平野 和 バス・バリトン リサイタル|藤堂清
プラチナ・コンサート・シリーズVol.21
<オール・シューマン・プログラム>
~“音と詩の旅”への誘い~
平野 和 バス・バリトン リサイタル
Yasushi Hirano Bass-Baritone Recital
2025年12月25日 Hakuju Hall
2025/12/25 Hakuju Hall
Reviewed by 藤堂清 (Kiyoshi Tohdoh)
写真提供:ジャパン・アーツ
<出演> →Foreign Languages
平野和 (バス・バリトン)
川島 基(ピアノ)
<プログラム>
シューマン: 《ケルナーの詩による12の歌曲》Op.35
1. 嵐の夜の楽しみ
2. 滅びるがよい、 愛も喜びも
3. さすらいの歌
4. 最初の緑
5. 森への憧れ
6. 亡き友の盃に
7. さすらい
8. 静かな愛
9. 問いかけ
10. 静かな涙
11. 誰が君を傷つけたのか
12. 古いリュート
———————(休憩)———————
シューマン: 《詩人の恋》 Op.48
1. うるわしい妙なる5月に
2. ぼくの涙はあふれ出て
3. ばらや、 百合や、 鳩や、 太陽を
4. ぼくがきみの瞳を見つめると
5. ぼくの心をひそめてみたい
6. ラインの聖なる流れ
7. ぼくは恨みはしない
8. 花が、 小さな花がわかってくれるなら
9. あれはフルートとヴァイオリンのひびきだ
10. かつて愛する人のうたってくれた
11. ある若ものが娘に恋をした
12. まばゆく明るい夏の朝に
13. ぼくは夢のなかで泣きぬれた
14. 夜ごとにぼくはきみを夢に見る
15. むかしむかしの童話のなかから
16. むかしの、 いまわしい歌草を
——————(アンコール)——————
シューマン: 《ミルテの花》 Op.25より
・君は花のようだ Op.25-24
・気ままな想い Op.25-2
・献呈 Op.25-1
平野和、バス・バリトンの深く力強い声が会場に響く。平野は48歳、低音歌手としてもっとも脂ののった時期だろう。その声の充実した厚みに圧倒される。弱声から強声までまったくむらが無い。
「~“音と詩の旅”への誘い~」というサブタイトルのついたリサイタル、シューマンの2つの歌曲集をとりあげた。前半は、《ケルナーの詩による12の歌曲》Op.35 、後半は《詩人の恋》Op.48 。どちらもシューマンの歌の年の作品、演奏機会は多いが、Op.35 の方が多少なじみが薄いだろう。
ピアノの強い打鍵に続いて歌いだされる〈嵐の夜の楽しみ〉、速めのリズムにのった歌が心地よくこの歌曲集へと誘ってくれる。2曲目の〈 滅びるがよい、 愛も喜びも〉の静かな曲調、そして歌詞として「滅びるがよい、 愛も喜びも」という、この曲のタイトルを歌い上げるときの高音域(彼としては限界に近い音域だろう)もしっかりと響きを保った。〈最初の緑〉の冒頭の“Du junges Grün, du frisches Gras!”という言葉、グッと胸をつかまれる。この一節の香り立つような印象を平野は見事に浮き立たせる。曲集最後の2曲、〈誰が君を傷つけたのか〉と〈古いリュート〉は、抑えた曲想が続いた曲のように思える。平野は弱声をコントロールし、静かに歌い終えた。
《詩人の恋》の歌い出し〈うるわしい妙なる5月に〉、香りたつ季節に始まる恋が歌われる。テノールによる歌唱のような甘さはないが、かぐわしい匂いに包まれる。恋を歌う6曲目の〈ラインの聖なる流れ〉の決然とした響き。失恋を歌う7曲目〈ぼくは恨みはしない〉、ここで曲調ががらりと変わる。〈花が、 小さな花がわかってくれるなら〉の速めのメロディー、「ぼくの苦しみを知っているのは一人だけ」と歌う。〈あれはフルートとヴァイオリンのひびきだ〉〈かつて愛する人のうたってくれた〉〈ある若ものが娘に恋をした〉と、失恋した心の痛みを歌っていく。平野の歌い分けは、これらの曲の表情を的確に描き出している。最後の2曲、〈むかしむかしの童話のなかから〉〈むかしの、 いまわしい歌草を〉では、失恋の痛みを超越しようとする。平野の厚みのある声が、それを見事に表現し、ピアノの後奏につなげていく。
アンコールは歌曲集《ミルテの花》から3曲。MCを交えながら歌っていった。2曲目の〈気ままな想い〉 では「終わったという雰囲気ではないので」というコメントとともに、3曲目の〈献呈〉が歌われた。
「~“音と詩の旅”への誘い~」というサブタイトルにふさわしく、ケルナーとハイネの詩の世界とそれに載せたシューマンの音の世界をつないでみせてくれたこの日のリサイタル、彼のドイツ語の美しさもそれをしっかり支えていた。
他の作曲家の歌曲も平野の歌で聴いてみたいという思いを強く持った。R.シュトラウスの歌曲などどうだろうか?
(2026/1/15)
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<Performers>
Yasushi Hirano (Bass-Baritone)
Motoi Kawashima(Piano)
<Program>
Schumann: 12 Gedichte, Op.35 “Kerner Lieder”
1. Lust der Sturmnacht
2. Stirb’, Lieb’ und Freud’!
3. Wanderlied
4. Erstes Grün
5. Sehnsucht nach der Waldgegend
6. Auf das Trinkglas eines verstorbenen Freundes
7. Wanderung
8. Stille Liebe
9. Frage
10. Stille Tränen
11. Wer machte dich so krank?
12. Alte Laute
——————(Intermission)——————
Schumann: Dichterliebe Op.48
1. Im wunderschönen Monat Mai
2. Aus meinen Tränen sprießen
3. Die Rose, die Lilie, die Taube, die Sonne
4. Wenn ich in deine Augen seh’
5. Ich will meine Seele tauchen
6. Im Rhein, im heiligen Strome
7. Ich grolle nicht
8. Und wüßten’s die Blumen, die kleinen
9. Das ist ein Flöten und Geigen
10. Hör’ich das Liedchen klingen
11. Ein Jüngling liebt ein Mädchen
12. Am leuchtenden Sommermorgen
13. Ich hab’ im Traum geweinet
14. Allnächtlich im Traume
15. Aus alten Märchen winkt es
16. Die alten, bösen Lieder
———————(Encore)———————
Schumann: Myrthen Op.25
・Du bist wie eine Blume Op.25-24
・Freisinn Op.25-2
・Widmung Op.25-1


