Pick Up (2025/4/15)|びわ湖ホール プロデュースオペラ コルンゴルト作曲 《死の都》 |長澤直子
びわ湖ホール プロデュースオペラ コルンゴルト作曲 《死の都》
Biwako Hall Produced Opera: Die tote Stadt by Erich Wolfgang Korngold
2025年3月1日、3月2日 びわ湖ホール
2025/3/1、3/2 BIWAKO HALL
Text&Photos by 長澤直子(Naoko Nagasawa)
3月1日
3月2日
〈スタッフ〉 →foreign language
指揮:阪 哲朗(びわ湖ホール芸術監督)
演出:栗山昌良
再演演出:岩田達宗
装置:松井るみ
照明:沢田祐二
衣裳:緒方規矩子
振付:小井戸秀宅
音響:小野隆浩(びわ湖ホール)
舞台監督:菅原多敢弘
〈キャスト〉(3/1、3/2)
パウル:清水徹太郎*、山本康寛*
マリー/マリエッタ:森谷真理、木下美穂子
フランク:黒田祐貴、池内響
ブリギッタ:八木寿子、山下牧子
ユリエッテ:船越亜弥*、小川栞奈
ルシエンヌ:森季子*、秋本悠希
ガストン/ヴィクトリン:島影聖人*(両日)
フリッツ:晴雅彦、迎肇聡*
アルベルト伯爵:与儀巧(両日)
*びわ湖ホール声楽アンサンブル・ソロ登録メンバー
合唱:びわ湖ホール声楽アンサンブル
児童合唱:大津児童合唱団
今年2025年3月のびわ湖ホールプロデュースオペラは、コルンゴルト作曲の《死の都》であった。本作は20世紀前半に誕生したオペラの中で、耽美性と哲学的な深さを兼ね備えた傑作とされながら、日本では全曲上演の機会が極めて限られてきた。 その理由は明白で、音楽的にも演技的にも非常に難度が高く、それが大きなハードルとなっているのだ。とりわけパウルとマリエッタの両役は、全幕を通して歌い続けなければならず、卓越した歌唱技術と表現力に加えて、声の持久力が不可欠である。
本公演の主役パウルには、びわ湖ホール声楽アンサンブル出身の清水徹太郎と山本康寛がダブルキャストであたった。山本は2014年公演において急遽代役として抜擢され、この役で高く評価された実力派である。彼らの出演は、びわ湖ホールが掲げる「世界のスタンダードを見据えた人材育成」という理念を体現するものであり、まさに育成から成果へとつながるプロジェクトであるといえるだろう。
ゲネプロ取材の中で印象的であったのは、劇場に満ちる空気の密度である。指揮者、オーケストラ、歌手、スタッフすべての意識が一点に向かい、高次元で融合する。まさにオペラとはそういうものだ。
びわ湖ホールプロデュースオペラとは、単なるオペラ上演にはとどまらず、日本におけるオペラ表現の深化と拡張を担う存在であることを改めて感じた。困難な作品にあえてチャレンジし、そこに育成された人材を起用するという一貫した姿勢が、この劇場の大きな財産。今後の日本のオペラ界にとっても貴重な指針となるだろう。
ゲネプロと言えどもリハーサルであるから、歌唱についてのコメントは差し控え、ヒロインについて一言だけ。魂を賭けたような圧倒的な声と表現! 全身全霊で作品と向き合っていることが胸に強く響いた。
(2025/4/15)
—————————————
[Staff]
Conductor: Tetsuro Ban (Artistic Director of Biwako Hall)
Director: Masayoshi Kuriyama
Revival Direction: Tatsuji Iwata
[Cast] (3/1,3/2)
Paul: Tetsutaro Shimizu, Yasuhiro Yamamoto
Marie / Marietta: Mari Moriya, Mihoko Kinoshita
Frank: Yuki Kuroda, Hibiki Ikeuchi
Brigitta: Hisako Yagi, Makiko Yamashita
Juliette: Aya Funakoshi, Kanna Ogawa
Lucienne: Tokiko Mori, Yuki Akimoto
Gaston / Victorin: Kiyohito Shimakage (both days)
Fritz: Masahiko Hare, Tadatoshi Mukai
Albert: Takumi Yogi (both days)
Chorus: Biwako Hall Vocal Ensemble
Children’s Chorus: Otsu Children’s Choir
Orchestra: Kyoto Symphony Orchestra