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ヘンデル:オペラ『リナルド』 HWV 7a|藤堂清 

ヘンデル:オペラ『リナルド』 HWV 7a
[全3幕/イタリア語上演・日本語字幕付] 

George Frideric Handel: Rinaldo, HWV 7a
[Opera in 3 Acts / Sung in Italian with Japanese surtitles] 

2024年8月17日 サントリーホール 
2024/8/17 Suntory Hall 
Reviewed by 藤堂清 (Kiyoshi Tohdoh) 
Photos by 池上直哉/写真提供:サントリーホール 

<キャスト・スタッフ>        →foreign language
指揮・リコーダー:濱田芳通
リナルド:彌勒忠史(カウンターテナー)
アルミレーナ:中川詩歩(ソプラノ)
ゴッフレード:中嶋俊晴(カウンターテナー)
アルミーダ: 中山美紀(ソプラノ)
エウスタツィオ:新田壮人(カウンターテナー)
アルガンテ:黒田祐貴(バリトン)
魔法使い/ドンナ:眞弓創一(カウンターテナー)
伝令/セイレーン1:中嶋克彦(テノール)
セイレーン2:山際きみ佳(メゾ・ソプラノ)
舞踊:西川一右
管弦楽:アントネッロ*)
演出:中村敬一

 

第53回サントリー音楽賞を受けた濱田芳通がその受賞記念コンサートとして催した公演、ヘンデルのオペラ《リナルド》。

ヘンデルがロンドンを初めて訪れたときに作曲し、大成功を収めた作品である。第1次十字軍によるエルサレム奪取を題材(タッソーの『解放されたエルサレム』)とし、イスラム教徒側の魔女アルミーダとキリスト教徒側の騎士リナルドの間の愛憎劇を絡めたもの。リナルドの恋人アルミレーナがイスラム側のアルミーダ、アルガンテに攫われ、彼女を救おうとしたリナルドもアルミーダの魔法で捕まってしまう。アルガンテ等は、これにより不利な状況になっていた戦いを逆転しようと考えていたのだが、アルガンテはアルミレーナに、アルミーダはリナルドに惹かれるようになり、アルガンテとアルミーダの間はギクシャクしたものとなる。キリスト教徒側は魔法使いの助けを得て、アルミーダの庭園を攻撃、リナルドとアルミレーナを救出する。リナルドを加えた軍勢はエルサレムを奪還する。アルガンテとアルミーダがキリスト教に改宗して、ハッピーエンド。
現在の中東情勢を考えるといささか微妙な演目ではある。濱田もその点は意識しており、プログラムの「演奏ノート」の中で、「十字軍の決戦を茶化し、喜劇化することによって、一つの反戦意識の表現になる」と述べている。
バロック・オペラの上演では、カットの有無が問題となる。この点に関しても「演奏ノート」に「丸々カットした曲は一曲もありません。」と明確に書いている。ただし、「ダ・カーポやリピートに関しては、かなり複雑なかたちでカットを試みている曲もあります。」とのこと。逆に、ト書きにある場面転換のために、別のヘンデルの音楽で補って演奏している。

オーケストラを配置した空きスペースである舞台の前方と後方を使ったセミステージ形式の上演だが、サントリーホールのP席の位置に置かれたスクリーンに映像を映し出し、物語の進行を過不足なく描き出した。

オーケストラは濱田の手兵アントネッロ。30人弱の小編成である。音量の点でどうかという危惧はあったが、メリハリの利いた演奏で、そんなことは感じることはなかった。
歌手も充実。タイトルロールのリナルドを歌った彌勒忠史が厚みのある声で全曲にわたって立派な歌。第2幕に歌われるアルミレーナのアリア「私を泣かせてください」、中川詩歩の繊細な響きが実に見事。同じ第2幕の最後のアルミーダのアリア「戦いを仕掛けて勝ってやる」、中山美紀が技巧の限りを尽くして聴かせた。彼女と絡む長いチェンバロ独奏もすばらしい。「チェンバロが目立ちすぎ」とでもいうような彼女の演技には会場の笑いが。このオペラでの唯一の低音歌手アルガンテの黒田祐貴、若手だがしっかりとした歌唱を聴かせた。ゴッフレードの中嶋俊晴、エウスタツィオの新田壮人、魔法使いの眞弓創一、3名のカウンターテナーが役割を果たしていた。

サントリーホールというバロック・オペラには大きすぎる会場での公演であったが、不満を感じさせることのない充実した演奏を聴かせてくれた。ヘンデルは楽しい!

(2024/9/15)

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<Cast & Creatives>
Conductor & Recorder Yoshimichi Hamada
Rinaldo Tadashi Miroku, Countertenor
Almirena Shiho Nakagawa, Soprano
Goffredo Toshiharu Nakajima, Countertenor
Armida Miki Nakayama, Soprano
Eustazio Masato Nitta, Countertenor
Argante Yuki Kuroda, Baritone
Mago / Donna Soichi Mayumi, Countertenor
Un araldo / Siren 1 Katsuhiko Nakashima, Tenor
Siren 2 Kimika Yamagiwa, Mezzo-Soprano
Dance Ichisuke Nishikawa

Early Music Orchestra Anthonello
Stage Director Keiichi Nakamura

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管弦楽:アントネッロ
 オーボエ:小花恭佳/小野智子
 ファゴット:長谷川太郎
 リコーダー:大塚照道
 トランペット:斎藤秀範/大西敏幸/村上信吾/金子美保
 ヴァイオリン:天野寿彦/阪永珠水/高岸卓人/ 山本佳輝/
        廣海史帆/大光嘉理人/堀内麻貴/遠藤結子
 ヴィオラ:多井千洋/佐々木梨花/本田梨紗
 チェロ:武澤秀平/永瀬拓輝
 ヴィオローネ:布施砂丘彦
 リュート:高本一郎
 ハープ:伊藤美恵
 チェンバロ/リコーダー:上羽剛史
 オルガン/グロッケン:谷本喜基
 ティンパニ/パーカッション:和田 啓