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撮っておきの音楽家たち|ジャンポール・ベルモンド|林喜代種

ジャンポール・ベルモンド(フランス俳優)
Jean-Paul Belmondo, Actor

1992年2月27日 記者会見 帝国ホテル (Press conference at Imperial Hotel)
1992年3月8日 有楽町での靴磨き (Shoeshining on Yuraku-cho)
Photos & Text by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)

今回は音楽家ではない番外です。
50年代末に始まったフランスの映画運動ヌーベルバーグの代表的俳優である、ジャンポール・ベルモンド。この9月6日にパリの自宅で88歳で亡くなった。 

1933年パリ近郊に生まれ、彫刻家の父と画家の母のもとに育った。ジャンリュック・ゴダール監督の「勝手にしやがれ」や「気狂いピエロ」主演したベルモンドは日本でも人気者だった。僕なども何回も観た。自由奔放に生きるベルモンドに勝手に自分を重ね合わせていた。もう一人のフランスの人気俳優アラン・ドロンと人気を二分していた。
1992年2月はザルツブルク・マリオネット劇団が来日中でオペラ「魔笛」「ドン・ジョバンニ」サントリーホールや有楽町マリオンの朝日ホールで公演中だった。朝日ホールでこのザルツブルク・マリオネット劇団の人形使いの様子を舞台裏から写すことが出来るというので、駅を出てホールに向かう途中だった。前方に外国人の一団がいて、靴磨きの様子を見ているのに出くわした。良く見ると先日の記者会見で会ったベルモントではないか。カメラを取り出すよりも前に「写しても良いか」と話しかけていた。彼は笑顔でOKをしてくれた。ベルモンドは新宿厚生年金会館で演劇「シラノ・ド・ベルジュラック」に出演中だった。
帝国ホテルの記者会見の服装と違って、街頭の靴磨きの箱の椅子に座ったジーパン姿のベルモンドは「勝手にしやがれ」の映画の中のミシェル役そのままの雰囲気が漂っていた。夢中でシャッターを押し続けフィルム36枚はアッと言う間に終わっていた。
出演中の演劇「シラノ・ド・ベルジュラック」は巨大な鼻を持つがゆえに想いを寄せる女性に告白せず一生を捧げるものがたりだ。友人になり代わって恋文を書いたり、陰で話しかけたりといったして哀しい役の演技が印象に残っている。これは三船敏郎主演の日本映画「無法松の一生」の原型ともなったと言われている。 

ベルモンドが亡くなったのをニュースで知って、有楽町で写真を撮ったのを思い出していたが、写真がどこにあるか分からなかった。たまたま1987年ベルリン・ドイツ・オペラ「指環」の日本公演の写真の問い合わせがあり、それを探している最中にベルモンドの靴磨きの写真も出てきて、この「撮っておき・・・」で紹介することが出来ました。

(2021/10/15)