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Pick Up (2025/5/15)|広上淳一&日本フィル「オペラの旅」Vol.1 ヴェルディ《仮面舞踏会》 |長澤直子

広上淳一&日本フィル「オペラの旅」Vol.1 ヴェルディ《仮面舞踏会》Hirokami Junichi & Japan Philharmonic Orchestra “A Journey of Opera” Vol. 1 Verdi “Un ballo in maschera”
2025年4月27日 サントリーホール
2025/4/27 SUNTORY HALL

Text&Photos by 長澤直子(Naoko Nagasawa)

〈スタッフ〉         →foreign language
指揮:広上淳一 [フレンド・オブ・JPO(芸術顧問)]
演出:高島勲
振付:広崎うらん
衣裳:桜井久美(アトリエヒノデ)
照明:岩品武顕
舞台監督:幸泉浩司
副指揮:喜古恵理香、荒木流音生
演出助手:根岸幸
合唱指揮:浅井隆仁

〈キャスト〉
アメーリア:中村恵理
リッカルド:宮里直樹
レナート:池内響
ウルリカ:福原寿美枝
オスカル:盛田麻央
シルヴァーノ:高橋宏典
サムエル:田中大揮
トム:杉尾真吾
判事:園山正孝
召使:岸野裕貴
合唱:東京音楽大学

管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:田野倉雅秋

ダンサー:佐藤洋介、池田美佳

プレトーク:小畑恒夫(日本ヴェルディ協会理事)



日本フィルハーモニー交響楽団が新たにスタートさせたオペラ・シリーズ「オペラの旅」。その第一弾として上演された《仮面舞踏会》は、聴衆に強い印象を残した。《仮面舞踏会》は、広上が1989年にシドニー・オペラハウスで初めて手がけた思い出深い作品であるという。

演出は高島勲。オーケストラの前方と奥に演技スペース。左右には奥の舞台に通じる段差を設け、奥行きを生かすような空間を創出。合唱団はP席に配置され、第3幕ではバンダがオルガン下に登場するという、視覚的工夫も随所に見られた。これに照明と衣裳が加わり、物語はより多彩な表現力を得た。

キャスト陣の充実ぶりも特筆に値する。リッカルド役の宮里直樹は、気品と人間味を感じさせる正統派の歌唱を聞かせた。アメーリア役の中村恵理は、リリカルな響きの中に感情の濃度をにじませる。レナート役の池内響は柔らかなバリトンで、内面の複雑さを丁寧に描いていた。

広上の指揮は、細やかなフレージングと的確なテンポ設計によって、ヴェルディのドラマをくっきりと浮かび上がらせる。日本フィルもこれに見事に応え、ドラマと音楽の呼応による一体感を創出。

本公演は、日本フィルが「オペラ」という総合芸術へ真正面から挑む第一歩であり、その完成度の高さは、今後の「旅」の展開へ大きな期待を抱かせるものと言えるだろう。また同時に、オペラという芸術が、オーケストラの主催公演において深化し、発展し得る可能性を示した。

(2025/5/15)

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[Staff]
Conductor: Junichi Hirokami [Friend of JPO (art advisor)]
Directed by: Isao Takashima
Choreography: Uran Hirosaki
Costume: Kumi Sakurai (Atelier Hinode)
Lighting: Takeaki Iwashina
Stage Director: Hiroshi Koizumi
Associate Conductor: Erika Kiko, Lunei Araki
Directing assistant: Sachi Negishi
Chorus Conductor: Takahito Asai

[Cast]
Amelia: Eri Nakamura
Riccardo: Naoko Miyazato
Renato: Hibiki Ikeuchi
Ulrika: Sumie Fukuhara
Oscar: Mao Morita
Silverno: Kosuke Takahashi
Samuel: Taiki Tanaka
Tom: Shingo Sugio
Judge: Masataka Sonoyama
Servant: Yuki Kishino
Chorus: Tokyo College of Music
Orchestra: Japan Philharmonic Orchestra
Concert Master: Masaaki Tanokura
Dancers: Yosuke Sato, Mika Ikeda