撮っておきの音楽家たち |イゴール・レヴィット|林喜代種
イゴール・レヴィット(ピアノ奏者)
Igor Levit (Pianist)
2022年11月19日 紀尾井ホール
2017年9月17日 ペトレンコ指揮バイエルン国立管弦楽団と共演 東京文化会館
Photos & Text by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)
いま世界で最も注目されているピアニストのイゴール・レヴィットがベートーヴェンのピアノ・ソナタ・サイクル・イン・ジャパンⅠ&Ⅱと銘打ったコンサートを行なった。2022年と2023年の2年に渡って4回演奏される。その第1年目の2日目のサイクルⅡの演奏曲目はベートーヴェンのピアノ・ソナタ第5番・第19番・第20番・第22番・第23番(熱情)の5曲。レヴィットは淡々と弾いているように見えるが物凄い集中力を持って演奏をし、完全に聴く者を魅了する。中でも「熱情」は圧巻であった。
イゴール・レヴィットは1987年旧ソ連のニジニ―・ノブコロンドに生まれ、8歳から家族と共にドイツに移住したピアニストである。ハノーファーの音楽大学でピアノを学び、同校の歴史上最高の成績を修めて修了する。カール=ハインツ・ケマーリング、マッティ・ラエカッリオ、ベルント・ゲツケ、ハンス・ライグラフ等に師事。2004年浜松国際ピアノアカデミーコンクールで第1位。
「音楽はドグマではなく、生き生きとして自由な芸術。曲を弾きながら、私が聴衆に何か与えられたら、客席からも間違いなく私に対して素晴らしい贈り物がある。これこそライヴの一回性の醍醐味だと思う」と語る。
リサイタルでは世界の著名なコンサートホールや音楽祭で定期的に演奏している。ソリストとしてベルリン・フィル、クリ―ヴランド管、ライプツィッヒ・ゲヴァントハウス管、ロイヤルコンセルトへボウ管弦楽団、ウィーン・フィルなど世界の主要オーケストラと定期的に共演している。2023年よりルツェルン音楽祭で開始される、レヴィットがキューレーションを務める新しいピアノの音楽祭に向けて複数年にわたるコラボレーションが発表された。また2022年にはウィリアム・ボルコムによるピアノ協奏曲を世界初演。そしてレヴィットのためにジャズ・ピアニストのフレッド・ハ―シュが作曲したソロ作品世界初演を行なった。2019年ソニー・クラシカルの専属として高い評価を得た同レーベルからのデビュー盤、ベートーヴェンの全32曲のピアノ・ソナタ集でグラモフォンの「アーティスト・オブ・・ザ・イヤー」とオーパス・クラシック賞を2020年秋に受賞。2019年母校であるハノーファ音楽演劇メディア大学の教授に就任。
2017年9月キリル・ペトレンコ指揮バイエルン国立管弦楽団とともにレヴィット日本初の演奏会を成功させた。
(2022/12/15)