東京二期会オペラ劇場 ヘンツェ:《午後の曳航》|藤堂清
東京二期会オペラ劇場
NISSAY OPERA 2023提携
ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ:《午後の曳航》オペラ全2幕(2005年改訂ドイツ語版 日本初演)
日本語字幕付原語(ドイツ語)上演
2023年11月24日 日生劇場
2023/11/24 Nissay Theatre
Reviewed by 藤堂清 (Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 寺司正彦/写真提供:公益財団法人東京二期会
〈スタッフ〉 →Foreign Language
指揮:アレホ・ペレス
演出:宮本亞門
舞台美術:クリストフ・ヘッツァー
照明:喜多村 貴
映像:バルテック・マシス
振付:avecoo
演出助手:澤田康子
舞台監督:幸泉浩司、蒲倉潤
公演監督:大島幾雄
公演監督補:佐々木典子
〈キャスト〉
黒田房子:北原瑠美
登/3号:新堂由暁
塚崎竜二:小森輝彦
1号:加耒 徹
2号:眞弓創一
4号:髙田智士
5号:水島正樹
航海士:河野大樹
ダンサー:池上たっくん、石山一輝、岩下貴史、後藤裕磨
澤村 亮、高間淳平、巽imustat、中内天摩
中島祐太、パトリック・アキラ、丸山岳人、山本紫遠
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
ハンス・ヴェルナー・ヘンツェはドイツの作曲家、1926年に生まれ2012年に亡くなっている。このオペラはドイツ語のテクストの《裏切られた海》というタイトルで1990年に初演、2003年に日本語版として上演する際に改訂され《午後の曳航》という三島由紀夫の原作の名にもどされた。その後テクストをドイツ語にもどした改訂版として出版、今回はその日本初演となる。
主人公の登は13歳の少年グループの中で3号と呼ばれている。船の中を案内してもらったことをきっかけに、彼と未亡人の母房子との生活に航海士竜二が入り込んでくる。登は、当初竜二を英雄視していたが、房子と結婚し海を離れる姿に失望。さらに寛大な父親として振る舞うことに反発、グループで自分たちの価値観に反する彼を殺害する。なんとも救いのないストーリー。
舞台は2幕14場の構成、場面間は短い転換音楽でつながれており、音楽が途切れることはない。演出面でそれを可能にしているのは舞台転換。簡易なセットをダンサーたちが速やかに動かしていく。場面もそれぞれで完結しており、ストーリーは分かりやすい。ダンサーは登や少年たちの気持ちの変化を映し出す役割もあり、たびたび舞台に登場した。
演出は各場面がどういった状況なのかすぐにつかめる点ですぐれていた。背景の映像、照明も理解を助けてくれる。
演奏面でまず挙げたいのは、アレホ・ペレスの指揮である。ヘンツェの音楽は複雑な音も多いが、言葉が聴きとりやすいという点も特徴としてあげられる。そのバランスを実にみごとにコントロールしていた。新日本フィルハーモニー交響楽団の充実した響きも聴きもの。
歌手では、1号の加耒徹の切れ味鋭い歌唱が印象的。登場場面は多くないが、演技ともどもその場をキュッと引き締める。言葉の美しさも際立っていた。房子は母親であり若い女性でありと多面的な役割、北原瑠美がしっかりとこなした。登を歌う新堂由暁、気持ちの変化の大きな役を丁寧に歌い上げた。竜二の小森輝彦はベテランの味というべきか。
演奏機会が多くはないこのオペラ、十全な形での公演となった。
(2023/12/15)
<Staff>
Conductor: Alejo Pérez
Stage Director: Amon Miyamoto
Set and Costume Designer: Christof Hetzer
Lighting Designer: Takashi Kitamura
Video Designer: Bartek Macias
Choreographer: avecoo
Stage Managers: Hiroshi Koizumi, Jun Kabakura
Production Director: Ikuo Oshima
Associate Production Director: Noriko Sasaki
<Cast>
Fusako Kuroda: Rumi Kitahara
Noboru: Yoshiaki Shindo
Ryuji Tsukazaki: Teruhiko Komori
Nummer Eins: Toru Kaku
Nummer Zwei: Soichi Mayumi
Nummer Vier: Satoshi Takada
Nummer Fünf: Masaki Mizushima
Schiffsmaat: Hiroki Kono
Dancers: Ikegami Takkun, Kazuki Ishiyama, Takashi Iwashita, Yuma Goto,
Ryo Sawamura, Junpei Takama, Tatsumi imustat, Temma Nakauchi,
Yuta Nakashima, Patrick Akira, Gakuto Maruyama, Shion Yamamoto
Orchestra: New Japan Philharmonic