej guld, ej prakt” from 5 Julsånger, op.1
Sibelius: “Nu så kommer julen” from 5 Julsånger, op.1
Isaac: Nu vilar hela jorden (All the earth now rests in peace)
Gruber: Stille Nacht, heilige nacht
Purcell: “What power art thou ? (The Cold Song)” from King Arthur
J.S.Bach: “Sarabande” from French Suite No.5 in G major, BWV816 (piano solo)
J.S.Bach/Sting&Sadin: You Only Cross My Mind in Winter
B.Andersson: Little things
I.Berlin: I’ve got my love to keep me warm
W.Kent: I’ll be home for Christmas
P-E.Moraeus: Koppången
—————————–(Encore)—————————–
R.Sexsmith: Maybe this Christmas
H.Schmidt: “Try to Remember” from The Fantasticks