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注目の公演・イベント|2025年3月

♩3/1 日本フィルハーモニー交響楽団第409回名曲コンサート

北海道出身の伊福部昭、言わずと知れたロシアのチャイコフスキーにムソルグスキー(編曲のラヴェルはフランスだが)、彼らの音楽の中に北国を感じるのを期待するというのは誤りだろうか。あるいは日本とロシアという国籍・民族の違いが音楽に反映されるのだろうか。それとも音楽は風土・国境・民族を越えるのだろうか。いずれにせよ大注目の公演であることは間違いない。なお、カーチュン・ウォンは近々ヨーロッパでも伊福部の『日本組曲』を指揮する予定である。

3/1@サントリーホール
https://japanphil.or.jp/concert/20250301

 

 

♩3/1,2 びわ湖ホールプロデュース オペラ コルンゴルト 歌劇『死の都』全3幕

2014年の3月にコルンゴルト『死の都』の日本初演を行ったのが他ならぬびわ湖ホールである。それから11年を経ての待望の今回の再演、指揮/演出は前回の沼尻竜典/故・粟國安彦コンビに代わって阪哲朗/岩田達宗(「行列のできる演出家」!)。ドイツやオーストリアの歌劇場でのオペラ指揮経験が豊富な阪の指揮が特に注目されよう。

3/1,2@びわ湖ホール
https://www.biwako-hall.or.jp/performance/die_tote_stadt2024

 

 

♩3/7,8 日本フィルハーモニー交響楽団 第768回東京定期演奏会

カーチュン・ウォン待望のマーラー『復活』。この指揮者は既に日本フィルでマーラーの交響曲を複数曲取り上げているが、そのいずれもがコケ威し的なハッタリとは無縁の、しかしカーチュン・ウォンらしい読みが随所に光る非凡な演奏となっていた。『復活』は敢えて言ってしまえば「通俗的な」盛り上げ要素が多々含まれる作品ゆえ、これを清新な演奏として提示してくれることを期待。

3/7,8@サントリーホール
https://japanphil.or.jp/concert/20250307

 

 

♩3/7~16 イノック・アーデン

リヒャルト・シュトラウスの『イノック・アーデン』、と耳にすれば大概のクラシックファンはグレン・グールドとクロード・レインズの録音を思い出すのではないか(日本国内向けに石丸幹二が朗読したものもある)。しかし逆に言えばそこ止まりなのでは? 2009年に白井晃の演出、石丸幹二の朗読とピアノという形で上演された本作品を今回は演劇的な要素を大幅に加味して新たに創造する。滅多に実演で接する機会のない『イノック・アーデン』、これは貴重だ。

3/7~16@新国立劇場小劇場
https://tspnet.co.jp/whats-ons/enoch/

 

 

♩3/8 Just Composed 2025 in Yokohama ―現代作曲家シリーズ―メメント・モリ

今回の「Just Composed in Yokohama ―現代作曲家シリーズ―」は、日本を代表するホルン奏者福川伸陽を迎え「メメント・モリ」をテーマとするプログラム。坂田直樹への委嘱作《息をする電球》世界初演のほか、再演作として西村朗《雅歌Ⅱ~聖音を伴う抽象的なヘテロフォニー~》を神山奈々による編曲で聴かせる。他にメシアン、プーランク、シュトラウスなど。演奏は福川のほか、sop.小林沙羅、va.中恵菜、pf.務川慧悟と豪華版。アンサンブルの妙も楽しめよう。

3/8@横浜みなとみらいホール 小ホール
https://yokohama-minatomiraihall.jp/concert/archive/recommend/2025/03/3496.html

 

♩3/8,9 日本オペラ協会 三木稔《静と義経》〈新制作/日本オペラシリーズNo.87〉

1993年鎌倉芸術館の開館記念委嘱作品として、なかにし礼の作・台本、三木稔の作曲で制作・上演された。その後、2019年3月に日本オペラ協会の創立60周年の記念公演として新宿文化センターで東京初演。今回は6年ぶりの新制作上演となる。指揮は前回と同じく田中裕子、演出は生田みゆきが担当する。この日本発のグランド・オペラが時代を越えて上演され続けていくことを望みたい。

3/8,9@東京文化会館大ホール
https://www.jof.or.jp/performance/2503-shizuka

 

 

♩3/9 新しい耳vol.13

廻由美子主宰の「新しい耳」は“響き合う20年代! 発明、狂乱、そして次世代へ”の20年代シリーズへと突入。その幕開けとなるvol.13は作曲家・ピアニストとして国際的に縦横無尽の活躍を見せる新世代の音楽家小倉美春による<自作を弾く・ピアノ表現の可能性2020s~>。『Rifrazione』(2024、ヴェネツィア・ビエンナーレ委嘱作品、日本初演)など、必聴が並ぶ。未来へ共に羽ばたかん。

3/9@B-tech Japan 東京スタジオ
https://www.atarashii-mimi.com/concert-no28

 

 

♩3/10 トリオ・リズルVol.4

桐朋音大同級生で2021年結成のトリオ・リズル(毛利文香vn、田原綾子va、笹沼樹vc)の第4回公演。シェーンベルク:弦楽三重奏曲 Op.45とJ.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988(D.シトコヴェツキ編 弦楽三重奏版に基づくTrio Rizzleバージョン)という凝ったプログラム。若手室内楽界ではもはや売れっ子の彼らの清廉溌剌の演奏が楽しめよう。

3/10@トッパンホール
https://www.toppanhall.com/concert/detail/202503101900.html

♩3/12 読売日本交響楽団 第646回定期演奏会
♩3/15 読売日本交響楽団 第680回名曲シリーズ

2024年4月のリヒャルト・シュトラウス『エレクトラ』で瞠目すべき演奏を成し遂げたヴァイグレ&読響が演奏会形式のオペラ上演と して今回挑むのは難曲、ベルクの『ヴォツェック』。「演奏会形式のオペラ上演には多くの美点があります。オーケストラ奏者は、共に舞台上にいる歌手を身近に感じ、物語の出来事により主体的に参加できます。その結果、音楽がより立体的になるのです。」(読売新聞によるインタビューより)と語るヴァイグレ、続けて「この形式は『ヴォツェック』のような作品にはとても向いている」。音楽自体(複雑かつ難解!)に徹底的に集中できるというわけだ。ヴォツェック役のゲルネが降板したのは残念だが、それはそれとして代役のキーンリーサイドの歌唱も楽しみ。

3/12@サントリーホール
https://yomikyo.or.jp/concert/2023/12/646-1.php#concert
3/15@サントリーホール
https://yomikyo.or.jp/concert/2023/12/680.php#concert

♩3/14,16 紀尾井ホール室内管弦楽団 第141回定期演奏会 モーツァルト 歌劇《コジ・ファン・トゥッテ》(演奏会形式)

紀尾井ホール室内管弦楽団の首席指揮者トレヴァー・ピノックが、その3年目の集大成として取り組むオペラ。キャストには、フィオルディリージにマンディ・フレードリヒ、ドラベッラに小泉詠子、グリエルモにコンスタンティン・クリメル、フェッランドにマウロ・ペーター、デスピーナにラゥリーナ・ベンジューナイテ、ドン・アルフォンソに平野和と、30代から40代の若手から中堅の歌手を集め、楽しみな布陣がそろった。ピノックの指導のもと、このアンサンブル・オペラをどのように聴かせてくれるか大いに期待したい。

3/14,16@紀尾井ホール
https://kioihall.jp/20250314k1800.html
https://kioihall.jp/20250316k1400.html

♩3/15 華麗なるコンチェルト・シリーズ第27回
北村朋幹 林辰則 上野通明 山根一仁<時節到来、オール・ショスタコ!>

 

2025年で没後50周年を迎えるショスタコーヴィチのピアノ協奏曲、チェロ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲が、指揮にキンボー・イシイ、管弦楽は神奈川フィル、ピアノ北村朋幹、トランペット林辰則、チェロ上野通明、ヴィオリン山根一仁という万全の布陣で怒涛のように押し寄せる。ショスタコーヴィチと演奏者の知情意の一致の極みを聴き届けたい。

3/15@横浜みなとみらいホール
https://kanagawa-geikyo.com/concert/concert-6128/

 

♩3/18 辻 彩奈 ヴァイオリン・リサイタル

昨年10月にデュトワ&九響と共演して演奏されたグラズノフのヴァイオリン協奏曲を聴くに、辻彩奈の演奏は以前にも増して表現の幅が広がっている印象。かつての端正さは保持しながらもより深みが増している。その辻彩奈の今回のリサイタルは名手シュトロッセのサポートを得ての イザイ、フランク、ルクーというベルギーの作曲家による作品で構成。いずれも「鮮やかな技巧で弾き切る」ことだけでは本質的な演奏とはならない難曲ゆえ、今の辻彩奈のポテンシャルを確かめる最良の機会となろう。

3/18@紀尾井ホール
https://www.kajimotomusic.com/concerts/ayana-tsuji-violin-recital2025/

 

♩3/18 東京・春・音楽祭2025 マウロ・ペーター(テノール)&村上明美(ピアノ)
〈東京春祭 歌曲シリーズ vol.41〉

東京・春・音楽祭の注目の歌曲シリーズ、スイスの若手テノール、マウロ・ペーターが登場する。歌うのは、シューベルトの《美しき水車小屋の娘》。オーストリアのシューベルティアーデ音楽祭でも歌ってきたお得意のレパートリー。昨年のこのシリーズで、コンスタンティン・クリメルが同じ曲目で鮮烈な印象を残しており、ペーターがどのような違いを聴かせてくれるか楽しみでならない。

3/18@東京文化会館小ホール
https://www.tokyo-harusai.com/program_info/peter-murakami/

 

♩3/18 B→C バッハからコンテンポラリーへ270 坂本光太(テューバ)

音楽と演劇の要素が合わさったシアターピースを積極的に取り上げている坂本光太がシリーズ16年ぶりのチューバによるB→Cに登場する。バッハ作品以外は全て演出家・和田ながらとの協働上演というからタダモノではあるまい。脳天と心臓にグサリと刺さるようなリサイタルを期待したい。

3/18@東京オペラシティリサイタルホール
https://www.operacity.jp/concert/calendar/detail.php?id=16418

関連レビュー
坂本光太チューバリサイタル vol.2 V・グロボカール作品演奏会|西村紗知
坂本光太×和田ながら「ごろつく息」京都公演|田中 里奈
坂本光太チューバリサイタルvol.4|西澤忠志

♩3/19,22 東京・春・音楽祭2025 クリスティアン・ゲルハーヘル(バリトン)&ゲロルト・フーバー(ピアノ)
〈東京春祭 歌曲シリーズ vol.42,43〉

クリスティアン・ゲルハーヘルは現在ドイツ歌曲の分野でトップに立っている人といえるだろう。来日がしばらく途絶えていたこともあり、55歳のこのバリトンを聴く機会が少なくなっていただけに、この2回のリサイタルは大いに楽しみ。2晩ともにシューマンの歌曲によるプログラムが組まれている。シューマンといえば《詩人の恋》となりがちだが、今回は《レーナウによる6つの詩とレクイエム》op.90、《ケルナーによる12の詩》op.35など取り上げられることの少ない曲目が並んでいる。シューマンの歌曲の世界に浸ることができるだろう。

3/19,22@東京文化会館小ホール
https://www.tokyo-harusai.com/program_info/gerhaher-huber_01/
https://www.tokyo-harusai.com/program_info/gerhaher-huber_02/

♩3/25、26 ジョヴァンニ・ソッリマ 無伴奏チェロ・コンサート2025

イタリアのチェロの鬼才ソッリマ。バッハ無伴奏に加え、オリジナル楽曲とバロックを聴かせるという刺激的なプログラム。25日はバッハ1番と3番、26日は4番と5番。どちらを選ぶか迷うくらいなら両日公演、聴き倒そうか。チェロと遊ぶ、チェロを遊ぶソッリマの天衣無縫、甚深広大の音響世界を存分に。

3/25@浜離宮朝日ホール
3/26@紀尾井ホール
https://plankton.co.jp/sollima/2025tour.html#20250325

 

 

♩3/26 東京・春・音楽祭2025 クラングフォルム・ウィーンI ブーレーズ&ベリオ生誕100年に寄せて

実力のあるアンサンブルによるベリオとブーレーズの貴重な実演機会であるというだけでなく、かつてサントリー・サマーフェスティバルのホリガー特集でも活躍したサラ・マリア・サンの歌唱にも期待が高まる。

3/26@東京文化会館
https://www.tokyo-harusai.com/program_info/klangforum-wien-01/

 

 

 

♩3/26 エベーヌ弦楽四重奏団

現代最高峰の弦楽四重奏団の1つ、エベーヌに岡本侑也が加わっての初の来日。ブリテンを挟む形でその前と後にベートーヴェンを配置。クァルテット・ファン必聴のコンサートだ。

3月26日@トッパンホール
https://www.toppanhall.com/concert/detail/202503261900.html

 

 

 

 

♩3/27 ベルチャ・クァルテット

エベーヌとは芸風が異なるものの、こちらも現代最高の実力を誇るベルチャ・クァルテット。シェーンベルクの単一楽章による―にもかかわらず40分超え!―弦楽四重奏曲第1番とベートーヴェンのこちらも約40分間切れ目なく演奏される同第14番。明らかにコンセプチュアル。微に入り細を穿つベルチャ、どう出るか。

3月27日@トッパンホール
https://www.toppanhall.com/concert/detail/202503271900.html

 

 

 

♩3/27,30 東京・春・音楽祭2025 ワーグナー 舞台神聖祝典劇《パルジファル》(演奏会形式)
〈東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.16〉

東京・春・音楽祭の中核の企画、ワーグナー・シリーズ、今年は舞台神聖祝典劇《パルジファル》を取り上げる。グルネマンツにタレク・ナズミ、アムフォルタスにクリスティアン・ゲルハーヘル、クンドリにターニャ・アリアーネ・バウムガルトナーといったキャストは強力。指揮はこのシリーズの中核となっているマレク・ヤノフスキ、NHK交響楽団の演奏とこちらも盤石。長丁場を緩むことなく聴かせてくれることだろう。大いに期待したい。

3/27,30@東京文化会館大ホール
https://www.tokyo-harusai.com/program_info/2025_parsifal_01/
https://www.tokyo-harusai.com/program_info/2025_parsifal_02/

♩3/28、29、30 ベルチャ・クァルテット×エベーヌ弦楽四重奏団

別項にも記したが、共に現代最高の実力を持つエベーヌ弦楽四重奏団とベルチャ・クァルテット、しかしその芸風は異なる。4人それぞれのキャラが立ちまくりソリスティックにその表現力をフルに生かしながらも不思議にまとまる奇跡的な前者、反対にモノマニアックかつ神経質にディテールを掘り下げる後者。それぞれのカルテットが持つ色が掛け合わされることでどのような化学反応を起こすのか。ぜひ間近で目撃したい。

3/28@トッパンホール
https://www.toppanhall.com/concert/detail/202503281900.html
3/29@神奈川県立音楽堂
https://www.kanagawa-ongakudo.com/d/2quartet
3/30@滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール
https://www.biwako-hall.or.jp/performance/belceaebene2025

♩3/29 東京交響楽団 第728回定期演奏会
♩3/30 東京交響楽団 川崎定期演奏会第99回

オスモ・ヴァンスカ東響初登場。ヴァンスカは日本のオケでは今まで読響や都響を指揮しているが、その際には必ずシベリウスがプログラムに入っていた。もちろんこの指揮者のシベリウスは絶品であるし人気もある。オケも聴衆も大方それに不足はなかろうが、反面他の作曲家の作品をもっと聴きたいとの思いも。それを意識したのかは定かではないが、今回のメインプログラムはプロコフィエフの交響曲第5番。極めてシャープで明晰な名演となるのではないか。技巧派イノン・バルナタンが弾くベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番も佳き。

3/29@サントリーホール
https://tokyosymphony.jp/concert/14919/
3/30@ミューザ川崎シンフォニーホール
https://tokyosymphony.jp/concert/14924/

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