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BONA MUSICAE MEMBRA Abend Musik vol.3|大河内文恵

BONA MUSICAE MEMBRA Abend Musik vol.3

2023年7月28日 日本福音ルーテル東京教会
2023/7/28 Tokyo Lutheran Church
Reviewed by 大河内文恵 (Fumie Okouchi)
写真提供:BONA MUSICAE MEMBRA事務局

<出演>        →foreign language
ソプラノ:中山美紀、望月万里亜
アルト:久保法之
テノール:中嶋克彦
バス:渡辺祐介

ヴァイオリン:荒木優子、佐々木梨花
ヴィオラ:本田梨紗、伴野剛
ヴィオラ・ダ・ガンバ:福沢宏
ヴィオローネ:布施砂丘彦
テオルボ:瀧井レオナルド
オルガン:荒井牧子

<曲目>
ブクステフーデ:主よ、王をお救いください(BuxWV 18)
        イエスよ、私の喜びよ (BuxWV 59)
        イエスよ、私に喜びを教えてくださる師よ (BuxWV 61)
        心よ、天に向かって舞い上がれ(BuxWV 96)

~休憩~

ブクステフーデ:私の心は準備が出来ています、神よ(BuxWV 73)
        ソナタ ト長調 (BuxWV 271)
        主よ、私はあなたを心から愛しています (BuxWV 41)
~アンコール~
C. グラウプナー:備えて怠るなGWV1149/28 より第一曲目コラール 備えて怠るな

 

BONA MUSICAE MEMBRAの第4回定期公演に行った。回を追う毎に進化し続ける彼らを見届けることができる幸せを感じた。そう、幸せ。彼らの公演には舞台上にも客席にも愛が溢れている。だから、演奏中も終わってからの帰り道も心の奥がほっこりあたたかい。

第1回の公演では、息が合うまで時間がかかったが、今回は1曲目の途中から合ってきて、1曲目が終わる頃にはぴったり合っていた。2曲目では、天から降ってくるような柔らかい久保の声がイエス、イエスと1行ごとに呼びかけ、喜びを列挙していく歌詞にリンクしていた。

続く《イエスよ、私に喜びを教えてくださる師よ》は冒頭の器楽の半音的な下行に心が持っていかれる。この曲は魂とイエスとが交互に歌うのだが、魂を担当した望月・中山・中嶋、イエスを歌った渡辺、それぞれの声の美しさと巧さがいかにもドイツ的な器楽と合わさって、ブクステフーデの音楽が沁みる。

前半の最後は《心よ、天に向かって舞い上がれ》。節ごとに歌うメンバーや伴奏楽器が変わっていく。最後の方のテオルボのソロがいい仕事をしている。全員で歌う部分を聴きながら、アンサンブルがいいなと思った。声楽のアンサンブルの場合、その中に一人いるとアンサンブルがうまくいくという達人が時々いるという話を聞いたことがあるが、彼らの場合、アンサンブルの達人ばかりが集まっているのだから、うまくて当然だなと妙に納得した。

後半1曲目は、バスのソロ。曲目解説(加藤拓未)にあるように、歌詞の内容と音型が合うように工夫されている曲。それだけでなく、途中でリズムが変わる部分があり、聴きどころが多い。後半2曲目に器楽曲が演奏された。このような演奏会の場合、器楽奏者は基本的には伴奏を担当するため、せっかく上手い人たちが集まっても、なかなかそれを披露できないのだが、このように器楽曲があることで、隠れがちなパートに光が当たる。とくに第2ヴァイオリンとテオルボとの部分、最後のテオルボ部分が絶品だった。

最後の《主よ、私はあなたを心から愛しています》はブクステフーデらしさ全開の曲。そういえば、今日のこれまでの曲はいかにもブクステフーデという曲ではなく、それぞれ異なる特徴を持っていた。ソロと全員の合唱が組み合わさってできているこの曲は、各々が優秀なソリストであり、且つアンサンブル力が高い彼らの利点を最も活かす曲目である。ブクステフーデらしさと同時に、ブクステフーデの幅広さも1つの演奏会で同時に聴かせるというプログラミングも彼らの進化のあらわれである。

今回、休憩後にちょっとしたハプニングがあった。演奏を始めようとしたら、奏者の1人が楽譜を持ってきていないことに気づいて、楽屋へ取りに戻ったのだ。客席がざわざわする中、ソリストとして真ん中に立っていた渡辺が、その奏者をフォローしたり、過去の舞台で楽譜を忘れた人のエピソードを紹介して爆笑の渦を巻き起こした。通常なら白けた時間になるはずの待ち時間が楽しい時間となり、楽譜を持って奏者が戻ってくると大きな拍手で沸いた。

こういう場繋ぎが上手い渡辺がソリストだったという幸運もあるかもしれないが、ハプニングをも味方にしてしまうところがこの団体の良さでもあるだろう。アンコールの曲が「しっかり準備を怠るな」と紹介されると、笑いが起こった。さきほどのハプニングはもしかしてアンコールのための仕込みだったのか? さすがにそれはないだろうが、そうであっても許される雰囲気の良さが彼らの魅力の1つだろう。

次の公演は12月、さらに来年の7月の公演も決まっているという。ますます進化していく彼らから目が離せない。

(2023/8/15)

 

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<performers>
Miki NAKAYAMA(soprano)
Maria MOCHIZUKI(soprano)
Noriyuki KUBO(Alto)
Katsuhiko NAKAJIMA(Tenor)
Yusuke WATANABE(Bass)

Yuko ARAKI(violin)
Rika SASAKI(violin)
Risa HONDA(viola)
Go TOMONO(viola)
Hiroshi FUKUZAWA(viola da gamba)
Sakuhiko FUSE(violone)
Leonardo TAKII(Theorbo)
Makiko ARAI(organ)
<program>
Dietrich Buxtehude: Domine, salvum fac regem, (BuxWV 18)
        Jesu, meine Freud und Lust, (BuxWV 59)
        Jesu, meiner Freuden Meister (BuxWV 61)
        Swinget euch Himmelan (BuxWV 96)
–pause–

Dietrich Buxtehude: Mein Herz ist bereit (BuxWV 73)
        Sonata in G (BuxWV 271)
        Herzlich Lieb Hab Ich Dich, O Herr, (BuxWV 41)

–encore—
C. Graupner: Mache dich, mein Geist, bereit, GWV1149/28 Chorale: Mache dich, mein Geist, bereit,