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NISSAY OPERA 2025  マスネ《サンドリヨン》|藤堂清

NISSAY OPERA 2025 
マスネ《サンドリヨン》新制作 
(全4幕、原語[フランス語]上演・日本語字幕付) 

2025年11月16日 日生劇場 
2025/11/16 Nissay Theatre 
Reviewed by 藤堂清 (Kiyoshi Tohdoh) 
Photos by 寺司正彦/写真提供:日生劇場 

<スタッフ>        →Foreign Languages
指揮:柴田 真郁
演出・振付:広崎 うらん
管弦楽:読売日本交響楽団
合唱:C.ヴィレッジシンガーズ
アライブペインティング:中山 晃子

<キャスト>
サンドリヨン(リュセット):金子 紗弓
シャルマン王子:山下 裕賀
妖精:横山 和美
ド・ラ・アルティエール夫人:星 由佳子
パンドルフ:河野 鉄平
ノエミ:別府 美沙子
ドロテ:北薗 彩佳

 

オペラ《サンドリヨン》はシャルル・ペローの童話に基づく作品。シンデレラのお話といえば、通じるだろう。マスネのオペラ作品の中では、比較的後期のもの。1895年に作曲完成、1899年に初演されている。世界的には、《マノン》《ウェルテル》《タイス》ほどではないが、近年でも上演が続いている演目である。
第1幕はド・ラ・アルティエール夫人の邸宅。サンドリヨン(リュセット)の父パンドルフは、夫人との再婚を後悔しているが、夫人とその娘のノエミ、ドロテとともに王宮の舞踏会に出かける。一人残されたリュセットは用事を済ませ、寝入ってしまう。そこに彼女の名付け親の妖精が現れ、舞踏会に行けるよう手配してくれた。
第2幕は王宮、シャルマン王子が憂鬱な気分を嘆いている。招かれた娘たちが踊る中、ド・ラ・アルティエール夫人等も到着。突然見知らぬ美女(実はリュセット)が登場。心奪われた王子は二人になり、彼女の正体を知ろうとするが、彼女は答えない。十二時となり、あわてて帰っていくが、ガラスの靴の片方を落としてしまう。
第3幕第1場はド・ラ・アルティエール夫人の邸宅。帰り着いたリュセットが靴をなくしたことを嘆いている。そこへ夫人たちが戻ってくる。舞踏会に見知らぬ美女が現れたこと、それに関し王子が否定的に反応したと偽りをいう夫人の言葉にショックを受けるリュセット。パンドルフは夫人と娘たちを追い出し、リュセットとともに田舎に戻ろうと歌う。だがリュセットは一人で死のうと森に向かう。第2場は妖精たちのいる森の中、王子とリュセットは別々の方向から近づき、姿を見ることなく、声だけで互いの気持ちを確かめあう。妖精は魔法で二人を眠らせる。
第4幕第1場は夫人の邸宅。パンドルフがようやく目覚めたリュセットに、彼女の寝言、舞踏会、王子さま、ガラスの靴といった、を伝える。彼女も全てが夢であったと思い切る。しかし、夫人によって、王宮にガラスの靴を残していった娘を王子が探しているとの報せが入り、リュセットは夢ではなかったと知り喜ぶ。第2場は王宮。各地の令嬢たちが集まるが、誰もガラスの靴の持ち主ではない。そこへ美しく変身したリュセットが現れ、王子との結びつきが明らかになる。夫人が手の平を返し「我が娘!」と抱きしめるので皆あきれるが、終わり良ければすべて良しとし、皆で「これでお話は終わり」と歌って終わる。

演奏面では、歌手の充実が目立った。主役サンドリヨン(リュセット)の金子紗弓の音楽作りが彼女の登場場面でしっかりとした構成を生み出していた。一方、シャルマン王子を歌った山下裕賀の充実した声はどこをとっても魅力的、響きが会場全体を埋めるところはまことに見事。妖精のパンドルフの河野鉄平の安定感のある歌唱もこの役にふさわしいものであった。
指揮者柴田真郁のもと読売日本交響楽団が、骨組みのガッチリとした音楽を作り出した。歌手も歌いやすかったことだろう。
演出(振付も)は広崎うらん。舞台中央にド・ラ・アルティエール夫人の邸宅の一部と王宮の階段となる装置をおき、それを回転させることで舞台転換を行う。台本に忠実な演出で、わかりやすいもの。王子の服装やリュセットの変身後の姿などいかにもといった様子であった。舞踏家うらんらしく、6人のダンサーを使い、さまざまに場面を作り出した。第3幕第2場の妖精の場の幻想的な雰囲気も印象的であった。
日本ではこのオペラ、大きな団体の公演はあまりないが、今回、歌手、オーケストラ、演出と高いレベルの公演となったことは、うれしいことである。この舞台が一般公開の2公演以外に、日生劇場オペラ教室として4公演行われ、学生、生徒を招待していたことも付記しておきたい。

(2025/12/15)

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[Staff]
Conductor: Maiku Shibata
Direction and Choreography: Uran Hirosaki
Orchestra: Yomiuri Nippon Symphony Orchestra
Chorus: C. Village Singers
Alive Painting: Akiko Nakayama

[Cast]
Cendrillon(Lucette): Sayumi Kaneko
Le Prince Charmant: Hiroka Yamashita
La Fée Reina: Kazumi Yokoyama
Madame de la Haltière: Yukako Hoshi
Pandolfe: Teppei Kono
Noémie: Misako Beppu
Dorothée: Saika Kitazono