撮っておきの音楽家たち|ネッロ・サンティ|林喜代種
ネッロ・サンティ(オペラ指揮者)
Nello Santi, Conductor
2009年11月25日 サントリーホール(NHK交響楽団公演)
2009/11/25 Suntory Hall (NHK Symphony Orchestra)
Photos & Text by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)
巨漢と長い指揮棒と柔和な笑みで親しまれたイタリア・オペラの巨匠、ネッロ・サンティが2020年2月6日88歳でスイスのチューリヒで亡くなった。父親のレコードを聴いていて、4歳のころアドリアに来たヴェルディ「リゴレット」のオペラを見て指揮者を目指す。1931年9月22日このイタリア・ヴェネト州アドリアで生まれる。小学生の頃からラジオのオペラ全曲をよく聴いていて、レコードと共にそれが音楽の学校だったという。バドヴァ音楽院では指揮科でなく作曲科で学ぶ。それは敬意する作曲家の意図をよく理解するためだった。1951年パドヴァのヴェルディ歌劇場で「リゴレット」を指揮してデビュー。1958年チューリヒ歌劇場の音楽監督に就任し1969年に退任、その後も指揮者陣の一員として密接な関係が続いた。1962年ニューヨークのメトロポリタン歌劇場にデビュー。30年以上にわたり良好な関係が続いた。そのほかに、ウィーン国立歌劇場、バイエルン国立歌劇場、コヴェントガーデン王立歌劇場、ザルツブルク音楽祭、イタリア各地の歌劇場で指揮する。またコンサート指揮者としても成功を納める。1986年から97年までバーゼル放送交響楽団の首席指揮者として、また世界各地の一流オーケストラに客演する。1995年にはヴェローナ音楽祭の25周年記念公演を指揮。
イタリア・オペラ界を代表する最長老指揮者。イタリア・オペラもワーグナーも全て暗譜で指揮した。チェチリア・バルトリ、プラシド・ドミンゴ、エディタ・グルベローヴァ、トーマス・ハンプソン、レオ・ヌッチ、テオドール・クルレンツィスなどの歌手、音楽関係者から「パパ・サンティ」と慕われた。イタリア共和国からカヴリエ―レ、グランデ・ウッフィチャーレの両功労勲章を、スイスからはチューリヒ市文化賞を授与されている。
日本へは1999年読響を指揮したあと、2001年にN響に初登場し、以来10回来演、51公演を指揮する。2005年PMFオーケストラの札幌、東京、大阪公演を行なう。2007年N響定期「ラ・ボエーム」、2010年同じくN響定期で「アイーダ」を指揮し両年とも「心に残ったコンサート第1位」に選ばれた。イタリア・オペラの伝統を重んじ、作曲家の意図に忠実な解釈を求めるスタイルを貫いた。2014年11月が最後の来日。撮影した2009年11月のプログラムはベートーヴェンの歌劇「フィデリオ」序曲、交響曲第4番、交響曲第6番「田園」だった。落ち着いた品のある演奏で魅了した。
(2020/7/15)