撮っておきの音楽家たち |ヴィクトリア・ムローヴァ|林喜代種
ヴィクトリア・ムローヴァ (ヴァイオリン奏者)
Viktoria Mullova (Violinist)
2022年11月21日 武蔵野市民文化会館小ホール
Photos & Text by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)
ヴァイオリンの女王と言われているヴィクトリア・ムローヴァが古楽とモダンの2台のヴァイオリンを弾き分けるという、ちょっと興味深いコンサートを行なった。鍵盤奏者は古楽・モダン共にアラスデア・ビートソン。
①ガット弦を張った古楽器ガダ二ー二とフォルテピアノ
②ストラディヴァリウス(1723年製ジュールズ・フォーク)とモダン・ピアノ
①はベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第4番と第7番。
②は武満徹の「妖精の距離」、ペルトの「フラトレス」、シューベルトの「ヴァイオリンとピアノのためのロンド」。
ヴァイオリンの女王による古楽とモダンを味わう稀有なそして豊かな音楽を満喫した演奏会だった。
ヴィクトリア・ムローヴァは1959年11月にモスクワ近郊のジュコーフスキー出身。地元の音楽学校を経て、モスクワ中央音楽学校に学び、モスクワ音楽院でウクライナ出身のレオニード・コ―ガンに師事する。1980年シベリウス国際ヴァイオリン・コンクールと1982年チャイコフスキー国際コンクールに優勝し注目を集める。1983年、フィンランド演奏旅行中の西側への亡命は大きな話題となった。
ウィーン・フィル、モントリオール管弦楽団、サンフランシスコ交響楽団、バイエルン放送響などの世界の主要オーケストラと共演。またエイジ・オブ・エンライトメント管弦楽団やオルケストラ・レヴォリューショナル・エ・ロマンティークといった古楽器オーケストラとも共演している。1990年代半ばからムローヴァ・アンサンブルを結成してイタリア、ドイツ、オランダ等で演奏活動をする。
小澤征爾指揮ボストン交響楽団と共演した最初の録音はモントルーのディスク大賞を、1995年アバド指揮ベルリン・フィルとのブラームスの協奏曲の録音(サントリーホールでのライブ)によりエコー・クラシック賞とドイツ・レコード批評家賞及びレコード・アカデミー大賞(音楽之友社)、またアンドレ・プレヴィンとハインリッヒ・シフとの共演によるブラームスのピアノ三重奏曲第1番の録音ではディアパソン・ドール賞、バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータの録音でグラミー賞を受賞。
現在はロンドンのホランド・パークにおいて夫であるチェリストのマシュー・ベイリーと3人の娘たちと同居している。
(2022/12/15)