Pick Up (2025/12/15)|全国共同制作オペラ2025『愛の妙薬』ゲネプロレポート|長澤直子
全国共同制作オペラ2025『愛の妙薬』ゲネプロレポート
All Japan Opera Co-Production Project 2025“L’elisir d’amore”
2025年11月7日 東京芸術劇場 コンサートホール
2025/11/07 Tokyo Metropolitan Theatre
Text&Photos by 長澤直子(Naoko Nagasawa)
全国共同制作オペラ2025
ドニゼッティ 歌劇『愛の妙薬』
〈全2幕/イタリア語上演/日本語・英語字幕付き/新制作〉
2025年
11月9日(日)14:00 東京芸術劇場
11月16日(日)14:00 フェニーチェ堺
2026年
1月18日(日)14:00 ロームシアター京都
指揮:セバスティアーノ・ロッリ
演出:杉原邦生(KUNIO)
アディーナ:高野百合絵
ネモリーノ:宮里直樹【東京・大阪】/糸賀修平【京都】
ベルコーレ:大西宇宙【東京・大阪】/池内響【京都】
ドゥルカマーラ博士:セルジオ・ヴィターレ
ジャンネッタ:秋本悠希
ダンサー:福原冠、米田沙織、内海正考、水島麻理奈、井上向日葵、宮城優都
合唱:ザ・オペラ・クワイア【東京】/堺+京都公演特別合唱団【大阪・京都】
管弦楽:ザ・オペラ・バンド【東京】/大阪交響楽団【大阪】/京都市交響楽団【京都】
美術:金井勇一郎
照明:髙田政義(RYU)
音響:石丸耕一(東京芸術劇場)
衣裳:丁瑩
ヘアメイク:国府田圭
振付:北川結、仁科幸(モモンガ・コンプレックス)
全国共同制作オペラは、2009年に開始された。単館では負担の大きいオペラ公演を、複数の公共ホールで共同制作し、舞台費を按分。また、各地の合唱団・オーケストラを起用して、地域の活性化と人材育成(出演者/演出・音楽スタッフ/各館の制作者)を図るというプロジェクトだ。
2025年度はドニゼッティ『愛の妙薬』を、東京芸術劇場・フェニーチェ堺・ロームシアター京都の3館で上演。毎回音楽分野以外の演出家を招くのも特徴となっており、本年度は木ノ下歌舞伎や演劇分野の杉原邦生が演出。指揮はベルカントの名手といわれるセバスティアーノ・ロッリである。
既に11月9日(東京芸術劇場)と11月16日(フェニーチェ堺)での上演が終了しており、残るは2026年1月18日にロームシアター京都での公演のみとなっている。
本稿では、開幕前に行われたゲネプロの模様を紹介する。
演出の杉原邦生が掲げたキーワードは「かわいい」。この一語で舞台を統一する。白を基調とした反響版?で囲まれた舞台中央には、巨大なハートのオブジェがある。この舞台装置の色は、どぎついピンク。回転させると裏面は黒になっていて、役の心理状態や場面の状況で変化する。
舞台上に終始居合わせるダンサーたちは、それぞれにデザインの異なる、ピンクの衣装をまとっている。出来事を見守り、時には衣装を変えて場面の説明や補足を担う。彼(彼女)らにはジェンダーレスな要素も加えられており、直線的な男女の恋物語の中に、現代的な視点も打ち出しされている。
個々のキャストは大変充実している。ネモリーノの宮里直樹は、不器用さゆえの一直線な恋心をまっすぐに体現。知的でいたずら心もある高野百合絵のアディーナ。チェックのパンツスーツという現代風のいでたちもよく似合っていた。ベルコーレの大西宇宙は、重厚な軍服姿。横柄さの中に見える少しだけの人の良さが、今回の「かわいい」世界観に妙にはまる。ドゥルカマーラのセルジオ・ヴィターレは、パープルに光るローブと盛り髪で、イカサマ師っぷりを存分に発揮。ジャンネッタの秋本悠希は、ソリスト陣と合唱の橋渡しのような役割を、要所要所で果たす。合唱の村人たちはブルー系の衣装と、色彩選びもセンス良くまとめられていた。
3館だけでなく、もっと沢山の場所で見られたらいいのにと思ってしまうのは、高望みだろうか。




















