ウィリアム・クリスティ指揮レザール・フロリサン 《ヨハネ受難曲》 |藤堂清
ウィリアム・クリスティ指揮レザール・フロリサン
《ヨハネ受難曲》
William Christie / Les Arts Florissants “Johannes-Passion”
2023年11月26日 東京オペラシティ コンサートホール
2023/11/26 Tokyo Opera City Concert Hall
Reviewed by 藤堂清 (Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 大窪道治/写真提供:東京オペラシティ文化財団
<演奏> →Foreign Language
ウィリアム・クリスティ(指揮)
バスティアン・ライモンディ(テノール/エヴァンゲリスト)
アレックス・ローゼン(バス/イエス)
ヴァージニー・トーマス(ソプラノ/女中)
ヘレン・チャールストン(アルト)
モーリッツ・カレンベルク(テノール)
マチュー・ワレンジク(バス/ピラト)
レザール・フロリサン(管弦楽&合唱)
バロック音楽の御大ウィリアム・クリスティが手兵レザール・フロリサンを率いて来日、コンサートを行った。曲目はJ.S.バッハの《ヨハネ受難曲》。彼らであれば、フランスもの、ラモーなどが聴きたいところだが、この日1回だけなので選択の余地はない。独唱者も若い歌手が多い。クリスティが設立した若い歌手のためのアカデミー「声の庭」の現在のメンバーもいる。合唱もおそらく多くが若い人々だろう、独唱も歌う歌手を含め19名の編成。
冒頭の長大な合唱では少し乱れがあり、響きの薄さも感じられたのは残念。続いてエヴァンゲリストが登場し、イエスの最後を物語っていく。バスティアン・ライモンディの柔らかで艶やかな語りが演奏全体の印象を作り出していく。第1部は、裏切りと捕縛、大司祭カヤパによる取調べ、ペテロの否認と続く。レチタティーヴォに入るイエスの言葉を歌ったアレックス・ローゼンの毅然とした歌い口は、この役の重要性を感じさせるもの。
第2部は、審問と鞭打ち、判決と十字架処刑、イエスの死、イエスの埋葬と続く。イエスとピラトの対話など独唱者の歌う部分も多い。舞台後方の合唱団の席から前方のスペースへ出てきて歌う。第1部で少し感じられた合唱のもたつきもなくなり、クリスティの指揮で物語が推進力を持って進んでいく。通奏低音の充実が大きな役割を果たしている。
イエスの最後の言葉“Es ist vollbracht!”を受けて歌われるアルトのアリア、ヘレン・チャールストンの深々とした声は、それにふさわしい。それに続くバスと合唱による掛け合いのアリア、イエスに問いかけるものだが、これも印象的。39番の合唱、それに続く40番のコラール、充実した響きで演奏を終えた。
合唱には不満を感じるところはあったし、独唱者もバラツキはあったものの、管弦楽はさすがレザール・フロリサンという完成度。文句は言ったもののやはり聴いてよかった。
クリスティ、声楽に関しては完成度よりも教育に意識が向いているのだろうか? だとしたら、「声の庭」の公演として、コンサートを計画してもらってもよいのではないだろうか。
(2023/12/15)
<Players>
William Christie, conductor
Bastien Rimondi, tenor/Evangelist
Alex Rosen, bass/Jesus
Virginie Thomas, soprano/Ancilla
Helen Charlston, alto
Moritz Kallenberg, tenor
Matthieu Walendzik, bass/Pilate
Les Arts Florissants, orchestra & choir