撮っておきの音楽家たち|アンゲリカ・キルヒシュラーガー|林喜代種
アンゲリカ・キルヒシュラーガー(メゾ・ソプラノ歌手)
Angelika Kirchschlager, Mezzo-soprano
2022年8月22日ほか 第42回草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァル
Photos & Text by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)
1965年ザルツブルク生まれ。今欧米の歌劇場で引っ張りだこの人気を誇るメゾ・ソプラノ歌手のアンゲリカ・キルヒシュラーガーが草津アカデミーに講師として初参加。マスタークラスでは受講生が両手を派手に使って歌うのを見て、こういう歌い方をする人が多いが、これは良くないのでしばらく歌う時には両手を後ろに組んで、手を使わずに顔の表情やからだ全体を使って声をコントロールしよう、と話す。
キルヒシュラーガーは6歳から12年間ピアノを習うが後に声楽に転向。1991年ウィーン・カンマーオーパーで歌い始め、大器・秘密兵器として注目され、1994年国立オペラにケルビーノでデビュー。モーツァルト、シュトラウスのズボン役で名を成す。中でもイダマンテ、オクタヴィアンで絶賛され、メトロポリタン歌劇場に出演。2002年ロンドンでモー作曲「ソフィーの選択」を創唱。近年はドイツリート界を背負う輝かしい存在として絶賛されている。2004年小澤征爾指揮ウィーン国立歌劇場来日公演で「フィガロの結婚」「ドン・ジョバンニ」に出演。この時4年振りに日本のステージに立つ。もともと深みのある彼女の声であったがシューマンなどの作品では近年そこに妖艶さも加わって来たようで表現に磨きがかかり生身の女性を丁寧に歌いあげている。
2007年ウィーン国立歌劇場での活躍に対しオーストリア政府より宮廷歌手の称号を授けられる。2009年より王立音楽アカデミー名誉会員。2013年にはリスト歌曲の録音でBBCミュージック・マガジンアワードを受賞。また同年パフォーマーとしてクラシック音楽業界への寄与、若い世代にクラシック音楽の魅力を伝え続ける教師としての活動に対して権威あるヨーロッパ文化賞を受賞した。グラインドボーン音楽祭で高い評価を受けたヘンデル「ジュリアス・シーザー」(セスト役)など録音・録画にも多数参加している。エコー賞3回、グラミー賞を受賞。
今回彼女の屈託のない人間性もあらゆるところで見ることが出来た。リサイタル後、楽屋のあるグリーンルームで記念写真を撮った時、真面目なポーズ後突如としてラフなポーズをとるなど、ユーモアのある人なつこい面を見せたりする。
ウィーンが育んだ 輝ける才能、憂いを含んだ柔らかな声音でしっとりと歌う。世界中の歌劇場で引っ張りだこの人気メゾ・ソプラノ、キルヒシュラーガーの歌声が草津で響く。
(2022/9/15)